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『バイオレント・ナイト』が『ダイ・ハード』と『ホーム・アローン』を悪魔合体させた大傑作である理由


撮る映画が全て面白いトミー・ウィルコラという監督の名前を覚えて帰ってね!

ここで、この『バイオレント・ナイト』の監督・脚本を手がけたノルウェー出身のトミー・ウィルコラという名前を推しておきたい。撮る映画全部が面白いという奇跡のようなお方であり、そこには明確に作家性があるのである。一挙に紹介しよう。

『処刑山 デッド・スノウ』

雪山に来た8人に大学生が、凍土の中から復活したナチス兵のゾンビ軍団に襲われる、昔ながらの由緒正しきスプラッターホラー映画……と思いきや、なかなかに意外な展開も待ち受ける。やや陰惨なムードがありグロマシマシだが笑えるシーンもある。「海へ行けばよかった!」はあまりに名言。

『ヘンゼル & グレーテル』

誰もが知る童話をグロありファンタジーアクションへとリメイク。劇中に細い針金に突っこんだ魔女がサイコロステーキ先輩(by『鬼滅の刃』)になるシーンがあり、『鋼の錬金術師』の作者である荒川弘は、そのシーンを観た息子に「牧場にも細い針金がいっぱいあるから気をつけるんだよ!」と教えていた(参考:『百姓貴族』の4巻)。

『処刑山 ナチゾンビVSソビエトゾンビ』

『処刑山 デッド・スノウ』の続編だが、こちらからでも問題なく楽しめる、超グレードアップした続編。途中から参戦するのが「ゾンビオタクの女性2人男性1人」というトリオで、その内1人は『スター・ウォーズ』オタクだったりもする。この手の映画に厳しい印象があるFilmarksでも4.0点のハイスコアを記録するなど絶賛の嵐。『バイオレント・ナイト』以外ではイチオシ。

『セブン・シスターズ』

「徹底された1人っ子政策の中、7つ子が1日ごとに入れ替わって生きる」という設定で、娯楽性が高いSFサスペンスを求める方にうってつけ。ノオミ・ラパスが7つ子の姉妹を1人7役で演じている。トミー・ウィルコラ監督作の中ではコメディ要素が控えめ。なお、後に公開された中村倫也主演映画『水曜日が消えた』に似ているという指摘もあったが、実際に両者を観てみるとあまり似ていない。

『ザ・トリップ』

Netflixオリジナル作品。倦怠期を超えて心から憎しみ合っている夫婦のバトル映画。おたが互いに探りを入れながらも、殺(や)る気満々な夫婦のやり取りは滑稽すぎて笑ってしまう。そして、その後はネタバレ厳禁の予想外の方向から、さらなるとんでもない事態になっていく。

と、まあ端的に言って大体の映画が素材はB級&グロありありという、全くもって高尚さと縁遠い映画を撮るお方なのだ。だが、これらの題材を下手に撮ってしまうと安っぽくなったり粗雑になりかねない。トミー・ウィルコラ監督は、むしろ「楽しんでいってね!」と圧倒的なサービス精神でもって、素材をややジャンキーに味付けで、でも超おいしく仕上げてくれる、映画に娯楽を求める観客をおもてなししてくれるので、好感しかないのである。

そして、その最新作にして最高傑作が『バイオレント・ナイト』なのだ。これら過去作品にビビッと来た方は是が非でも観てほしいし、その入門としても『バイオレント・ナイト』はおすすめだ。

クリスマスに観られないのは残念?でも、それも『ダイ・ハード』とシンクロしている!

本作で唯一、残念だと思ってしまうことは、日本ではクリスマスシーズンに本作を劇場で観られないということだろうか(アメリカでの公開日は2022年12月2日)。「クリスマスに子どもたちがサンタさんを心待ちにして、恋人たちが浮かれている今、悪い大人はサンタさん(本物)と少女が、武装した犯罪者集団に逆襲していく映画を観るぜー!YEAHHHH!」というテンションで観られないというのは少しもったない。

だが、実はそれすらもクリスマス映画の代表でもある『ダイ・ハード』と一致していることでもある。何しろ『ダイ・ハード』の日本での公開日は1989年2月4日。2月3日公開の『バイオレント・ナイト』と1日違いなのである。

この公開日を狙ったか否かは定かではないが、「クリスマスにクリスマス映画が観られないけど、それはそれとして映画はめちゃくちゃ面白い!」という33年前に『ダイ・ハード』をリアルタイムで劇場で観た人たちと同じ感覚を味わえると言っても過言ではないではないか。いや過言か?それを信じるか信じないかはあなた次第。ぜひ、ゲラゲラ笑ってハラハラして感動して涙する、最高の映画体験をしてほしい。

(文:ヒナタカ)

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