「舞いあがれ!」悠人と久留美のことを素直に祝福できない理由<第123回>
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第123回を紐解いていく。
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コロナ禍がはじまって……
悠人(横山裕)と久留美(山下美月)が結婚を決めました。遠距離交際中でしたが、お互い忙しくなかなか会えず、休暇で久留美が東大阪に戻ってきたとき、例の柏木公園で悠人がプロポーズします。
最初はなかなか会えないことに「人間なんかはひとりで生まれて ひとりで死んでくねん」といつもの調子の悠人でしたが、「そやけど長い人生50年くらいふたりで生きるのも悪くないかもな」と切り出します。
驚いた久留美が立ち上がった拍子に落とした手袋を拾って手渡す流れで、指輪を出して
指にはめる。この流れがスマート。
「こんなときだけ直球って」
「はいっていうしかないやんか」
久留美のほうがすこしひねくれた言い方になりました。悠人と久留美、素直とひねくれのバランスがうまくとれています。
悠人が屈折していて、久留美が健気。好感度の高いふたりなので、心から祝福したいのですが、どうしても気になるのが、その記念すべき場所が背景に「こんねくと」の看板のある、いつもの公園であることです。
悠人が雨のなか倒れて佳晴(松尾諭)に助けられた場所であり、久留美との運命が動き出した場所とも言えますが、背景に「こんねくと」があり、もし御園(山口紗弥加)が残業していたら……と思うと、他人事ながら落ち着きません。
舞(福原遥)はたぶん、残業してないでしょう。空飛ぶクルマに夢中ですから。型式証明をとるために荒金(鶴見辰吾)まで巻き込みます。すごいネットワークです。
まあでも、富裕層の悠人や、ばりばり働いている久留美が、派手でおしゃれな場所ではなく、大事なことはいつも地元の思い出の公園で、というのは良いことでもあります。
とはいえやっぱりここは東大阪推しのドラマでもあることですから、どこかいい場所を見繕うことはできなかったのか……。ロケだとアイドルファンが押しかけちゃうからでしょうか。
背景に「こんねくと」があるのも舞が、よかったね、とふふと笑って見守っているイメージが沸いて、微笑ましいとも言えます。
久留美が舞と貴司が結婚したときちょっとさみしいと言っていましたが、これで、舞、貴司(赤楚衛二)、久留美は幼馴染からファミリーになりました。めでたしめでたし。
そんななか、貴司だけがまだパリで苦悩しています。コロナ禍も拡大してきて、パリはロックダウン。コーヒーを買いに出たら外に出たらだめと押し戻されてしまいます。言葉も話せず、八木(又吉直樹)の助けもなく……、食べ物に困ってしまうのでは……。
でもこういうピンチが、貴司の本能ーー歌ごころに火をつけるのかもしれません。
ノーサイド、うめづ、公園……とドラマ全体の行動エリアがかなり閉鎖的なのことも、あえて登場人物を閉じ込めているとも考えられます。
閉じた場所から、空を見上げて、いつか飛ぶ―― 最終回まであと3回!
【朝ドラ辞典 実際の出来事(じっさいのできごと)】朝ドラでは実際にあった出来事が描かれることも少なくない。戦争、震災、コロナ禍など。それらが視聴者とドラマを結ぶ共通体験となる。
(文:木俣冬)
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