「舞いあがれ!」第20回:ちょっと展開早いかも? 暗雲が立ち込めるなか、舞が決断。
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町・東大阪で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。
本記事では、第20回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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「みんなのために舞が無理するの?」
由良(吉谷彩子)はテスト飛行で骨折して全治2ヶ月となってしまいました。
「先輩がたの最後の夏、こんなふうに終わらせたくないんです」と由良は怪我を治して
もう一回トライすると言いますが、かなり難しそうで……。
悔し泣きする由良を見守る鶴田(足立英)の背中に「飛べ!」の文字があって切ない。
第19回で「飛んだ!」と滑走路をみんなで走ったときがあまりに晴れやかだったので、その反動はきつい。部室に重い空気が立ち込めます。
もう一度、トライしようと言う鶴田に対して、「もう終わりたい(博多弁)」とすっぱり諦め、引退を決意する刈谷(高杉真宙)。
鶴田の案は、男たちと比べて由良と体型が近いほうの舞(福原遥)をパイロットにして再挑戦することですが、刈谷としては、入ったばかりの舞ではトレーニングが間に合わないし、不安要素のあるトライをしてまた失敗することを懸念するのです。
鶴田が由良の夢を叶えたい(引き継ぎたい)と粘るのは、第19回でどうやら鶴田が由良に恋ごころを抱いていることが語られていたことで、彼の強い思いの出どころがなんとなくわかります。それが恋だけだと私情過ぎて白けますが、部員思いであることもわかるので人情の人だということでなっとくできます。
一方の刈谷は、あまりにもきっぱりと諦めてしまいます。「なにわの天才」と讃えられていた刈谷ですから、自信があるだけに折れると弱いのかもしれません。論理的過ぎて、情が入る余地のないタイプなのでしょう。
和気あいあいだったのにギスギスしてしまうなにわバードマン。
舞は、みんなの夢を叶えるために由良の代わりにパイロットになるか迷います。
でもめぐみ(永作博美)は「みんなのために舞が無理するの?」と問います。
鶴田と刈谷、舞とめぐみ、ふたつの考えが対立して……。
舞が見舞いに行くと、由良は、みんなの期待を背負うことの重さを語ります。楽しいことが大事と思っていたけれど楽しいだけではいられないことを知る舞…。
なかなか決断できずにいると、これまで一言もしゃべらなかった空山(新名基浩)が部室でしゃべりだします。
7つ……これまでに僕が触れた人力飛行機は7つ
空山は人力飛行機が好きなあまり、留年を続けて7年大学にいましたが、そろそろ故郷・宮崎に帰らないとならなくなり、「僕が触る最後の人力飛行機」なのだそう。
これまでの7つの人力飛行機の思い出を語る言葉には、心がこもって聞こえました。
7年の間、卒業していった人たちが、その都度、心を込めてきた飛行機のノウハウと情熱が蓄積されているのです。おそらくですが、空山は人力飛行機も好きだし、みんなで力を合わせてなにかすることが好きなのでしょう。
余談になりますが、実感のこもったセリフを語った新名さんご本人も宮崎出身。刈谷の高杉さんは福岡出身で博多弁を喋っています。大阪の学校には西の人たちが集まってくる感じがリアルです。
さて。
「みんな」というのはいまここにいる「みんな」ではなく、通り過ぎていった人たちも含めての「みんな」。そう思うとますます責任は重い。でも、だからこそ、背負う意味もあります。
そして舞は決断します。テスト飛行失敗、由良の骨折、空山の想い……ちょっと展開が早くて、すべてが舞の今後の活躍のためのお膳立てのようにやや見えてしまいましたが、舞があっけらかんとしてなくて、どこかためらいを感じさせることで緩和されています。
【朝ドラ辞典 展開早い(てんかいはやい)】朝ドラでは、なにか事件が起こっても、次の回では即解決ということが少なくない。問題を引っ張り過ぎると視聴者にストレスがかかることへの配慮からだろうか。この展開の早さは作り手の腕の見せどころで、鮮やかに解決して気分よく見ることができる場合、心配したのになにこの展開……とがっかりする場合がある。マニュアル的にこの展開を行うと後者になる。
(文:木俣冬)
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