『マジック・マイク ラストダンス』躍動する筋肉美と“解放”の物語を見よ!

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男性ストリッパーにスポットライトを当てた映画『マジック・マイク』(2012)は、表面だけをなぞってしまうとセンセーショナルなテーマに思える。

しかし深いドラマ性とエンターテインメントとして魅せるダンスシーンが見事に融合した作品であり、何より主演を務めるチャニング・テイタムの実体験から生まれた物語だからこその魅力も大きい。

そんな『マジック・マイク』シリーズの最新作が3月3日(金)公開の『マジック・マイク ラストダンス』だ。第2作『マジック・マイク XXL』(2015)以来の続編であり、第1作で監督を務めたスティーヴン・ソダーバーグが復帰(『XXL』では製作総指揮・撮影・編集でクレジット)したことでも話題を呼んでいる。

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本当の意味で「大人」になったマイクの物語

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シリーズは一貫してテイタム演じるマイクを主人公に据え、彼がダンスや仲間たちとの行動を通して苦悩し成長する姿を描いているのが特徴。一方で生活は苦しく、本作でも破産したマイクがバーテンダーとしてチャリティイベントに参加するところから物語が始まる。

イベントの主催者で資産家の女性マックスを演じるのは、『フリーダ』や『エターナルズ』など幅広い役柄をこなすサルマ・ハエック。マイクのダンスに本能を刺激されたことで、彼女はロンドンで行う「一夜限りのストリップ・ステージ」の演出家としてマイクを指名するのだが──。

『マジック・マイク』シリーズの見どころは、やはりマイクや仲間たちによる煽情的でアクロバティックなダンスシーンにある。本作では序盤でマイクとマックスのデュエットが描かれており、マイクのアプローチから始まる一連の“ショー”は(ふたりの肉体美もあり)官能的かつアートの領域に達しているといっても過言ではない。

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マックスとともにロンドンへ赴き、彼女と衝突しながらステージプランを練っていくマイクの姿も魅力的。人生の辛酸を舐めてきたからこそ自分の思いを言葉にし、演出にぶつけていく様子は前2作以上に逞しさを感じさせる。

安心感とも受け止められるそれは、本当の意味でマイクが大人の男に成長したという証明かもしれない。

人々を“解放”していくパーソナルな物語

(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT,LLC

前作『XXL』ではマイクがチームメイトとともにダンス大会へ向かう様子が描かれ、ロードムービー的な体裁とダンス大会のエンタメ性をバランスよく両立させていた。ソダーバーグ監督が復帰した本作は一転してロンドンの劇場が舞台となり、マイクとマックスによってダンサーが集められるため前作に比べてコンパクトな印象を受ける。

とはいえそれだけ物語が密になるため、マイクとマックスの距離感、さらにはマックスの家族間の関係についてもより身近なものとして受け止めやすい。マックスの娘ゼイディ(ジェメリア・ジョージ)や執事ビクター(アユブ・ハーン=ディン)もしっかりマイクに関わってくるため、たとえコンパクトでも隙のない軸足が物語を貫いている。

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またマックスと離婚問題にある夫が執拗にステージを潰しにかかってくる点も、マイクとマックスが乗り越えるべきハードルに。

そんなギスギスしたマックスの状況や、そもそも閉塞感の漂う世界すらも男性ストリップ・ショーというエンターテインメントの力で解放していく様も、本作の大きな魅力といえるだろう。

大胆かつ繊細!すべてをかけたラスト30分の感動



前2作以上にマイクのドラマを密接に描きつつ、物語がたどり着くのはラスト30分におよぶダンスステージだ。ソダーバーグ監督が「これまでの映画のすべてをかけた」と語るほどで、テイタムはもちろん各ダンサーの個性を最大限に活かすための振付が行われている。

躍動感が見られるプロダンサーはセクシーである以上に一つひとつの動きが洗練されていて、セリフでは感じることのできない自由な身体表現に目を奪われるはず。

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何よりソダーバーグ監督がテイタムをはじめとするダンサーたちに全幅の信頼を寄せており、奇をてらわずステージ全体を映し出す実直なカメラワークからも躍動感が伝わってくる。

どうしても主演贔屓になってしまうのだが、特筆すべきはやはりテイタムのダンスパートだ。雨中のステージという舞台装置によってストリップ・ダンスを超越した美しさが際立ち、ドラマ性を感じさせる点でもマイク=テイタムにとって集大成のステージだと断言できる。

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──いよいよ最終章を迎えた『マジック・マイク』シリーズ。前2作を復習した上で鑑賞すれば、物語の本筋とは別の“ちょっとしたご褒美”に思わず「ふふ」っと頬が緩むに違いない。

これまで自分の人生をどう生きればいいのか迷っていたマイクが本作でどのような答えを導き出すのか、物語のフィナーレをぜひ見守ってほしい。

(文:葦見川和哉)

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