「らんまん」明治時代、渋谷は荒野だった<第114回>


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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第114回を紐解いていく。

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おかかと鮭のおにぎり

明治30年、9月。冒険心にあふれる寿恵子(浜辺美波)はひとり、渋谷に降り立ちます。
りん(安藤玉恵)が「あんなとこ子供を連れていくところじゃないよ」と、赤子を預かってくれてよかった。

目的地である道玄坂の空き家の周辺は、たいそう荒れ果てて、どぶが掃除されていなくて藪蚊がうようよ。想像しただけで身の毛のよだつような場所でした(ドラマではあっさり描いていますが、かなりワイルドな場所であるはず)。

こんなところに免疫の少ない赤子を連れていったら菌にやられてしまいそう。蚊にさされたら大変です。

寿恵子がひとりで行くのもどうかと思います。路地裏に、酔った男・荒谷佐太郎(芹澤興人)がいて、あやしいのなんの。襲われてもおかしくありません。
でも、寿恵子はしゃがんで、佐太郎に道を聞きます。いや、ふつう、話しかけない。

でもそこは「らんまん」。ソフトになっていて、佐太郎は親切な人でした。
演じている芹澤さんは「鎌倉殿の13人」でも誠実ないい人の役だったので、視聴者的にも悪い人じゃないという先入観があったかもしれません。
ちなみに、渋谷は、「鎌倉殿〜」でおなじみの和田義盛にゆかりのある人物が山賊として暴れていたとか。佐太郎も鎌倉から流れてきた人の子孫だったりして。

佐太郎の家は、母?祖母?カネ(梅沢昌代)が飯屋をやっていて、寿恵子はおにぎりを買って帰ります。

こんな水が淀んだような場所で、耳の遠い、反応のやや鈍いおばあさんの作ったおにぎりはやばいのでは……と視聴者誰もが思うでしょうけれど、結果は美味しいおにぎりでした。決めつけ、偏見はいけません。

長屋に帰ってきた寿恵子は、りんと、れんこんを焼きながら

りん「木の芽ってなんの芽?」
寿恵子「確かに」

なんておしゃべり。

「確かに」という相槌は明治時代にあったかわかりません。ちょっと現代用語ぽいですが、「らんまん」では時々、あえて、現代語を混ぜているように思います。そうやって、若い世代にも親近感をもたせようとしているのかも。

りんと寿恵子のおしゃべりのなかに、今後のヒントがつまっている気がします。
荒れ果てた土地をどうするか。みんなで協力して建て直していく。
根津界隈も何度も焼き討ちにあったが、そのたび、みんなで建て直した。
渋谷にも可能性がある。

寿恵子は、万太郎(神木隆之介)の影響で、まず、渋谷を観察しようと考えます。万太郎と一緒に横倉山をフィールドワークしたことを思い出し、渋谷を自分の横倉山として観察しようと考えます。
ラストは寿恵子の瞳のアップ。犯人がわかっちゃう、推理ものみたい。

江戸が日本の中心になる前、江戸は湿地帯で荒野でした。日比谷あたりは海が迫っていて、海を埋め立てて開発されましたが、もっと内陸ーー渋谷のほうはまだ荒れ野原だったのです。

もともと、谷なので、いまだに雨が降るととんでもなく増水します。意外と不便な危険地帯が、いまや、ファッションや文化の中心地のようになっています。

渋谷の発展のはじまりに、寿恵子が関わりそうでワクワクします。


(文:木俣冬)

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