「鎌倉殿の13人」最終話:この世の怒りと呪いを全て抱えて地獄へ持っていく
本記事では、最終回をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「鎌倉殿の13人」最終話レビュー
吾妻鏡を読んでいる人物。まさかの松本潤演じる徳川家康の登場だ。家康は吾妻鏡の愛読者だったという。そして、彼もまた坂東を幕府に開くことになる。
「いよいよ承久の乱の始まりかあ」とワクワクする表情。
圧巻の、最終話が始まる。
家康の言葉通り、承久の乱からスタート。
泰時(坂口健太郎)を総大将に京へと攻め込む。出立時、泰時が率いるのは自分を入れて18名。が、東海道を進軍していくにつれ、御家人たちが続々と加わっていく。総勢19万。
京都の最終防衛線、宇治川で後鳥羽上皇(尾上松也)勢は必死の抗戦を繰り広げるが、なにせ、大軍である。そして泰時の策。
平盛綱(きづき)が矢を受け、あわや……というシーンがあったが、生き残る。
後鳥羽上皇に勝利した義時(小栗旬)は上皇を裁き、次の帝を決めなければならない。ここまでの歴史の勢力図が大きく変わる瞬間だ。
これでようやく終わったのか……というとき、義時が倒れる。
一度は回復するが、運慶(相島一之)が作った義時に似せた仏像を目にすると、怒りで頭に血が上る。仏像を斬ろうと刀を抜いた義時はそのまま昏倒する。
医者の見立てでは毒を盛られていたらしい。即効性はないのか、次第に体をむしばんでいくのか。
毒を盛ったのは、のえ(菊地凛子)。
息子を後継ぎにしたかった。そんなのえに向かって、義時は「もう少し早く本性に気がついていれば」と言うが、のえは「私のことなんてちっとも見ていなかったのだから、気がつくはずがない」と返す。やはり、毒を盛るまでになったのは、義時のここまでの言動と、妻への関心のなさのせいだろう。
そして、その毒を用意していたのは三浦義村(山本耕史)だった。何度も裏切ろうとし続けていた義村。承久の乱でも上皇側につこうとしたが、形勢は北条優勢だった。つくづく時流を読むのがうまいのか、実は自分でも気がつかないうちに本心では裏切る気がないのか。
善村と共に酒を飲みかわす義時。毒が入っていると思しき酒を勧める。義村は毒が入っていると警戒し、飲もうとしないが、義時に責められ口にする。
ここでようやく本心を言いながらも足元が危うい、口も痺れ始めてうまく喋れなくなる。
「よく打ち明けてくれた。礼に俺も打ち明ける。これはただの酒だ」という義時に、義村は「ほんとだ。喋れる」。本当に……義村……。
そんな義村から打ち明け話をひとつ。
「おなごはみな、きのこが好きだと言ったが、あれは嘘だ。でまかせよ」
あの義時の「女性はきのこ好き」の原点が義村だったとは。
「早く言ってほしかったあ……」とつぶやく義時は昔の表情が少し覗いた気がして、逆に寂しくなる。
泰時やトキューサ(瀬戸康史)も立派に成長し、平和な世を作るために動き始める。そして、泰時による「御成敗式目」も。
(初に褒められると本当にうれしそうな泰時、かわいい)
さて、義時の最期は。
見舞いに訪れた政子(小池栄子)とこれまでを振り返る。
「それにしても血が流れ過ぎました」と血を流していった者たちをあげる。
「梶原殿、全成殿、比企殿、仁田殿、頼家さま、畠山重忠、稲毛殿、平賀殿、和田殿、仲章殿、実朝さま、公暁殿、時元殿……これだけで13」
「鎌倉殿の13人」のタイトルがここで回収され、驚いているがそんな場合ではない。
政子の表情がなくなる。
「どうして頼家が入っているの」
そう、頼家は病で亡くなったとされていた。
「だめよ、嘘つきは。自分がついた嘘は覚えてないと」
ここで、真相が分かってしまうとは。
たくさんの血が流れた。
でも、義時はまだ血を流すために生きようとする。帝が返り咲こうと画策している。それを止めなければと言うのだ。
義時の薬を手にした政子だが、その話を聞いて、手が止まる。
泰時のために、自分が手を汚す。義時の名が汚れれば汚れるほど、泰時の名は輝く。
「この世の怒りと呪いを全て抱えて、私は地獄へ持っていく」
政子は薬を床に全て捨ててしまう。
そんなことをしなくても、泰時は頼朝にも義時にもできなかったことを成し遂げる、と政子は言い切る。
「かしこい八重さんの息子」と政子。
「あれを見ていると八重を思い出すことがある」という義時には、八重の姿が見えただろうか。
毒を盛られたのは報い。
でき政子が薬を渡さなかったのは、頼家を殺されたことに対する報いなのかというと、少し違う気がする。これまで手を汚してこなかった政子が、最後にできること。もしかすると、これもまた政子が受けた報いなのかもしれない。
息絶えた義時。すすり泣く政子。最後まで響いていたすすり泣きが耳から離れない。
家族の物語であり、姉と弟の物語。物語の最後は、2人きりだった。
時は流れ、戦国。
さて、吾妻鏡が愛読書だったという家康はどのような世を築くのか。
それはまた、来年の話である。
(文:ふくだりょうこ)
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