「舞いあがれ!」金網のハンモックが斬新<第103回>
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第103回を紐解いていく。
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御園が営業に
自暴自棄な小堺(三谷昌登)を励まそうと舞(福原遥)は金網を作った商品を作ろうと提案し、ハンモックを試作します。これは小堺ひとりの問題ではなく、町工場全体の問題で、どこの町工場も小堺のように悩んでいるから、みんなで協力して、町工場全体を盛り上げようとします。
金網を使った風鈴とかハンモックとか、いまひとつぴんと来ないのですが、
何もしないよりはまし。こうやって試行錯誤することが大切です。ここから何かが生まれてくるかも。ひとりで動かずじっとしているだけだと何も変わらないですが一歩踏み出すと、人とアイデアが連鎖していきます。
ハンモックはやっぱりいまひとつでしたが、金網を新しくつくる建物にとりつける仕事が入ってきて、小堺の会社がすこしだけ息を吹き返しました。
コンセプトが町工場のものづくりを応援するというものだからか(いつの間に? 最初はパイロットを目指すドラマでしたよね)、御園(山口紗弥加)は舞たち町工場の人たちのがんばりを見て自分の生き方に疑問を感じ始めます。
「私は誰かががんばっているのをのぞきにいってるだけかも」
「がんばっている側にまわりたい気持ちもあるんだよね」
ここでの「がんばってる」は製造業という意味合いで使われています。御園の実家も町工場で製造業をやっていたから、その仕事に愛着があるんですね。
だったら「がんばってる」みたいなふわっとしたイメージの言葉ではなく、ここでははっきり「製造業」と言ったほうがよかった気がします。
と思うのは、新聞記者もがんばってると思うから。
舞がものごとを伝える大事な仕事とフォローしますが、このドラマ、多様性の時代に配慮して、ネガティブなものを作らないように、なにかとフォローが入るのですが、フォローしておけばなんとかなる的な感じも否めません。やなことを言ったあと「なんちゃって」と言えば毒が薄らぐような感じ。
製造業応援企画だとわかったうえであえて書きます。なぜなら製造業じゃない側の人間として心が痛かったから。
新聞記者だってがんばってます。出来事を右から左に伝えるだけじゃないんです。そのための言葉をがんばって考えているし、話を聞くためにどうしたらいいかを考えているし、決められた時間で記事を書くこともがんばっています。製造業ではないだけです。が、新聞の紙面づくりだってがんばって考えています。新聞という形ができるまでにどれだけがんばって、ああいう大きさや形、レイアウトが生まれたか。これだってものづくりだと思うんですよね。記者の仕事ではないですが。ひとつの記事が印刷されるまでの物語は、人力飛行機が飛んだりネジを作ったり金網を編んだりする物語の美しさとなんら変わりません。でもそれはまた別の話。
御園さんはもともと記者の仕事に興味がないのかもしれません。確かにわりと雑な取材の仕方をしているようにも見えました(なんといってもあの口の利き方)。だから営業に回されたのかな。それに、ほんとうに記者の仕事を愛していたらフリーになってもいいわけですしね。あのセリフは彼女なりの記者職を外された悔しさなのだと思いたい。小堺が悔しくて荒れたように。
【朝ドラ辞典 仕事(しごと)】
お仕事ドラマの側面もあり、主人公の仕事が何であるかが売りのひとつにもなっている。
(文:木俣冬)
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