『真夜中乙女戦争』、原作映画化が大成功した「2つ」の理由


映画『真夜中乙女戦争』成功の2つの勝因



どの作品にしても、原作ありきの映画はやはり不安要素が多い。

原作がそのまま映画化されるなんてことは表現手法が異なる以上ありえないし、架空の人物が実写化される上で「イメージに合わない」「期待はずれだった」などのネガティブな感想が出てきてしまうのも仕方ない。

映画『真夜中乙女戦争』については、原作者・Fと監督・二宮健の独創的な世界観が絶巧にマッチした作品となっているので、心置きなく映画に臨んでいただきたい。

ここからは、私なりに感じた、映画『真夜中乙女戦争』成功の2つの勝因を紹介していく。

1.斬新かつ予想外な脚色



<私>(永瀬廉)と<黒服>(柄本佑)のファーストコンタクト、予想外に早々に交わる<先輩>(池田エライザ)と黒服、<私>が裏切り裏切られる逃走劇、そして原作ファンも衝撃のラスト10分……。
原作「真夜中乙女戦争」を忠実に映像化したとは、とてもじゃないが言えない。でも、それでいい。

原作の解説で二宮健が語っていたように、原作と異なる独自の展開が多々存在し、その度に「そうきたか」と唸らせられる。
特に、<私>と<黒服>がはじめて交わるとある事件、<私>が<先輩>に対して遠のきつつも近付くホテルの一室、<私>と<黒服>のお別れのシーンの脚色……度肝を抜かれた。また、そこに二宮健によって生み出される映像美が加わることで二度と忘れられない残像となるのだ。



逆に、そのおかげもあってか、冒頭での教授との論争のシーンや、心を無にして労働しなければ心が死んでしまうほどには過酷すぎる花屋でのバイト、自転車のサドルをブロッコリーに差し替える幼稚ないたずら、黒服に集うTEAM常連の宗教感など、原作通りに描かれているシーンの再現力がより浮き彫りになり、感動の域にまで達する。

斬新かつ予想外な脚色に一瞬心がざわつきながらも、見ている内にいつのまにか”二宮健ワールド”にハマっていく。

これは、原作→映画化において、なかなかに新しい体験だ。

2.非の打ち所がないキャスティング



もうね、驚きましたよ、誰も彼もがバシッとハマっていて。特に、原作でも映画でも主要人物となる、<私>、<黒服>、<先輩>は120点。

<私>にKing & Princeの永瀬廉。『うちの執事が言うことには』、『弱虫ペダル』に続き3作目の主演作品となる。

原作の<私>を具現化したと言っても過言ではない、死んだ魚のような目に感情皆無な抑揚のない声。なんでもない普通の大学生が<黒服>との出会いをキッカケとして暴走が止まらなくなる変遷に戦々恐々とした。

<黒服>に柄本佑。”究極の人たらし”を演じた柄本佑になにも怖いものはない。
<黒服>は悪魔ではなく神様であり、悪魔の素質がある人間を悪魔に昇華させる起爆剤にすぎない。人たらしであり人でなし。そのサイコパスさ、輝かしいほどに完璧。



そして、<先輩>に池田エライザ。メインキャストの中でもずば抜けてハマっていた。この池田エライザ、大優勝。彼女をキャスティングした制作陣に感謝感激雨あられ。
成績優秀で友人も多く聡明なのに何を考えているのかわからないミステリアスさ、自分だけの味方と錯覚するまでに距離感は近いのにLINEの名前はS。手が届きそうで届かない存在がより池田エライザの魅力を押し上げている。原作で描かれていた濡れ場となり得るシーンは脚色されているが、ドラマ「伊藤くんAtoE」での全面にエロさが押し出されていた彼女よりも秘めたるエロさを感じるのだから不思議だ。



他、脇を固めるサブキャストたち。
原作にも登場する、<私>の同級生の佐藤にAぇ! groupの佐野晶哉、<私>と論争する教授に渡辺真起子、”私”の日雇いバイト先の現場監督・松本に安藤彰則
佐藤は原作よりも登場回数が非常に少なかったので、あの憎たらしい佐藤が(かわいそうだけれども)堕ちていく姿を映画でも見たかった気持ちもややある。妄想で留めておくことにしよう。



また、原作には存在しない映画オリジナルのキャラクターが多数登場。
<先輩>の親友・カナに山口まゆ、<黒服>を敬服する田中に篠原祐伸、元財務省勤務の高橋に成河
役柄は真逆ではあるが『チワワちゃん』にも出演していた篠原祐伸、これまたいい味を出している。

なによりも、新感覚・池田エライザ様に酔いしれないよう、お気をつけください。

Fと二宮健によって引き起こされる化学反応=映画『真夜中乙女戦争』



小説を読んだときの焦燥感が映像としてくっきり浮かび上がることによって、ぶつけようのないもどかしさが加速し、それがまた癖になり原作と映画を行き来する。

F × 二宮健、唯一無二の世界観が交わることで引き起こされる化学反応を、あなたにも体感してほしい。

(文:桐本絵梨花)

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(C)2022「真夜中乙女戦争」製作委員会

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