<桜井ユキの魅力>表現の開拓者を名作と共に語る


音楽と色彩が織り混ざる倒錯的な世界で、本能のまま”狂う”桜井ユキ初主演映画

桜井ユキの映画初主演作『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY-リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』(2017)。桜井ユキを語る上で、最も外せない作品である。



最初に申し上げておきたいのが、この映画は少々、刺激的で過激なシーンが多い点。とくに中盤以降は絡みのシーンや、トラウマになってもおかしくないような、精神的にキツいシーンもある。鑑賞の際はご理解のうえ、ぜひとも「一人で」見ることをお勧めしたい。

本作で桜井ユキが演じるのは、女優になることを夢見て上京したオリアアキ。家出同然でやってきた彼女は、たまたま知り合った写真家の青年・カイト(高橋一生)と惹かれ合い、女優を目指す傍らで愛を育てる。

……と書くと、実に純粋な恋愛映画のあらすじのようだ。このままのイメージで本編を見ると、ガツンと頭を殴られたような心地になるに違いない。

画面は常に色彩と音楽が入り乱れ、織り混ざり、観客に息をつかせる間もなく物語は濁流のようにチップスピードで落ちていく。食らいつこうと必死になればなるほど、その倒錯的な世界観に絡めとられるのだ。

気づいたらもう、何が本当で何が妄想なのか、区別が付かなくなっている。

桜井ユキ、高橋一生それぞれのルックスや、元来持ち合わせているミステリアスな空気感が、怖いほどこの映画にマッチしている。地に足がついておらず、ふわふわと浮遊しているようで不安感を煽られるが、カイトがアキの写真を撮るシーンや、ベッド上でじゃれ合うシーンなどは、確かに「ふたりは愛し合っているのだ」と感じさせてくれる。

『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY-リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』より (C)2017 KingRecords

オリアアキは、女優になることを夢見て上京する少女だ。図らずも、桜井ユキ自身のキャリアを彷彿とされる。彼女自身も、女優の夢を追うために19歳で上京、一度は挫折し地元に戻って飲食店の手伝いをしていた過去があった。

繰り返すが、鑑賞の際は充分な注意を払ってもらいたい。しかし、この作品にしかない独特な魅力や、この作品でしか見られない桜井ユキが存在しているのも確かだ。

この映画を見た前後では、物事の捉え方が180度変わるほどの影響力があることは間違いない。

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