映像作家クロストーク

SPECIAL

2023年03月28日

【対談】木村太一監督×OSRIN監督│「MV出身のダニエルズだってアカデミー獲ったことだし、いい作品を作って黙らせるしかない」

【対談】木村太一監督×OSRIN監督│「MV出身のダニエルズだってアカデミー獲ったことだし、いい作品を作って黙らせるしかない」

映画、ドラマ、CM、MV、YouTubeなど、さまざまな映像メディアの第一線で活躍する"映像作家”にフォーカスをあてる特集「映像作家のクロストーク」。第二回目は、新世代の映画、映像監督が体験してきた現場。そして未来の監督たちへ、制作の手段や心意気、そして作家としての在り方について話を聞いた。

登場するのは、イギリスで映像制作を学び、バンド GRADESやChase & Statusなど海外のアーティストのMVを制作、近年ではadidasなどのCMも手掛ける一方、初の長編映画『AFTERGLOWS』を監督した木村太一。そして、クリエイティブレーベル「PERIMETRON」のメンバーで、King GnuをはじめとするアーティストのMVやライブ演出、CM、ファッションなど幅広い作品を手掛けるOSRIN。

二人はお互いの作品を意識しながら、SNSを通じて出会ったという。しかし、現在では「映画を撮っている間の太一さんは眩し過ぎて会いたくなかったけど、ようやく最近飲みにいきたいと思っていた」(OSRIN)とぶっちゃけるほど。心地よい距離を取りながらも、お互いの思いを率直にぶつけ合える先輩・後輩といった仲のようだ。

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PERIMETRONで行われた会合
「木村太一とはなんだ?」

写真左がOSRIN、右が木村太一

──木村監督はイギリス、OSRINさんは日本国内で活動されていていますが、お互いの作品は観ていたそうですね。

OSRIN:PERIMETRONを立ち上げる時に、指標を作ることになったんです。その最中、<vimeo>でMVやショートフィルムとかを見ながら「このレベルに何年後にいきたい」とか、そんなことをゲーム感覚的に話していた時に『Lost Youth』(2016年/*1)を観た。最初は海外の監督が撮ったものだろうと思い、「これは別格だね」なんて言っていたら、クレジットに太一さんの名前が出てきたんですよ。思わず「おい!」となって(笑)。PERIMETRONの指標に太一さんの名前が入り、以降はなるべく関わらないように、遠くからTwitterとか見て「ヤバい人だな」とか思っていました。

しかし、King Gnu「It’s a small world」(2019年)のMVを発表した時、太一さんがリアクションしてくれたんですよ。なんかファイヤーみたいな絵文字みたいなものを送ってくれるだけ。なにか話しかけてくれるのではなく(笑)。

*1……2016年に公開した木村太一による「東京」をテーマにしたショートフィルム。イギリスを拠点にダンスミュージックのアンダーグラウンドシーンをオンラインで配信するBoiler Roomが配給を担当したことでも話題に。

木村太一(以下、木村):その時、まだOSRINのことは知らなかったんだけど、King Gnuは知っていて。どんどん変な作品を作っていく中で、「It’s a small world」を観て、すごくいいなと思った。その頃は、日本の映像作家と会いたいと思っていた時期で、いろいろな人へコンタクトしていて。そんな時にOSRINにも会うことができた。

2018年に公開したOSRINによるKing Gnu「It’s a small world」のMV

OSRIN:せっかくの機会だから言いますけど、その頃に太一さんと会った(常田)大希や(佐々木)集などの仲間内で「木村太一とはなんだ?」という会合があったくらいなんですよ。

木村:マジで? なんかオレ、ポケモンみたいじゃん。


OSRIN:「精神と肉体のギャップを感じる」とか、いろいろなワードがありつつ。でも、それほど太一さんのことを知らない段階だと、身体はデカいし、言いたい放題というキャラクターに意識がいきがちだけど、作品を見れば攻撃的かつ繊細。みんなで「一体、どっちが実体なのか」という話になりましたね。でも、付き合い続けてみると、本当は繊細で優しい人が、大きな肉体のキャラクターを演じているという。すべては作品に内包されているんじゃないかと感じるようになった。だから、最初はマジで怖かったですよ。

木村:じゃあ、なんで今日来たんだよ(笑)。

OSRIN:年上の人には特有の「いつも観ています」や「おもしろかったです」とか、なんか一旦褒める空気。それは偽善だし、本当は大嫌いなんですよ。太一さんはSNSでも平然と人や作品についてボロカスに書いているけど、対等に接してくれるからいいんです(笑)。

木村:大人の付き合いというやつね。

OSRIN:しかし、オレは太一さんが「オレ、めっちゃ観ているからね」ということ言っていたのが、すごく印象的だった。その上で「あれはいい」、「これはよくない」とか言ってくる。それは本当のことだから。会う前はボロクソ言われそうで怖いけど、なんて言われるか想像するとワクワクしてくる。

木村:人に会う前、めちゃくちゃ観るから。その人の生い立ちとかまで(笑)。OSRINは、クリエイティブに対してまっすぐ過ぎて、オレなら絶対にやらないタイプのアーティストまで、パッションが合ったらやっちゃうのはすごいと思う。

OSRIN:褒めているけど、否定を含んでますよね?

木村:いや、そういう意味でもいいと思う。メジャーな感じのダークさがあって、スタイルも嫌いじゃない。オレはアンダーグラウンドで、ドラッギーだから、そもそも日本では受け入れられづらい。それから5分くらいのMVではストーリーものとかやらないんだけど、OSRINの物語調とか、ちょうどいい具合なんだよね。あと、最初に会った時からイケメン具合が鼻につくかな(笑)。最近の映像作家は顔が整っているから「実力で売れているワケがない、フェイクだ!」と思っていて。オレはカッコよくもないし、髭モジャだから、売れているのは実力に決まっているんだよ。

OSRIN:ヤバいですね(笑)。


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