「silent」第7話レビュー:紬(川口春奈)の”無神経”が、物語を動かすのかもしれない

川口春奈が主演、目黒蓮(Snow Man)が相手役となる「silent」が2022年10月6日スタート。

主人公・紬(川口春奈)は突然別れを告げられた元恋人・想(目黒蓮)と8年ぶりに再会。彼は難病により、ほとんど聴力を失っていた……。
音のない世界でもう一度“出会い直す”ことになった二人と、それを取り巻く人々が織り成す、せつなくも温かい物語。

本記事では、第7話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「silent」第7話レビュー

想(目黒蓮)の耳が聞こえなくなってからできた唯一の友達で、生まれつき耳が聞こえない奈々(夏帆)。明るく見えた彼女にも、焦がれても叶わないものがあるのだとわかり、切なかった前回。第7話は、紬(川口春奈)の自分の気持ちに正直すぎる言動にええ、と思うところもありつつ、ラストの展開に持っていかれた。

「振らなくていいよ」奈々の気遣い

想に背を向けて立ち去った奈々、少しして想を振り返るけど、想は紬の後姿に駆け寄っていて、心がぎゅっとなった。想に借りていた本をまとめて返しにきて、ドアにかけて立ち去ろうとしたがちょうど想が帰ってきてしまいビクッとなっているのがちょっとかわいい。2人のやりとりで長いこといい友人だったのだなとわかるし、笑いあってしまう感じにほっこりする。仲いい友達同士でどちらかが好きになってしまって、もともとの友達関係が消えてしまうの、仕方ないことだけど切ないよな。

想の好きな本、難しいけど好きなふりをしていたという話に、はじめて想と話したとき、よく知らないのに「知ってる」と言った紬を思い出した。紬のCDは想が本当は知らないことに気づいて「今度貸すね」と言ったところと、言われるまで奈々もその本が好きなんだと思っていたところは違うけれど、好きな人の好きなものを好きになりたい気持ち、恋だなぁ。

あらためて何か言おうとする想に「振らなくていいよ」「振ったほうが悪者みたくなりでしょ? 勝手に好きになられただけなのに」「悪者にならなくていいよ」と言う奈々の言葉に、確かに振る=罪悪感につながってしまうなと思った。解像度の高さがさすがだ。そして奈々、いい子だな。前回のひどい言葉は、コップに水があふれてしまった結果だったのかな。

すれ違う紬と想

一方紬と想は、ちょっとギクシャクしていた。ちょうど職場の出版社に直接行くことになり、「声って出せないの?」と聞かれる想。相手も悪気があったわけではなく、何気なく聞いただけだったのだが、おそらく想に取ってはあまり触れられたくないところで、相手の人に謝られる感じになってしまった。その後待ち合わせしたファミレスで、紬は「声でしゃべらないの、何で?」「途中で聞こえなくなった人は声で話す人が多いって聞いたから、何でかなって思って」と聞いてしまったのである。出版社での出来事からの蓄積もあり、想は「声が好きなんだもんね」とちょっと卑屈な言葉をスマホで打つが、見せずに伏せる。

想のほうがずっと大変な状況だが、この気持ち、少しだけわかる気がする。筆者は斜視で、特に疲れると視点が定まらないときがあり「どこ見てるの?」と聞かれることがたまにあった。相手に悪気がないことはわかっているのだが、気にしていることを聞かれることも、説明すると決まって相手が申し訳なさそうな空気になってしまうのもどっちも嫌というか、ちょっと疲れてしまう感じがあった。多分今なら同じように聞かれても気にならないけど、想は失聴して数年しか経っていないし、気になるだろうな。

気になったことを聞くのが紬なのはわかってるし、タイミングも悪かったと思うんだけど、「聞かれたら嫌とか考えないのだろうか?」とちょっとだけ思った。

紬、さすがに無神経すぎるのでは……?

帰宅後、家で真子(藤間爽子)と飲む紬。そこへ爽子のスマホに湊斗からの着信があり、紬は湊斗に想と話したことあるか、想が声を出したことがあるかを聞く。付き合ってるときも想の話めっちゃするのちょっと気になったが、自分より想のほうが紬に合っていると思ったのもあって別れた湊斗に想のこと聞くんかーい。

湊斗に「名前は呼ばれたけど、湊斗って」「しゃべったほうがいいって聞かれたんだけど、しゃべりたくないなら、ね、無理にしゃべることないし。嫌なことの理由ってわざわざ言いたくないことも、あると思うし」と言われ、自分が聞いてしまったことに落ち込む紬。ちょっと気の毒だけど、ちょっとだけ「いいぞ湊斗」「気遣いできる人はそう思うよなぁ」と思ってしまった。

「奈々さんて知ってる? 声出さなくていいから、気を許せるのかもね」と言われるが、湊斗はすぐに「余計なことを言ったかも」と気づく。真子にも「(中途失聴者で声で話さない人は)少ないってだけで、いるのにね」と反省した紬。

だがその次の行動がわれわれの予想を超えていた。「奈々さんと話したいんだけど、連絡先教えてもらっていい?」「奈々さんてどんな人?」

……なんでそうなる??? 奈々的に今、紬はいちばん会いたくない相手では……? 紬は話したいかもしれないけど、奈々の気持ち考えたりできないの?? とハテナでいっぱいだった。

「おすそ分けしたって気持ち」奈々、天使なのでは?

紬の要望に応じ、待ち合わせ場所で待つ奈々。まず会ってくれるだけでいい人だなと思う。
そして紬が手話で話したのは、想が奈々のことをどんな風に思っているかと、「今の想くんがいるのは奈々さんのおかげです、ありがとうございます」というお礼。

前者はうれしい内容かもしれないけど、おそらく想が好きな相手である紬から聞きたくないだろうし、後者は何目線なのか??? と思ってしまった。たまにドラマである、本妻が愛人に「この人がお世話になってます」というシーンを思い出した(逆の場合もあり)。

悪気ゼロなのはわかってるし、この内容を正輝(風間俊介)に頼んで手話にしてもらって覚えてきたのは正直にすごいんだけど、悪気なくこういうことしちゃうところが個人的に苦手かもしれない。これこそ水をかけられてもおかしくない状況だと思う。

でも、奈々は悪くは思わなかったようだ。「手話下手くそだね」と言いつつ「もっと想くんと話したほうがいいよ」と伝える。

その後図書館で想を見かけた奈々は、はじめ隠れようとしたが、男の子に「あれ取って」と言われているが、内容がわからない様子を見て気になってしまう。男の子を抱き上げることで解決した想を見て、なんともいえない表情をしていた。

奈々は想に、紬が下手くそな手話で一生懸命話してるのがすごく愛おしかったと言う。
想が紬に手話を教えたことを「プレゼント使いまわされた気持ち」と言ってしまったが、今は「おすそ分けしたって気持ち」「あげてよかったって気持ち」だと言う。想に手話を教えたのは自分が話したかったから、自己満足だよと。奈々、いい子すぎないか……。

紬のまっすぐすぎるところ、相手を気遣うより思ったことを口にしてしまうところを”無神経”と感じてしまったが、気遣って遠慮して言うのをやめたらそこから進まないし、そんな無神経さが物語や状況を進めているのかなとも思った。

あと、前回の感想として奈々に同情する声と、嫌なやつという声と両方あったが、ここでまたこんな風にバランスを取る、制作陣のさじ加減になるほどなとうならされる。完全にいい人も、完全に嫌な人もいない感じ。

”叶わない夢”の続きに涙

前回切なかった、奈々が見た夢。でも、想も全く同じ、奈々としゃべって荷物を持って話す夢を見ていたとわかって、ちょっと泣けてしまった。

「よかった」「私も似たような夢見るけど、音がないから」「想くんの夢のほうでちゃんと声出てるならよかった」「私にも想くんの声、聞こえてるならよかった」という奈々の言葉にも泣いた。なんだかでも、この夢が奈々にとってつらいだけのものじゃなくなって、よかった。

ハグ……!

高校のときにもらった想の作文の話になり、「読みにくる?」と家に誘ってちょっとしてあせる紬。想が家にきて、なんとなくお互い意識してしまうところに「最近覚えた手話は?」と聞かれて「片思い」と答えた紬に「覚えなくていいよ」と言う想、たまらん。

意識しつつこの間は無神経なことを言ってしまったけど、声でしゃべらなくても好きだからと伝える。作文を取りに行こうとする紬の手をつかんで引き止め、両手を握って話そうとする。「いい、いいよ、大丈夫。しゃべんなくていいよ」「この前無神経なこと言ったから、違うから、声が好きだったのは本当だけど、声以外も好きだから。しゃべんなくても好きだから、大丈夫」と手を握られているので言葉で言う紬。手話で伝え直そうとする紬を抱きしめる。「伝わった? 伝わってる」とわかる紬もすごいな。っていうかハグ……!

湊斗と別れてからあまり経っていないのは若干気になるけど、これはこれでよかった。

奈々と正輝、やはり知り合いだった

正輝の手話教室の前で立つ奈々。外から帰ってきた正輝は声をかけるが、奈々が自分のほうを見た瞬間表情が固まる。久しぶり、ということは、やはりこの2人知り合いだったのか……。

想の母・律子の「自己満足」

想が昔の仲間と会っていると聞いて、想に傷ついてほしくない、会ってほしくないと言い出す律子(篠原涼子)。このお母さん、心配なのはわかるけど想はもう26歳だし、ちょっと毒親だな……。想の妹・萌(桜田ひより)に「それはお母さんの自己満足だよ」と言われる。萌のほうがある意味大人かもしれない。

同じ「自己満足」でも、奈々の自己満足と律子の自己満足の違いがすごい。

このタイミングで来週が休みだなんて!!!

来週はワールドカップのため、放送はお休み。想と紬のその後も奈々と正輝の関係も気になるのに休みだなんて……! 今までの回を見返して耐えよう。

(文:ぐみ)


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