「エルピス」第4話:私たちは鈴木亮平に勝てない


長澤まさみ主演の“月10”ドラマ「エルピス—希望、あるいは災い—」が2022年10月24日放送スタート。

本作は長澤演じるスキャンダルで落ち目となったアナウンサーと若手ディレクターらが連続殺人事件の冤罪疑惑を追いながら、“自分の価値”を取り戻していく社会派エンターテイメント。共演は鈴木亮平、眞栄田郷敦ら。

本記事では、第4話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「エルピス—希望、あるいは災い—」第4話レビュー

深夜番組「フライデーボンボン」内のコーナー「エナーズアイ」で、松本良夫(片岡正二郎)の冤罪特集VTRをゲリラ的に放映した恵那(長澤まさみ)。

事前に知らされていなかった岸本(眞栄田郷敦)含め、視聴者である我々もヒヤヒヤしたが、視聴率&世間の評判は上々。局長直々に、2回目への後押しもいただいた。

結果的に「おじさんのメンツは丸潰れ」であるからこそ、これからはより慎重に下手に進めねばならない。

なんてったって、「おじさんのメンツとプライドは地雷」なのだから。

「コンポストみたいなこの職場から、自分の仕事を取り戻」すためにも、よりこの冤罪事件に本腰を入れ始める恵那と岸本。

この第4話において、恵那、そして岸本それぞれの「戦うべき敵」の存在が明らかになった。

恵那は、もちろんこれ以上、権力者に押し潰され自身の仕事を見失わないように注力せねばならない。数字と評判さえ保っていれば、理不尽な言い分を飲み込む必要はなく、正しいことができるのだ。

彼女にとって、斎藤正一(鈴木亮平)も厄介な相手である。

彼は前回、恵那に「特集の放送を止めさせ」ようとしていたらしい。それを伝えにわざわざ恵那の自宅まで来たにも関わらず、彼女が弱っているのを見て取りやめたのだ。

斎藤は恵那の心の動きを分かりきっている。恵那自身もそれを痛感しているからこそ「敵いっこない」のだ。

あの状況で「それじゃ、なんでベッド買ったの?」と聞かれ、答えられる人間がいるだろうか。私たちは、鈴木亮平に、勝てない……。

さて、岸本にとっての敵は、過去だ。

彼が中学生だった頃、同級生がイジメを苦に自殺した。岸本はその同級生と友人関係であり、ハッキリと、イジメについて相談を受けていたらしい。

「自分がイジメられるのが怖い」と思った岸本は、自身の母に相談した。しかし、イジメの主犯格が「学年で一番の有力者の息子」だったことから、具体的な対策はなされなかった。結果、悲しい事件に繋がってしまったのだ。

岸本は、ずっと自分のことを「勝ち組」だと思いながら生きてきた。しかし、それは母親からの、そして自身による洗脳によって、そう思い込んできただけなのかもしれない。

長いものに巻かれ、マジョリティの意見に賛同し、権力に負け続けてきた者たち。上手く世渡りをしてきた多数派を「勝ち組」と呼ぶような社会に、未来はあるのだろうか。

明らかに、岸本の目は変わった。

それを真正面から見据えた恵那は「脳天から真っ二つに切られたような気がした」。自身の愚かさ、惨めさ、情けなさを痛感して……。器の小ささを突きつけられたとき、人はどうしようもなく逃げたくなるのかもしれない。

松本良夫の再審請求は棄却されてしまった。番組の影響により、またもや権力からの圧が降りかかるのか。

この事実を前に絶望した一人が、その末に、悲しい選択をしてしまったのかもしれない。

しかし、番組の影響はネガティブなものに限らない。被害者の一人、井川晴美(葉山さら)の姉・純夏(木竜麻生)は、恵那に電話をくれた。放送してくれてありがとう、と。

権力と戦うことを諦めない者たちが、逃げずも隠れもせずに立ち向かった先にあるのは、納得できる結末であってほしい。

(文:北村有)

「エルピス」インタビュー「CINEMAS+ MAGAZINE」にて掲載中!



「エルピス—希望、あるいは災い—」岸本拓朗役の眞栄田郷敦、脚本・渡辺あやらのインタビュー掲載の「CINEMAS+ MAGAZINE no.01」、現在絶賛発売中です。

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