続・朝ドライフ

SPECIAL

2023年02月13日

「舞いあがれ!」短歌に詳しい史子(八木莉可子)が舞(福原遥)を一歩リード?<第92回>

「舞いあがれ!」短歌に詳しい史子(八木莉可子)が舞(福原遥)を一歩リード?<第92回>


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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。

本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第92回を紐解いていく。

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「はい、ネージ」

第20週「伝えたい思い」(演出:工藤隆史)は朝、舞(福原遥)が鏡の前でお化粧するところからはじまりました。珍しい。舞のなかでなにかが動き始めた予感がします。

昼、うめづでランチをしていると、新聞記者の、御園純(山口紗弥加)と知り合います。
東京から転勤してきた御園は舞の会社の取材をはじめます。女性が社長で、女性の職人(土屋〈二宮星〉)がいることに興味を持ったようです。それにしても若い人には「今時間ある?インタビューさせてもらってもいいかな」とか馴れ馴れしい喋り方なのか……。そしてあからさまに女性にばかり取材……。

会社の帰り、舞がデラシネに行くと、秋月史子(八木莉可子)が来ていました。この日は貴司(赤楚衛二)の第一歌集用のための短歌の締め切りでした。

史子と貴司が仲良さそうに話しているのを見ても、舞は帰りません。幼少期の舞だったら相手を気遣ってそっと帰ってしまいそうですが、社会に揉まれて強くなった舞は自分の思いを貫く人になっているので、帰りません。ややいやな見方をすれば、幼馴染として自分のほうが仲が良い自信があるのでしょう。

ところが、短歌のことがわからない舞に対して、史子は詳しくて、ふいに引け目を感じたようで、物産展の土産を渡すと早々に帰ります。

これもややいやな見方をすれば、傘を忘れていったのは、まさか貴司に追いかけてきてほしかったから? 残念ながら追いかけてきたのは史子でした。そして、どれだけ貴司を尊敬しているか熱っぽく語ったうえ、

「先生のそばにおることを悪く思わんといてくださいね」とダメ押しします。

静かな女の戦いの気配です。

貴司の短歌が「本歌取り」であることにすぐに気づいたり、短歌の内容について深く語りあえたりする史子が有利な感じもします。なにしろ、歌のなかにこめられた「孤独」について語り合えるなんて、素敵じゃないですか。しかも、史子は、ギャンブルばかりのどうしようもない父から逃げて家出(久留美〈山下美月〉とはまた違うタイプ)、バイトしながら孤独を短歌で慰めている。ほだされてしまいそうではないかですか。

ただ、史子が短歌から読み取ったのは「孤独」そのもので、貴司は「孤独」が沈んでいく様を書いたと答えます。短歌に限らず、作品に自分の抱えている苦悩を託すのはよくあることですが、貴司は短歌によって孤独を手放そうとするーーさらに先をいっているようなのです。

現在、ドラマの考察が流行っていますが、貴司と史子のやりとりのように、短歌はまさに様々な「考察」ができます。本歌取り(オマージュ)を発見したり、用いられている言葉の意味を考えたり。伏線という概念があるかはちょっとわからないですが、上の句と下の句の関係性なんかはそれに近いかもしれません。

ちなみに貴司がちゃぶ台に置いていた「黄月」の作家・佐藤佐太郎には彼の名を冠した短歌賞があります。

【朝ドラ辞典 本歌取り(ほんかどり)】

過去の朝ドラのオマージュした表現が時々ある。本歌取りと言っていい。いずれにしても、対象の作品に敬意をもったうえで、新たに作り変えることである。パクリや盗作とは別次元の創作である。
関連語:引用

(文:木俣冬)

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