「らんまん」明治の千円の価値を当時の給料と比較してみた<第73回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第73回を紐解いていく。
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寿恵子の決断
万太郎(神木隆之介)と一緒にいたい一心で、寿恵子(浜辺美波)は身の丈に合わない買い物を決意します。それは石板印刷機。価格はほぼ1000円。その資金は、峰屋の綾(佐久間由衣)が結婚祝いにもたせてくれた1000円です。1000円はどうやら大金のようです。
長屋の家賃が50銭とりん(安藤玉恵)が言うので、いかに高額かわかります。
さらに、当時の1000円の価値を知ろうと、週刊朝日編の「値段史年表 明治・大正・昭和」に掲載されている様々な給料や報酬をチェックしてみました。
明治27年の公務員の給料:50円(月額)とあります。
目下「らんまん」は明治16年頃なので、10年の間の変化はあるとは思いますがご参考までに。
例えば、国会議員の報酬は明治22年では800円ですが、32年では2000円に爆上がりしています(年額)。貨幣価値がどんどん変わっています。昭和21年では月1500円です。
都知事の給料は明治24年で4000円(月額)。
大畑さんの以前の職業火消しにちなみ、消防士の出場手当は、明治27年で10銭。
日雇い労働者の賃金:明治16年で19銭。
遊女の揚代:明治14年で1円。
給与じゃないですが、東京大学の授業料は 明治12年で12円、明治19年で25円。
日雇い労働者の賃金、明治16年で19銭と、印刷機1000円を比較して考えると、当時の1000円の価値が、例えば、長屋の人たちから見たら、どれほどのものか想像に難くありません。
なにかあったときのための1000円を使ってしまったら、もうあとがない。それでも、ここで使ってしまう寿恵子の思い切りのよさ。彼女の冒険心がここで発揮されました。
「これから先、きっととても苦しくなる。でも 今 万太郎さんに入り用なら……」
今は、峰屋から出してもらったお金だからまだいいけれど、これから先、どうなるか……。
寿恵子の激しい万太郎愛を感じる決断です。家に印刷機があれば、万太郎とずっと一緒にいられる。帰ってくるのを待ってもやもやもしないし、ご飯も一緒に食べられる。万太郎の体力的な心配も軽減します。いろいろな面で好都合なことを寿恵子は思いついたものです。
「値段史年表 明治・大正・昭和」は便利だし、興味深い本です。絶版になっているようですが、古書として手に入れることは可能です。
さて。第72回は、福治(池田鉄洋)の自分語りのターンがありましたが、第73回では大窪(今野浩喜)の自分語りが(父が旗本、東京都知事、元老院議官というすごい家の三男だった)。第15週はこれまで、活躍の場がやや少なかった人たちにスポットが当たる週のようです。劇団をやっている作家は、演劇公演において、劇団員や出演者の見せ場を必ずどこかに入れるように工夫することが多いです。今週の福治と大窪はそういう感じもします。単なるコーナーではなく、彼らの語りが、物語にちゃんと関わっているのが見事です。
いい家の子でも三男だと割りを食う。「そんなところにしか」と植物学教室のことを言う。かわいそうな植物学教室。
そんな状況で、波多野(前原滉)と藤丸(前原瑞樹)は安定の活躍です。
「この穴をなくすのは情緒的に惜しい」という波多野の台詞が最高。
(文:木俣冬)
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