『ブレット・トレイン』濃厚で刺激的な「3つ」の魅力を解説


2:「カッコいい日本」を堪能しよう!原作との違いは?

この『ブレット・トレイン』の原作は、2010年に刊行された伊坂幸太郎の『マリアビートル』。日本の小説をハリウッドで映画化という例にはトム・クルーズ主演作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)もあるが、今回は日本が舞台ということもあって、より日本の作品が世界に進出した喜びを、作品そのものからダイレクトに感じられるようになっていた。

劇中では街でネオンが輝き、キャラの名前が漢字で表現されたり、はたまた日本刀で戦ったりする。『ブラック・レイン』(1989)や『キル・ビル Vol.1』(2003)にも通ずる「日本のカッコよさ」を、ある種の無邪気さも込みで示しているような楽しさがある。さらには「ゆるキャラ」という文化もリスペクトしたような(?)「モモもん」というマスコットキャラクターも登場し、そういう意味でも「ああ、外国の方は日本のこういうところが好きなのね〜」と微笑ましく思えるし、世界中で日本人が最も楽しめる映画であることも間違いない。

そして、列車に乗り合わせた殺し屋たち(ではない者もいる)の視点が切り替わる群像劇であること、キャラ同士の関係性や大筋の物語運びなどを鑑みれば、今回の映画はなかなかに原作に忠実とも言える。だが、原作ではかなりエグ目でサディスティックな言動や心理描写が多かったのに対し、今回の映画はやや(ブラック寄りではあるが)コメディ的なやり取りも目立っていて、全体的に軽快な印象へとシフトチェンジしたような印象があった。とある有名俳優の出演に、吹き出してしまう方もいるだろう。

例えば、原作での人を意のままに操るサイコパスな中学生の少年「王子」は、映画では女学生になるという大胆な変更が加えられている。外見や性別が違うだけでなく、その悪魔のような思考はだいぶ省略されており、そこには原作ファンからの賛否両論もあるかもしれない。だが、大作アクション映画としての爽快感やケレン味を重視するためには、個人的に今回のこのバランスは良かったように思えるのだ。



その他の原作からの変更点としては、一部のキャラクターやエピソードが登場しないなどの換骨奪胎や、東京から盛岡までの行き先が京都へと変わっていることもある。言うまでもなく、京都という舞台は見た目からわかりやすく「ザ・ジャパン」な場所であるので、やっぱりカッコいい日本をとことん描く目的からすれば「あり」な変更点だろう(伊坂幸太郎作品は宮城県仙台市を舞台にした作品が多く、その「地元愛」も捨て難くはあるが)。ちなみに、実際の新幹線での東京から京都までの移動時間はおよそ2時間8分であり、それはこの映画の上映時間と一致していたりもする。

また、キムラを演じるアンドリュー・小路は『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(2021)でもメインキャラクターを演じている。こちらは賛否両論もある内容であるが、「バイクと日本刀でヤクザと戦う」という、やはりカッコいい日本を舞台にしたアクション映画を期待する方にはおすすめしたい作品だ。



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