WACK代表・渡辺淳之介のものづくりに対する思い「青春時代の自分に楽しんでもらえるかどうか」
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2023年をもっての解散が決定し、オムニバス映画『BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK'N'ROLL』が6月10日(金)に公開された“楽器を持たないパンクバンド”BiSH。cinemas PLUSでは、彼女たちが所属する音楽プロダクションWACKの代表・渡辺淳之介に直接話を伺う機会を得た。
自身が監督を務めた映画『PEACH CHAOS PEACH』の話題から、流れは少しずつ“ものづくり”の話へ。浮かび上がってきたのは、常にマイノリティ側にいた自覚、そして協力してくれる仲間たちの存在だった。
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中2の頃の自分が「面白い!」と思うものを
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――渡辺さんはWACKを通して、次々と新しいことをされている印象があります。今回の映画作りにおいても、そういった気持ちが強かったのでしょうか?
渡辺淳之介(以下、渡辺):昔からそうなんですけど、僕自身、中学2年生の自分に向けてものづくりをしている感覚があるんです。
当時は学校も面白くなかったし「なんで勉強しなきゃいけないんだ?」って鬱屈とした思いもあって。そんななかで、僕みたいな大人がいたら面白いだろうな〜と思いながら作品づくりをしてるような気がするんですよ。
僕の映画を見て「大人でもこういうことしてもいいんだ!」って思ってくれる若者がいたらいいな。そう思ってくれた子が、この先の10数年後には僕と同じようなことをしてるんじゃないかな。そんなことを考えながら、青春時代の自分に楽しんでもらえるようなアウトプットを心がけてます。
――型に嵌らずレールに乗らず、こういう大人がいてもいいんだよと伝える姿勢は、学生に限らず大人にも響くんじゃないかと思います。
渡辺:決して良くはないし、おすすめするわけじゃないんですけどね。僕は世の中に謝らなきゃいけないことも多いので……。
だけど、僕自身あんまり学校にも行けてなくて、マイノリティ側の人間だと思ってます。いまこの瞬間も学校に行けず悩んでる子に向けて、いろいろとものづくりをしてる気持ちが強いのかもしれません。
発想の源泉は「人」と「テーマパーク」
――「こういうことをやりたい」「これをやったら面白いかも」と思いつくのは、どういうときが一番多いんでしょうか?渡辺:一番は、誰かと会って喋ってる瞬間かもしれないですね、今回の映画も、焼肉屋に山田健人とエリザベス宮地と僕の3人で集まって、ワイワイやってるうちに話がまとまりましたし。
あとは、テーマパークに遊びに行って、パレードを見たり音楽を聞いたりしてると、インスピレーションがわくことが多いかもしれません。ライブでこういう演出をしたら面白いかも、とか、エンディングの音楽はこういう風にしたらいいかも、とか。
一人で部屋にこもって考えるよりは、誰かと会って話したり、いろいろな場所に遊びに行ったりするなかで思いつくことが多いかな。
――思いついたことを実現させるときに、必要な考え方は何ですか?
渡辺:やっぱり、仲間ですかね。今回の映画づくりも、山田と宮地の2人がいてくれたからこそ実現しました。1人でも2人でも協力してくれる人を集められれば、さらに力を貸してくれる人を探しやすくもなる。仲間がいないと、何もできないですから。
――やりたいことを実現させるためにも、仲間探しが大事なんですね。
渡辺:もちろん、僕自身が面白いと信じられる企画を持っていくことは大前提です。それが一番大事だし、そうじゃないと誰も巻き込めないよな、と思います。まともに学校に行けてなかったぶん、今はそういう“人との関係づくり”に重きを置いてる面もあるかもしれないです。
「俺を踏み台にしていけ」独自のプロデュース論
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――EMPiREやBiSHなどWACK所属グループをプロデュースすることにおいて大切にしていることについて教えてください。
渡辺:グループとしてではなく、個人としてやりたいことを実現するために何ができるか。それを一緒に考えることを大事にしてます。
今ではありがたいことに「BiSHみたいになりたい!」と言ってWACKのオーディションに来てくれる子も多いんですよ。でもそういった子たちは、アイドルとして売れることをゴールだと思いやすい。
人生は長いし、BiSHも含めこのようなグループは永遠ではないですから。卒業や解散のあとに、個人としてやりたいことは何なのか。それを一緒に考えるつもりで、彼女たちと接してます。
BiSHで言うと、モモコグミカンパニーが小説を書いたり、他のメンバーもソロで音楽活動をしたりTV出演をしたり、各々のやりたいことを実現させている。グループとしての活動は「自己実現のためのジャンプ台」くらいの気持ちで、やりたいことをやるための準備期間だと思ってほしいです。
――それで言うと、元BiSのメンバーであるファーストサマーウイカさんの活躍も目覚ましいですね。
渡辺:そうですね。彼女は当時から「テレビに出たい」「演技やパーソナリティの仕事をしたい」としか言ってませんでした。まさにBiSというグループを踏み台にして羽ばたいていった、最たる例です。
プロデューサーである僕の存在なんかも踏み台みたいなものだから、ガンガン踏み越えていってほしいと思います。僕自身も、ある意味で彼女たちを利用して、自分のやりたいことを実現させてますから。
夢を叶え切った自分が目指す場所は
――渡辺さん自身が、今もっとも興味のあることは何ですか?渡辺:TikTokですかね。音楽の面から見てもヒットする土壌があるので、何かできないかな〜と思いながらずっと見てます。今のところ見てるだけになっちゃってるので、悔しいんですけど。
TikTokに限らず、新しいプラットフォームが出てきたときに、いち早く第一人者になってみたい気持ちはあります。今ならNFTとかメタバースとかもそうですよね。新しく、かつ楽しそうな分野には、どんどん踏み込んでいきたいな、と。
――あえて抽象的な質問をしますが、渡辺さんが目指している理想像を教えてください。
渡辺:本当のことを言ってしまうと、僕、学生の頃からやってみたいと思ってたことは全部とは言わないんですけどほとんど叶えちゃったんです。映画監督をやってみたい、音楽で飯を食えるようになりたい、とか。絶望的だった中高時代に思い描いてた理想が、気づいたら全部現実になってたんですよね。
だから、そうなった今、あらためて自分に何ができるのか、何がしたいのかを追い求めている最中な気がします。タイムマシンがあったら22〜3歳くらいの頃に戻って、もう一度新しく人生を始めてみたい。「誰も僕を知らない状況からやり直したら、どうなるんだろう?」って思います。
――「タイムマシン」! まさかのお答えでびっくりしました。
渡辺:中学生くらいから学校に行き直して英語とか勉強しまくったら、エリートになってGoogleに勤めてるかも!? みたいな。いざそうなっても、結局また学校に行かなくなるんじゃないか、とも思うんですけどね。
自分のやりたいことや理想はおよそ実現できたので、次はうち所属の子たちやスタッフみんなのやりたいことを叶えられる舞台を整えるのが、僕の仕事かもしれないですね。それで、もっともっと僕を儲けさせてくれるのが理想かな(笑)。
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(撮影=渡会春加/取材・文=北村有)
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