(C)尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会
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映画コラム

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2022年08月07日

『ONE PIECE FILM RED』4DXの「5つ」の絶賛ポイントを解説!

『ONE PIECE FILM RED』4DXの「5つ」の絶賛ポイントを解説!


実は悲しくて怖い物語だった

今回の『ONE PIECE FILM RED』を観てもっとも驚いたのは、物語が「悲しく」「怖い」ことだった。



はっきりとホラー的な演出もあり、あるキャラクターの表情や言動にもゾッとする瞬間があった。歴代の劇場版の中では、ファンからも賛否両論が激しい『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』が近い内容だとは、思ってもみなかったのだ。

だが、原作の『ワンピース』でも、「過去」ではとても辛く苦しい出来事、いや「人生」が描かれることは多くあった。だからこそルフィたち麦わらの一味がその不幸の連鎖を断ち切るために戦うという意義があり、今回ははっきりと原作の名エピソード「アーロンパーク編」を連想させるルフィのセリフもあった。

先着300万人限定の来場者プレゼント「四十億巻」では、原作者であり総合プロデューサーを務める尾田栄一郎による「来歴」が細かく綴られており(ネタバレなので鑑賞後に読むことを推奨)、この悲しくて怖い物語に真摯に向き合う姿勢が見てとれる。

『オマツリ男爵と秘密の島』という過去にとても暗い内容の劇場版があったこと、脚本家の黒岩勉も『ONE PIECE FILM GOLD』(2016)の他、『GANTZ:O』(2016)や『累-かさね- 』(2018)など「過酷な運命」を主とした漫画原作の映画を手がけてきた来歴を踏まえても、今回の『ONE PIECE FILM RED』が「こうなる」ことは納得できるのだ。

さらには、原作からある「世は大海賊時代」という触れ込み、そして「海賊」という概念そのものにも斬り込む、ほぼほぼ「否定」をしている言及があるのにも驚いた。コンテンツの主たる要素への否定があることは、まるで「ポケモンバトル」による哀しみを描いた『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998)のようだ。

ただ、これらの印象は、予告編の華やかな印象とは全く異なるものだ。その本編とのミスマッチも意図的なものだろうが、期待していたものと違ったと思う方、悪い意味で複雑な気持ちになってしまったという方もいるだろう。



だが、個人的には『ONE PIECE FILM RED』は好きだ。悲劇的な出来事により、「信じること」「幸せ」に対して歪んだ価値観を持ってしまった人の狂気と苦しみの物語であり、明らかに現代のSNSを揶揄した「多くの人への伝播」、そして「多くの人にとって幸せとは何か?」という深い問いかけを含む、「寓話」になっていると思うからだ。

劇中の出来事は現実の世界ではあり得ないことだが、沸き起こる「感情」は現実にもあるものだ。折坂悠太が提供した「世界のつづき」の歌詞からも、その「信じること」「幸せ」について、さまざまな思索をめぐらせることができるだろう。



それでもモヤッとしてしまったのは、とある「顛末」がうやむやなまま終わってしまったような印象があったこと、そしてエンドロール後の最後のセリフ、その「言い方」だった。個人的には、これらは描いてきた物語に対して「不誠実」なものと思ってしまったのだ。劇中でたびたび繰り返される「どんでん返し」的な事実の提示にも、賛否両論はあるだろう。

だが、その賛否両論を呼ぶこと、議論をすることにも、この『ONE PIECE FILM RED』の価値がある。この物語から、同様の悲劇を起こさないためにできること、現実にフィードバックはできることは、きっとはずだから。

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(文:ヒナタカ)

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