「ちむどんどん」第12回:上白石萌歌のピュアさと片桐はいりのインパクト
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第12回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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新たな登場人物が続々登場してちむどんどんする
舞台が1971年になって、新たな人物が続々登場します。良子(川口春奈)が第11回で手紙を出していた大学生の石川博夫役は山田裕貴さん。朝ドラ「なつぞら」(19年)でヒロインの幼馴染を演じて注目されました。良子とは哲学について語り合うようなまじめな関係です。
石川に惹かれているように見える良子に、その気持ちを知らずぐいぐい迫る御曹司・貴納金吾役は渡辺大和さん。朝ドラ「まれ」(15年)で主人公の幼馴染を演じて彼もまた注目されました。いまは俳優を主にしているようですが、当時はバンドのボーカルをやっていてドラマのなかでも歌う場面もありました。
歌子(上白石萌歌)は学校でピアノに興味を持ちます。そこに現れたのは下地響子。「音楽は魂の叫び」と歌子にぐいっと近づき怯えさせます。演じるのは片桐はいりさん。朝ドラ「とと姉ちゃん」(16年)で主人公の恩師を演じていました。
片桐はいりさんは強烈な個性がありながら、共演者を盛り上げることにも長けた俳優です。はにかむようにピアノを見つめる上白石萌歌の表情の儚さと、ぐいぐい来る片桐はいりの迫力の対比が良かったです。
片桐さんの力で上白石さんのピュアさがより生きるのです。「音楽は魂の叫び」と形骸化したようなセリフを存在感もって語れるのは片桐はいりさんだからでしょう。
ほかに豆腐店を営んでいる幼馴染の砂川智は前田公輝さんに。良子が勉強会の集まりに参加したレストランのマスターは川田広樹さん。
華やかさと技巧を兼ね備えた俳優たちがずらりそろって、画面が沸き立ってきました。
生きづらさのなかにいる子どもたち
賢秀(竜星涼)がけんかをした相手が、暢子(黒島結菜)の就職先の社長だったため、せっかく決まっていた就職が危うくなります。ここで大騒ぎになるかと思ったら、わりと落ち着いた展開で、暢子がサーターアンダギーをもって就職先に謝罪に行きます。バス停でバスを待つ、暢子と優子(仲間由紀恵)が絵になっていました。背景の緑が鮮やか。
名護の街にある眞境名商事では、賢秀が来ないのかと咎められますが、暢子はけろっとしたもので、就職する気満々で、ちむどんどんしながら、自分はどんな仕事をするのか質問。暢子のしょげない前向きさ、見倣いたいものです。
だが仕事は「お茶くみ」でがっかり。70年代初頭、本土ではウーマンリブ運動が盛り上がっていて返還になればその流れは沖縄にも来るだろうと会社の人たちは予測していましたが、それはまだ先のお話。
この時代の女性の仕事は「お茶くみ」。ときには上司の話し相手や肩もみなどをすると言われて、唖然となる暢子。「君の代わりはいくらでもいる」と暢子の名前も覚えてももらえません。「第2章がはじまると思ってちむどんどんしてたのに」と暗澹たる気持ちになります。
絵に描いたような女性軽視描写です。
「給湯室の清潔を保ち 美味しいお茶を入れ 笑顔でお出しする だから より女性らしい人が好ましい」だなんて、令和4年で言ったらコンプライアンス的に問題発言です。
一方、賢秀。男性がしっかり働き、家を守るとまだ思われている時代に「俺はまだ本気出してないだけ」とばかりに人生のウォーミングアップをしている気分で自分の進路を見いだせない賢秀。彼は彼で、男性が男性らしさに縛られる生きづらさを体現しているようです。
(文:木俣冬)
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