©2022「月の満ち欠け」製作委員会

時代を超越する“愛”ーー映画『月の満ち欠け』が教えてくれる本質


▶︎『月の満ち欠け』の画像を全て見る

「生まれ変わっても逢いたい人はいますか?」

思わず考え込んでしまうキャッチコピーが冠された映画『月の満ち欠け』が、2022年12月2日に公開を迎えた。

佐藤正午の同名小説を原作とした本作には、大泉洋、柴咲コウ、目黒蓮、有村架純、田中圭、伊藤沙莉など、日本の映画界を代表する面々が名を連ねた。時間と空間を越えた真実の愛に、真正面から光を当てたラブストーリーとなっている。

人との物理的な距離感に気を遣い、画面をとおしてのコミュニケーションも増えた現代。恋愛そのものを億劫がる風潮も強まっているように感じるが、やはり、私たちは他人なしでは生きられない。

この作品が私たちに思い出させてくれるのは、この時代だからこそ忘れてはならない、愛の在り方なのかもしれない。



真正面から愛を描いた物語、呼応する役者陣の姿勢

ある日、大泉洋演じる小山内の元へ、三角と名乗る男性(目黒蓮)が訪ねてくる。

小山内は、妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃(菊池日菜子)を交通事故で亡くしていた。その亡くなった娘の瑠璃は、かつて三角が愛した女性の生まれ変わりなのではないかーーそんな、信じがたい話から、この物語は幕を開ける。

亡くなった命は、いったいどこへ向かうのだろうか。それとも、どこにも向かわないのだろうか。

生まれ変わり、いわば輪廻転生を信じるか否かは、人それぞれだろう。しかし、この映画を見ていると、愛する人の命ならば延々と繋がっていってほしい……自然とそう願ってしまう。


娘の瑠璃は、とある出来事をきっかけに、不思議な言動をするようになる。

知るはずのない歌のメロディを口ずさむようになったり、行ったことのないはずのレコード店へ足を伸ばすようになったり。小山内と梢は、その違和感を察しながらも、まさか“生まれ変わり”に結びつけようとはしない。

しかし、その様子をスクリーン越しに見守る私たちには、痛いほどに伝わってくる。

心から愛する人がいるのに、命を絶たれてしまった絶望。愛し、愛された記憶を保ったまま、次の身体へと受け継がれた命の奇跡。その、繋がった糸をなんとか切らすまいと、夢中になる盲目さ。

小山内が家族と過ごした時間と、三角が“瑠璃”(有村架純)と重ねた時間。それらが交互に描かれるたび、ただ単純に「切なさ」「やるせなさ」といった言葉では表現できない焦がれた心境が、ひたひたと沁みてくる。



この映画は、何の企みもなく真正面から、愛を描いている。そして、大泉洋を筆頭にした役者陣が、この物語に真摯に向き合った姿勢までもが表れている作品でもある。

若き才能を支える大御所たちの安定感

木曜ドラマ「silent」で目黒蓮旋風が巻き起こっているのは、ドラマファンの間では周知の事実に違いない。NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」にも出演しており、ますます注目度は上がっていくだろう。

そんな若き才能を支える、大御所たちのブレない安定感に言及しておきたい。

大泉洋と柴咲コウの二人は、本作で夫婦役を演じている。どちらもキャリアの長い役者であり、その力量も言わずもがなだ。しかし、改めて“見ていて安心できる”二人だと感じる。


彼らが共演したのは、劇団ひとり監督の映画『青天の霹靂』(2014)以来だろうか。この作品では、物語の設定上“親子”を演じていた。8年の時を経て、さらに磨きのかかった表現力を味わえるはず。

また、本作での隠れたキーパーソンとして、田中圭と伊藤沙莉にも触れておかねばならない。

田中圭の役柄は、有村架純演じる瑠璃の夫である。少々、いやだいぶモラハラでストーカー気質のある夫は、その言動で少しずつ瑠璃を追い詰めていく。

見ていると、自然と眉にシワが寄ってしまうようなキャラクターだ。土屋太鳳と共演していた映画『哀愁しんでれら』(2021)を思い出す方も多いだろう。

もちろん田中圭は主役も張れる役者だが、最近は映画『耳をすませば』(2022)で演じた作家役など、あえてメインではなく脇を固める役どころも増えてきた。それぞれの作品で、また違った味を見せる田中圭にも注目したい。


そして、伊藤沙莉の立ち位置も絶妙なのである。

本作で彼女が演じる役柄を詳しく述べてしまうと、物語のネタバレに繋がってしまう恐れがあるため、ここでは控えておく。

しかし、確実に物語を動かすキーパーソンであり、伊藤沙莉の実力があってこそ表現し得たキャラクターであると言える。コメディからシリアス、恋愛ものまで、幅広くやってのける実績があってこそ、説得力が感じられるのだ。

記事冒頭でも述べたとおり、映画『月の満ち欠け』は「生まれ変わっても逢いたい人はいますか?」をキャッチコピーに掲げたラブストーリーである。人が人を想う愛の形について、あらためて原点に立ち返ることのできる作品だ。ぜひ、スクリーンで味わってほしい。

(文・北村有)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

©2022「月の満ち欠け」製作委員会

RANKING

SPONSORD

PICK UP!