「星降る夜に」第7話:ムロツヨシ来襲、王子様な一星。でも警察は呼んでくれ
本作は、恋愛ドラマの名手・大石静が紡ぐ大人のピュア・ラブストーリー。人に本音を吐けない孤独な産婦人科医・鈴(吉高)と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士・一星(北村)。10歳差の2人が既成概念をひっくり返し、新たな価値観を見せる物語から目が離せない。
本記事では、第7話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「星降る夜に」第7話レビュー
すごくいいシーンが多い一方で、ツッコミどころも多かった7話。病院で大暴れするムロツヨシがヤバい。でもなぜ警察を呼ばないのか
まず、鈴(吉高由里子)に嫌がらせをし続けていた男・伴(ムロツヨシ)が、ついに職場のマロニエ医院に襲来。いきなり病室に入ってくるのは怖すぎる。深夜(ディーン・フジオカ)が気づいて鈴をかばうが、伴はまた来ると宣言。伴は5年前、鈴の病院に運び込まれた妻が亡くなったことで逆恨みし、裁判を起こした人物。鈴が仕事を得て、2人の男性に囲まれているのが許せないようだ。妻は亡くなったがお腹にいた娘は助かった伴は、子育てと仕事を両立できず、会社をクビになってしまったらしい。そのこともまた、鈴への逆恨みに拍車をかけた。
伴に起こったことは本当に気の毒だが、できうる限りの対処した鈴を逆恨みするのはお門違いだ。妻が亡くなった直後、裁判のとき、そして今回も「人殺し」と言い続ける伴。第三者でも結構精神的にきつい言葉だし、言われ続けた鈴の心境ははかり知れない。
伴と深夜が対峙したことで、この2人、よく似た境遇だけどその後の行動が全然違うなとあらためて気づいた。しかも深夜は伴と違って子供まで喪っている。こんな風にしかなれなかった伴は、ある意味かわいそうだ。どうしたら、彼の心は救われるのだろう。
後日再度医院に襲来した伴は、待合室の患者たちに「雪村鈴は人殺し」「先生を変えたほうがいいですよ」と言い出す。話しかけられた春とうた(千葉雄大・若月佑美)夫妻は、伴と距離を取って「僕らは鈴先生を信じてます」と返す。
やがて出てきた院長・深夜・看護師たちも、みんな鈴の味方をするのが気に入らない伴はエスカレート。「俺は被害者なんだよ!!」と叫び、暴れ、取り押さえようとする人たちに危害を加える。
もちろん悪いのは伴なのだが、なぜ警察を呼ばないのか。すでに誹謗中傷の書き込み、家に嫌がらせ、盗撮&その写真をアップロード、家にレンガを投げ込むなど、犯罪では?と思う行動をたくさん取っている。さらに医院に侵入し暴力沙汰だ。
最初に来た時点で深夜以外の人に言わなかったのも疑問だし、二度目の襲来の際、鈴が通報しようとした院長(光石研)を「これは私と彼の問題なんです」と止めていたが、もうその域を超えていると思う。あそこで呼ばなかったことでいろんな人がケガをしたり、患者さんが危険にさらされたのでは……?
「行きますか、姫」王子様な一星とドレスをまとう鈴、めちゃくちゃいい
はじめに伴が来た後、深夜は一星(北村匠海)に、迎えに行くように連絡。一星はスーツでキメて登場。さらに鈴を服屋に連れて行く。鈴がいろんなドレスに着替えてみせ、一星が反応するシーンがめちゃくちゃかわいい。吉高由里子のよさが最高に活かされている。どのドレスも素敵だし、カーテンでドレスを隠しながら登場するところ、最高。最終的に水色のドレスを着た鈴と食事しているシーンがとてもいい。
ここでの一星の言葉がよかった。
「人殺し」という言葉が残って離れないという鈴に、「聞こえるのも大変だな」とねぎらう。
さらに次のように伝えたのだ。
「俺はいい言葉も聞こえないけど、嫌なことも聞こえない。だいたい『耳が聞こえないからかわいそう』とか『医者だから金持ちで幸せだ』とか、みんな決めつけすぎなんだよ。それに俺が聞こえないのはちょっと見てればすぐわかる」
「目で見てわからないものを抱えて生きてる人のほうが、俺よりずっと大変だ」
一星の言葉は鈴だけでなく、観ているこちらにも気づきをくれる。確かにそうだ。
現実世界での認識もそうだし、これまで耳の聞こえない人が登場するドラマはその苦しみや聞こえる人との恋愛で生じる問題に焦点を当てているものが多かった。そういったテーマも響いてきたが、こんな風に気づきをくれるこの作品は新しくて素晴らしい(一方で警察を呼ばないことへの謎が深まってしまうけど)。
深夜の鈴への気持ちは……
いろんな人に鈴のことを好きなのではと言われる深夜。素直な深夜は「好きです、(院長に問われて)抱きしめたくなることもあります。でもそういうの(恋愛)じゃないんです」と答える。北斗(水野美紀)も「みんな男女の関係に名前をつけたがるもんね」と納得するが、確かに男女が親しかったり大切に思っていたりして、それが必ずしも恋愛でなくてもいいんだよな。
鈴に一星と深夜がいてよかった
二度目の伴の襲撃のあと、3人でキャンプに行くことに。2人でパエリアを作るから何もしなくていいと言われる鈴。一人ブランコに乗りつつ伴のことを思い出す。花火をしながら、感極まって声をあげて泣き出す鈴。2人は声をかけたり慰めたりせず、ただそばにいて花火を楽しむ。花火からでる火花が綺麗だ。不思議な光景だけど、鈴のそばにどちらか1人ではなく、この2人がいてくれて本当によかった、と思った。こんな3人の関係もあっていい。
一方で、娘と2人で夜空を見上げる伴の姿も印象的だった。
伊達の妊娠 ポラリスは特殊清掃に
毎回エピソードが多すぎるこのドラマ。マロニエ医院では看護師・伊達(中村里帆)の妊娠が発覚。相手はヒモで、弁護士を目指していたが今はラノベ作家を目指しており、妊娠が知れたら捨てられる、と言う。話を聞いて怒った面々は、伊達の家へ乗り込む。サングラスをかけて歩いていくシーン、ふざけているけど本当にいい職場だなと思った。結局伊達の彼氏は「夢を追いかけているので自分は働けない」と言いつつ、妊娠を知ると大喜び。
めちゃくちゃいい話的な感じにまとまっていたが、金銭的な問題は解決していないような気がする。また、蜂須賀(長井短)が推しについて熱く語り、その推しにどこで会えるか聞いた鈴に「にわかはこなくていいです」と言うところは最高だった。
ポラリスでは特殊清掃(殺人現場の掃除)が発生。春も一星もめちゃくちゃびびっている。生々しい血のあとが残った部屋、確かに怖すぎるけど、実際には掃除する方がいるんだよな……と思った。しかし、ご褒美と言って血を連想させる真っ赤な料理をごちそうする北斗っていい性格してる(笑)。
次回も楽しみだ。
(文:ぐみ)
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