【興行分析】『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は今後の上積みがカギ?


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コロナ禍で延期が続いていたハリウッド大作も、順調に公開されるようになった感のある2022年。

『トップガン マーヴェリック』を筆頭に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『ザ・バットマン』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』『ブレット・トレイン』などのハリウッド大作が、日本でも劇場公開されるように。

その“大トリ”を務める形でジェームズ・キャメロン監督の13年ぶりの新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が12月16日(金)に公開されました。

なんと日本国内の約4割のスクリーン数(1466)を押さえるという、日本映画興行史に残る最大規模の公開体制が敷かれています。

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前作『アバター』と3D狂騒曲

(C)2009 Twentieth Century Fox. All rights reserved.

前作の『アバター』が公開された2009年、筆者はとある大手の興行会社(映画館運営会社)の本社に勤務していました。部署は違いましたが、この頃の『アバター』と3D映画に関しての騒動はとても記憶に残っています。

それまでの3D映画、特に筆者の世代以上の人たちにとっては、赤と青のセロファンのメガをかけて見る“アトラクション色”の強いものでした。しかし『アバター』の3Dは全く異なり、映画館としても対応できる映写機とスクリーンの導入・改修が必要になり、映写技師へのトレーニングにも時間を割く必要がありました。つまり、大掛かりな設備投資が必要になるわけです。そのため、設備投資の内容について、それはもう喧々諤々としたやり取りが展開されていました。

「そもそもジェームズ・キャメロンの『アバター』という映画にそこまで対応する必要性があるのか?」という議論もありました。なにせ劇映画は『タイタニック』以来12年間新作がなかったのですから……。

(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ヒットメイカーや巨匠と呼ばれる人たちでも、作品の間が開いたことが興行的に不利に働くことは少なくありません。加えてどれだけ検索してもあらすじのさわりすら出てこない。SF映画となると1991年の『ターミネーター2』以来です。

技術者として常にハリウッドの先陣を切ってきたジェームズ・キャメロンとはいえ、全く新しい3Dについては、海のものとも山のものともわかりません。その状況で、全国の映画館の莫大な設備投資が成功するか全く読めませんでした。



実際に2009年に12月に『アバター』が公開されると、ジェームズ・キャメロン待望論や“全く新しい3D映画”への話題性もあって、日本国内だけで156億円の興行収入を上げ、本国北米地区でも記録的な大ヒットを飛ばして不安説を一掃しました。

日本国内では翌年の2010年に『アリス・イン・ワンダーランド』と『トイ・ストーリー3』という100億円映画が立て続けに登場してくれたおかげで、3D映画の設備投資の面でも問題は解消されました。

(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

その後、3D映画自体はやや衰退してしまい、超大作であっても3D仕様を用意しないケースも増えました。その代わりにIMAXシアターやドルビーシネマ、ドルビーアトモスなどのいわゆる“ラージフォーマット”の充実が進められます。

13年前に起きた3D狂騒曲は結果的に成功に終わり、ラージフォーマット導入への潮目を変えた出来事だったと言っていいでしょう。

ついに公開!『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』


そして、12月16日(金)ついに『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開。本作は公開初週2日目で興行収入6.46億円、観客動員35.4万人を記録しました。

動員ランキングで見ると『THE FIRST SLAM DUNK』『すずめの戸締まり』に続く3位でスタートです。(動員に対して興行収入が高いのは3D料金・IMAX料金に加えてハイフレーム上映料金の追加が考えられます)

2022年最大のヒット洋画となった『トップガン マーヴェリック』対比で興行収入57%、観客動員49%です。『トップガン マーヴェリック』は1986年の『トップガン』の36年ぶりの続編で、前作に引き続きトム・クルーズが主演。2019年公開予定が、コロナ禍による延期で2022年に公開となりました。


ちなみに『トップガン マーヴェリック』は全国381館745スクリーンでの公開だったため、規模でいうと『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の半分ほどです。

結果的にトム・クルーズも来日するなど、フル稼働したこともあって日本国内で134.9億円の興行収入を記録。実写洋画の100億円越えは2019年の『アラジン』以来です。

『トップガン マーヴェリック』は北米映画ランキングで7億ドルを超え、北米歴代5位に入るメガヒットを記録。この北米歴代ランキングにおいて『トップガン マーヴェリック』の上回ったのが、前作『アバター』です。


『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の北米地区における初週週末の数字として1.34億ドルを記録し、『トップガン マーヴェリック』(1.26億ドル)対比で108%、『アバター』(当時ラージフォーマットが未発達だったこともありスタートの数字は7700万ドル)対比で174%となります。また世界市場では、4.35億ドルを稼ぎ出しました。ただ制作費用が高いため、現状を手放しでは喜べないかもしれません。

稼ぎ時のクリスマスシーズン、さらに世界市場(特に中国)のウケがいい“アバター”ブランドの力で今後どこまで上積みができるかに注目です。

『アバター』2~5作目まで連続公開予定


今後の“アバター”については、第5作目まで公開される予定です。

3作目は既に撮影済みであり、脚本自体は5作目まで執筆・計画済みの模様。とはいえ、続編の公開を続けるためには大ヒットによる制作資金の確保が必要です。

今後続くパート3以降も『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』と同等かそれ以上の数字を求められることになるため、勢いを保ち続けられるかが今後の大きな課題となるでしょう。

(文:村松健太郎)

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