「舞いあがれ!」貴司覚醒、赤楚衛二の目の演技力<第124回>
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第124回を紐解いていく。
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緊急事態宣言のなかで……
今日、3月29日は志村けんさんの命日。2020年、年明けからじょじょに不安な様相を呈しはじめていたなか、有名人が亡くなったことで一気に状況が深刻になったことを思い出します。【朝ドラ辞典 コロナ禍(ころなか)】
コロナ禍は令和の日本に大きな影響を与えた。ドラマでも「おかえりモネ」「カムカムエヴリバディ」「舞いあがれ!」でコロナ禍の状況が描かれた。
「エール」では出演中だった志村けんさんがコロナ感染で亡くなるという哀しい出来事があったが、代役を立てず、すでに撮影したもので乗り切った。たまたま撮っていた表情を終盤使用した場面は話題になった。
個人的に記憶しているのは2月、とある打ち上げで出たコロナビールで乾杯しながら「コロナに負けるな」とか言って笑っていたこと。そのときはまだその後、3年苦しむとは誰も思っていなかったのです。その後、4月に緊急事態宣言が出ました。
「舞いあがれ!」のコロナエピソードはちょうど日程的にも当時を思い出させるようです。朝ドラでは終戦記念日などそのときのことを思い出させるようなエピソードを当日放送することも時々あります。
順調だった舞(福原遥)も、緊急事態宣言により業務が停滞をはじめます。
空飛ぶクルマ作業も止まってしまいます。刈谷(高杉真宙)は戦後7年、飛行機の開発をアメリカに止められたため日本の航空機産業は遅れをとった。そのことを肝に銘じてなんとしてでも作業を進めたいと焦ります。が、仲間たちの意見も様々。感染を心配し、いまは作業を止めたほうがいいと考える者もいます。3年前、世の中、こんな感じでしたね。
その頃、パリはもっと深刻な状況ですが、貴司(赤楚衛二)は思いがけず閉じ込められて帰国もできない状況に鬱々としているうちに、舞への思慕が募ります。「誰の声が聞こえる?」(by八木)と思ったら、舞の声でした。
いつだって舞が優しく傍らで、「貴司くん」「貴司くん」と呼びかけてくれていたことを思い出します。
貴司が舞を短歌で励ましていたような印象が強かったですが、他者とコミュニケーションがとりにくい貴司に、舞がいつも寄り添ってくれていたからこそ、彼はやってこれたのです。
パリのアパルトマンの窓から、夜間飛行する飛行機を見上げた貴司は、舞こそ自分の北極星だと気づいたかのように、瞳が爛々と見開かれました。
貴司、別人のようになりました。変身!という感じです。
舞の他者への思いやりは抜群。貴司を決してせっつくことなく、適度に放置していました。これ大事です。じゃんじゃん電話やメールされたらいやになりますから。そういえばじゃんじゃん派のリュー北條はどうしているでしょうか。
その代わりというわけではないですが、舞は刈谷に「空飛ぶクルマと未来で待ち合わせしているんですよね」と昔、刈谷が言っていたロマンチックなセリフ「未来と待ち合わせ」を引きながら、励まします。
舞の家には老人と子供がいて感染させたらいけないと仲間に言われた刈谷は「家に帰っても誰もいない」からとひとりで作業をしていました。刈谷はひたすら飛行機にすべてを賭けているのです。貴司、久留美……と孤独な視聴者が心を寄せるキャラがどんどん孤独ではなくなっているなか、刈谷がいてくれてありがとうと言いたい。
舞と貴司が離れていたことや、祥子(高畑淳子)が五島に帰りたいと思っていることから、舞は、離れている者たちがひとっ飛びで会いにいけるものへのアイデアを思いつきます。
すべての苦しみは、このためにあったーー。あと2回!
(文:木俣冬)
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