「舞いあがれ!」舞と貴司の結ばれた場所が例の柏木公園という因縁<第96回>
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第96回を紐解いていく。
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心の奥までさらけ出す
いっこうに歌ができない貴司(赤楚衛二)が「拒絶されるのがこわいんです」と言うのは、まるで舞(福原遥)に告白して「拒絶されるのがこわい」と言ってるようでした。リュー北條(川島潤哉)が「なんで隠すの 心の奥までさらけ出しなよ そんな及び腰だから(以下略)」「意気地なし」「もったいないよね 梅津さん、せっかくのマグマに蓋しちゃって」等々、言葉を尽くして励ましているのも、短歌のことではなくて、恋愛についてのようにも思えます。
北條「なんで書かないんだよ」
貴司「書かないんじゃなくて書けないんです」
は
北條「なんで告白しないんだよ」
貴司「告白しないんじゃなくて告白できないんです」
に置き換えられますね。
貴司は子供の時から舞のことを想っていて、でも彼女はどんどん遠くにいってしまい、恋人もできてしまい、別れたとはいえ、次につきあってほしいとはなかなか言えなかったのでしょう。本を作ったら少しは自信がつくと思ったのかもしれません。
恋と短歌が重なり合って得も言えないムードが出来上がっています。
短歌の専門用語「本歌取り」がツイッタートレンドにあがり、今日は「仮面ライダーも本歌どり」とたちまち活用されて、朝ドラによって短歌の知識が一般に一気に広まりました。短歌業界のひとはどんなお気持ちでしょうか。
今週は「相聞歌」「本歌取り」と専門用語が出てきましたが、短歌にはほかにも、ひとつの言葉にふたつの意味をもたせる「掛詞」や、ふたつの関係ある言葉を使用する「縁詞」などの用法があります。
「舞いあがれ!」は「本歌どり」「掛詞「縁詞」などが脚本を紡ぐうえで染み付いているように感じます。ひとつのものごとをシンプルに書くのではなく、例えば、恋と創作、恋と夢がくるくると絡まり合って空に上って心が広がっていくようなイメージです。
柏木(目黒蓮)の存在も、舞のパイロットの夢の象徴のように感じる描写は、夢の消失とともに消えてしまいましたが、貴司と舞は長い時間をかけて、ようやく近づいていきます。
史子(八木莉可子)は舞の家を訪ね、部屋に飾ってあった、例の「千億の星」のはがきを見つけて、舞に歌の意味を伝えます。
史子は探偵みたいで、歌に込められた真実を探り当てました。歌人になるのもいいけれど、評論家になるのもいいかもしれません。
史子が恋を諦め去って行ったあと、舞は、貴司が昔からずっと自分を見つめ支え続けていてくれたことに気づき、矢も盾もたまらず貴司に会いに行きます。
そして、例の柏木公園でーー。最後の1首ができました。
でも柏木公園で良かったのか……。貴司は、この公園で舞が柏木と別れたことを知らないと思うので、知ったら複雑な気持ちになりそうです
思いを言葉にする大切さが描かれた「舞いあがれ!」ですが、この件だけは舞は墓場までもっていったほうがいいでしょう。
柏木公園、人間の悲喜こもごもが集まってくる磁場のある所ですね
【朝ドラ辞典 プレミアムトーク(ぷれみあむとーく) 】「あさイチ」のコーナー。朝ドラ終わりに出演者がゲストで登場し裏話を語ることが恒例になっている。
関連語:土スタ(土曜スタジオパーク)
(文:木俣冬)
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