『ペイン・アンド・グローリー』公開を記念して、ペドロ・アルモドバル監督作品3選!
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2020年6月19日から公開される『ペイン・アンド・グロ-リー』は、世界的映画監督が心身ともに疲れ果てつつ、過去の自分を回想しながら己の歩みを振り返っていくという、本作の監督ペドロ・アルモドバル自身の人生を反映させた作品で、アルモドバル作品の常連でもあるアントニオ・バンデラスとペネロペ・クルスが主演。そしてバンデラスが第72回カンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞した話題作でもあります。
さて、そんな『ペイン・アンド・グロ-リー』を世に放ったペドロ・アルモドバル監督は、1951年(1949年説もあり)生まれのスペイン人。
幼い頃は両親から司祭になることを期待されるものの、本人は映画に目覚め、母国がフランコ政権から民主化へ移行していく中で反権威的芸術運動に参加し、そこで女優のカルメン・マウラと出会い、彼女を起用した『ペピ・ルシ・ボンとその他大勢の娘たち』(80)で長編映画監督デビュー。
『バチあたり修道院の最期』が評判となり、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(87)がヴェネツィア国際映画祭脚本賞を受賞してアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートし、世界的にもクリーンヒット。
その後も『アタメ』(90)『ハイヒール』(91)『キカ』(93)などの問題作を次々と連打。
そして98年の『オールアバウト・マイ・マザー』でアカデミー賞外国語映画賞を、2002年『トーク・トゥ・ハー』でアカデミー賞脚本賞を受賞し、スペインのみならず世界に名を馳せる巨匠として現在も旺盛に活躍中です。
彼の作風をざっくり記すと、ドラッグやゲイ、また下ネタ的な要素も積極的かつ大らかに導入し、派手な色彩美でポップかつブラックユーモアに満ちたタッチで情熱的に描出しながら、人間の欲望やら家族と個人の関係性などに言及していくものが多いのが特徴ともいえるでしょう。
今回はそんなペドロ・アルモドバル監督の資質が端的に窺える作品を3本ご紹介!
デビュー作に作家の資質が垣間見える
『ペピ・ルシ・ボンとその他大勢の娘たち』
(C)2013 Video Mercury Films All Rights Reserved
本作はペドロ・アルモドバル監督の記念すべき長編映画デビュー作で、日本では劇場未公開ですが、DVDや配信で現在鑑賞が可能です。
自宅の窓際で大麻を栽培しているペピ(カルメン・マウラ)は、そのことが近所の警官にばれて、口外しないことを条件に無理やり処女を奪われてしまいます。
復讐に燃えるペピは友人に依頼して、警官の妻ルシを凌辱。
しかしルシはマゾヒストであったことから、事態は思いもかけない方向へと転がっていく……!?
「デビュー作はその監督の資質を最も如実に表すもの」とみなされることは往々にしてありますが、本作もまたドラッグやゲイ、マゾヒスト、けばけばしい色彩美、エロティック・スクリュボール・コメディ的なけたたましくも情熱的展開などなど、アルモドバル監督作品群に多く見出されるモチーフや特色が多々見受けられ、そうした映画論を裏付ける絶好のテキスト足り得ています。
本作はカルメン・マウラなどの助力によって完成した自主製作映画ですが、4年にわたって深夜興行が続くほどのカルト的人気を得て、製作費の7倍の興収を得ることができたとともに、アルモドバル監督の名前をスペイン映画界にとどろかせることにも成功したのでした。
そのヒロイン、カルメン・ラウラはこの後もアルモドバル監督作品に多数出演し、特に80年代は彼の映画のミューズとして讃えられました。2006年の『ボルベール〈帰郷〉』では、出演した他の女優たちと一緒にカンヌ国際映画祭女優賞を受賞しています。
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