「おむすび」驚きの事実、結は毎年、雅美さんに会っていた【125回】

続・朝ドライフ

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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
最終回(第125回)を紐解いていく。

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最終回(125回) 糸島もにぎわって、みんなしあわせ 

「詩ちゃんのこともみんなで(ポンッと手を叩いて両腕を広げて)受け入れればいいべ」

第124回。歩(仲里依紗)が詩(大島美優)の未成年後見人になりたいと聞いた結(橋本環奈)は懐疑的でした。それを聞いた翔也(佐野勇斗)は上記のセリフをまじりっけない明るさで言います。

この人は純粋すぎるほど純粋で、それがわりと何かと考えがちな結を楽にしている気がします。何がすごいって、翔也は、愛子(麻生久美子)を佳代(宮崎美子)が娘と受け入れて、自身を聖人(北村有起哉)たちが息子として受け入れてくれたのだから、それと同じく詩をみんなで受け入れようと考えているのです。結婚して家族になることと、他人の子どもを家族にすることは違うヨネと否定が頭をよぎります。が、しかし、ほんとうに違うだろうか、と立ち止まってみる筆者です。

結婚によって他人が家族になれるのだから、他人の子どもを家族にしたって構わないのかもしれない。

翔也に背中を押された結は第125回で、今度は児童相談センターの人にいろいろと言われて迷いはじめた歩を「なん言うとうと」と励ます側にまわります。

児童相談センターの人が懸念事項を挙げたのは、全部、仮定の話。「起きるかどうかわからないこと考えて一歩踏み出さんとはお姉ちゃんらしくないよ」「いまこの瞬間を大切に生きる。それがギャルやって教えてくれたのお姉ちゃんやん」と畳み掛け、詩は「みんなで育てる」と言うのです。翔也の受け売りじゃん。もう結って調子いいんだからもう。

その晩、米田家では、糸島のごちそう・そーめんちり(ほかに唐揚げとかも)で、詩が家族になったお祝いをします。

美味しいものを「みんなで食べたら 忘れられん、楽しい思い出になるんよ」

美味しいものを食べたら悲しいことを少し忘れられるという、「悲しみを忘れる」という概念を、「忘れられない楽しい思い出で上書きする」という概念に置き換えたのです。ここはとっても最終回らしいです。大きな悲劇に見舞われたことをずっと忘れることができず、紛らわし紛らわしやってきたけれど、新たないい体験だけが悲しみを凌駕するのです。

しかも、昨日も書きましたが、豪勢な料理じゃないのです。郷土料理のそーめんちりと唐揚げとサラダ。もちろん美味しいものですが、家で大好きな人たちと食べる美味しさに勝るものはないのです。

そして、歩の提案で、プリクラ。

「おむすび」で良かったのは、朝ドラ名物家族写真が、プリクラに置き換わっていたことです。これは新しい視点。

そして、あるとき、結と花(新津ちさ)と翔也は糸島に遊びにいきます。愛子は広いいちご農園を経営していて大繁盛。赤い帽子の幼稚園児がいちご狩りをしている姿はまるでいちごのようでした。ここの演出は小野見知さんです。小野さんのつくる画はいつもすてきでした。

いちご狩りの幼稚園児たちがすくすくと成長して、知性や思いやりをもって、幸福に生きられることを祈らずにはいられません。この子たちのためになる番組づくりに期待しています。

聖人が出張理容に行く車のなかでジャズを聞いていたのもよかったです。ようやく趣味を持てたのでしょう。そのときすれ違うのはヒミコ(池畑慎之介)。土地持ちは勝ち組ですな。都市部は高くてもうどうにもならないけれど地方なら土地がまだありそう。

残念なのは、このとき、詩が一緒に糸島に来ていないことです。歩はコロナ禍で延期になっていたショーの準備で忙しく、当然、詩もそのお手伝いです。

そして、令和7年(今年ですね)、1月17日、結はキッチンでおむすびを握っています。テレビでは、「おむすび」第75回が放送中。神戸の慰霊の様子が映っていますが、ニュース番組ではなく、「おむすび」です。つまり、結たちは決してドラマの主人公という特別な存在ではなく、この日本のどこにでもいる人々なのだということでしょう。

「今年も行くの?」と歩が聞くと、「うん」とうなづく結。行先は、神戸の街が見晴らせる高台。

そこで待ち合わせていたのはーー

雅美(安藤千代子)でした。忘れもしない阪神・淡路大震災で避難した学校に、おむすびを差し入れてくれた人です。あのとき幼かった結は、おむすびを「冷たいチンして」とせがみ、雅美を涙ぐませました。それを大人になって後悔したらしき結は、いつしか、毎年、雅美と1月17日に一緒に過ごすことにしたようです。

ここまで誰にもそれを言わずにきた結。作劇的には、最終回のサプライズでしかないと思いますが、それじゃあ冷たいおにぎり(おむすび)のようなパッサパサな感じなので、あったかおむすび的な発想をしてみます。チン!

筆者的には、あえて何も言わないことって人間にはあると思っています。歩は知っていたわけですが、それを物語として、毎年何か欠かさず行っていることーーお盆のお墓参りとかみたいなことをわざわざ人には言わない。

「不器用なんで」的なキャラクターを筆者は嫌いじゃありません。結ってそういう人だったよなと思います。言葉足らずで、その分、翔也や歩がけろっと視点を変えてくれて助かってきた人。誤解されがちだけれど、頑張ってこのせちがらい世の中を生きている人なのだと思いました。余計なことですが、橋本環奈さんもそういう人なんじゃないかなと、筆者は思ったりもします。

朝ドラヒロインにもいろんなヒロインがいます。わたくしごとですが、2015年の「まれ」から、朝ドラを毎日欠かさずレビューしてきてこれで10年となりました。20作、毎日観察記録してきて、いろんな朝ドラがありました。シネマズプラスでは、22年「ちむどんどん」から3年、連載しまして、11年め、「あんぱん」から、ダイヤモンド・オンラインに場所を移します。

続・続朝ドライフ

よろしくお願いします。

シネマズプラスの続・朝ドライフ、3年間、ご愛読ありがとうございました。関わってくださった編集者の皆さんにもお礼申し上げます。「虎に翼」のお茶会は最高に楽しかった。

これからも朝ドラをみんなで見て忘れられない楽しい思い出にしましょう。

朝ドラ辞典

【朝ドラを見る(あさどらをみる)】

「おはなはん」(66年)から時々、行われている朝ドライン朝ドラの仕掛け。劇中で登場人物が朝ドラを見ているメタドラマ的手法である。「カーネーション」では糸子(夏木マリ)が朝ドラをよく見ていて、自分の人生も朝ドラにしたいと言い、実際夢が叶う。「カムカムエヴリバディ」ではジョー(オダギリジョー)が朝ドラが好きでよく見ていた。「おむすび」では令和7年1月17日放送の「おむすび」第75回を結が見た。

(文:木俣冬)

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–{「おむすび」第24週あらすじ}–

「おむすび」第25週あらすじ

第25(最終)週「おむすび、みんなを結ぶ」3 /24-3 /28


愛子と聖人が糸島に移住することになり、一人前になった翔也(佐野勇斗)が神戸の理容店を継ぐ。

そんな折、結たち NST は来週手術予定のがん患者が食事を全く食べられないため 、 手術の延期を担当医に申し出るが、担当医は点滴で補給すればいいと延期に反対する。

さらに病院の上層部からの要請で、コロナの影響による人員不足に対処するため NST の活動が一時停止されることに。

一方、歩の元に退院した田原詩がしばらく泊めてほしいとやって来る。

結は詩の行く末を心配するが、 歩は詩に自分のアパレルの仕事をやらせ、やがて大きな決断をす る。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

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