2021年10月28日

〈新作紹介〉『MONOS 猿と呼ばれし者たち』本年度屈指の問題作&傑作!“子どもたちの『地獄の黙示録』”の行く末は?

〈新作紹介〉『MONOS 猿と呼ばれし者たち』本年度屈指の問題作&傑作!“子どもたちの『地獄の黙示録』”の行く末は?



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

2021年度日本公開された数多き国内外の映画の中で屈指の問題作であるとともに、傑作でもあります。

コロンビア内戦を背景に、標高4300メートルの山岳地帯でアメリカ人の人質を監視する、コードネーム「モノス(猿)」と呼ばれる少年少女たちの過酷な日常。



彼らは一体どのような事情でゲリラ兵士になったのか、映画は一切明らかにしませんが、長年におよぶ戦乱がもたらした犠牲者でもあることは大方想像がつくところです。

そして暴力と殺戮の狂気と緊張の中で育てられ、非情な任務にあたる彼らにも、思春期という人間誰しも訪れる通過点と大なり小なり対峙せざるを得なくなります。



やがて荒涼とした山岳地帯から鬱蒼としたジャングルの中へと舞台は移り変わっていきますが、どちらも神々しいまでの大自然の驚異を背景に、少年少女たちの心の葛藤はどんどん強調されていきます。

それはまるで大自然が彼らの心をも狂わせていくかのような、そんな狂気すら感じられていくのです。



あたかも“子どもたちの『地獄の黙示録』”もしくは“戦場の『蠅の王』”とでもいった驚愕の世界観は、単に争いに翻弄されていく若者たちの悲劇を描出するだけでなく、極限状況下に置かれた人間の動物的ともいえるサバイバル本能であったり、一方では思春期特有のエモーションであったり、またそれゆえの愛憎の念なども露にしつつ、「猿」でもあり「人間」でもある少年少女たちの「生きもの」としての本質を赤裸々に訴求していくのでした。

いずれにしましても、いくら言葉で訴えても充分な説得力を持ち得ない、どのような美辞麗句の賛辞もどこか的を射れきれてない憾みの残る、その意味ではまさに視覚と聴覚に訴えた「映画」ならではの迫力に満ちた、人間の尊厳を問う傑作です。



自身の筆力の限界に敗北感を抱きつつ、やはり「百聞は一見に如かず」とはこのような作品のことを指すのだなと、改めて痛感せずにはいられません。

(文:増當竜也)

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