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2023年03月31日

<あの少女が帰ってきた>『エスター』『セル』イザベル・ファーマンの魅力

<あの少女が帰ってきた>『エスター』『セル』イザベル・ファーマンの魅力


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▶︎『エスター ファースト・キル』画像を全て見る

まさか“彼女”が帰ってくるとは誰が想像できただろう。正確には前日譚なので表現は正しくないかもしれないが、それでもやはり“彼女”が再び観客の前に姿を現した衝撃は大きい。

養子を迎えた家族に降りかかる惨劇を描いたサスペンスホラー『エスター』。いまやどんでん返しの代名詞となった本作の前日譚『エスター ファースト・キル』が制作され、3月31日(金)に日本公開を迎えた。


シリーズ第2作が誕生した驚きもさることながら、前作でタイトルロールのエスター役に起用されたイザベル・ファーマンが再びエスターを演じている点も大きなトピックスだろう。しかも25歳のファーマンが視覚効果に頼ることなく、前作以前のエスターを演じきったというのだからなおさらだ。

今回はそんな女優イザベル・ファーマンの魅力について、出演作の『エスター』と『セル』からご紹介したい。

──ただし、彼女の魅力を語る上でどうしても『エスター』の核心に触れなければならない。もしあなたが未見なら、一切情報を頭に入れることなくまずは『エスター』を鑑賞してほしい

“驚愕”の言葉すら生易しい真実:『エスター』

(C)DARK CASTLE HOLDINGS LLC

しつこいと思われてもいい。この先に『エスター』の核心にまつわる記述がある。「ネタバレは気にしない」という人でも、こればかりはまず映画を先に観てほしいとしかいえない。それくらい本作の衝撃は大きく、現実に起きたあるニュースの見出しで『エスター』のネタバレが起きた際に、SNSでブーイングが巻き起こったほどだ。

改めてここから『エスター』のあらすじを振り返ってみよう。物語の舞台となるのは、第3子を流産により失ったコールマン家。ケイト(ヴェラ・ファーミガ)とジョン(ピーター・サースガード)はふたりの子を育てつつ、孤児院からエスターを引き取る。

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エスターは難聴の幼い義妹ともすぐに打ち解けるが、ケイトはエスターが時おり垣間見せる子供らしからぬ言動に疑念を抱く。そして一家の周りで不可解な出来事が相次ぎ、狂気を露わにしたエスターの魔の手はとうとう一家へと向けられることに……。

クライマックスで明かされる衝撃の事実。

エスターはホルモン異常によって“少女に見えるだけ”で、実際は33歳の“大人の女性”だということ。さらに極めて凶暴な性格の持ち主であり、身を寄せた家族を惨殺した過去もあった。

本作の肝は3つある。ひとつは少女だと思っていたエスターが成人女性だった点。そしてふたつめが、当時12歳だったファーマンが本性を現した33歳のエスターを(特殊メイクもあって)違和感なく演じきったことだ。

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本作はキャッチコピーから「この娘、どこか変だ。」とエスターが“少女”であることをさりげなく印象づけさせていて、本編でも“あどけなさ”を押し出している。しかし、いってみればそれはファーマンの“素”といえるだろう。そもそもエスター役にファーマンを起用した時点でミスリードは始まっており、観客の思考からエスター=成人女性という可能性について奪うことに成功している。

そして3つめの肝として、観客の思考をコントロールしながらもエスターが成人女性であるヒントをしっかり散りばめている点だ。たとえばリボルバーの拳銃を扱い慣れた手つきや万力で自分の腕を折る知識など、要所要所に伏線を張っていた製作側のフェアプレー精神に驚かされる。

とはいえそれが嘘っぽく見えてしまっては、作品の質を落とすことになりかねない。そうならなかったということは、つまりファーマンが演技力で仕掛けたトリックにまんまと嵌っていたということ。演技とは見る者を騙す・欺くものであり、「少女のフリをした成人女性と正体を現した成人女性の演技をする12歳」という奇妙な図式を体現してみせたファーマンの気迫は凄まじい。

ファーマン・ミーツ・スティーヴン・キング:『セル』

(C)2014 CELL Film Holdings, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 

「ホラーの帝王」ことスティーヴン・キングの名がクレジットされているだけで「怖そう」と警戒する映画ファンは多いかもしれない。また『IT/イット』シリーズや『ミスト』など観客を恐怖のドン底に叩き落とすキング作品は、理解が及ばない“現象”を描くことも多い。

たとえば『ミスト』に比べれば知名度こそ劣るものの、『セル』もまた携帯電話を端に発した現象によって人類が凶暴化してしまう作品だ。映画冒頭でジョン・キューザック演じる主人公クレイが空港に到着し、別居する妻に電話をかけた直後に異常事態が発生する。

謎の信号「パルス」によって携帯電話を使用していた人々が突如発狂し、瞬く間に狂気と混沌の世界に陥っていく。クレイは生存者のトム(サミュエル・L・ジャクソン)とともに自宅アパートへ逃げ込み、息を潜めることに……。

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冒頭から息つく暇もない展開で観ている側も状況を掴みきれない中、ようやく腰を下ろしたクレイのアパートで登場するのがファーマン演じるアリスだ。難を逃れていた彼女だが感染者となった母親を刺し殺したといい、手には包丁が握りしめられていた。

初登場時点で包丁を手にしているため思わず「エスター……」と呼んでしまいそうになるが、エスターを演じた頃に比べて(当然のことだが)少し大人っぽさも入り交じっているではないか。それにしても『エスター』といい『セル』といい、ファーマンはホラー映画がよく似合うと感じるのは筆者だけだろうか。

アリスはアパートを脱出するクレイとトムに同行し、一瞬の内に変貌してしまった世界を進むことになる。さすが『エスター』でヴェラ・ファーミガやピーター・サースガードと12歳で対等以上に渡り合ったファーマン。キューザックとサミュエルのベテラン俳優に挟まれてなお物怖じしない様子は、物語の中で母親を手にかけたという役柄を除いても頼もしく映る。

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感染者を一掃する作戦では自らも銃を手にするアリスだが、生存者で同世代のジョーダンとぽつりぽつりと語り合う場面ではファーマンの等身大の姿が重なって見えるはず。『エスター』では描くことのできなかった、少女と大人の狭間にいるファーマンだからこそ出せる雰囲気なのかもしれない。シーンとしては短くても、つい親目線になってしまう。

とはいえキング原作・脚本作品なので、いつどこで誰が退場するのか緊張を強いられるのも事実。『セル』も『ミスト』同様、得体の知れない力によって人類が窮地に立たされる作品なのでなおさらのこと。アリスは生き残ることができるのか、ぜひ彼女がたどる結末を見届けてほしい。

まとめ


驚愕の真実が観客の度肝を抜いた狂人エスターは、人の命を命と思わない残虐な性格もあって2000年代を代表するホラーアイコンに登り詰めた。逆に12歳だったファーマンのずば抜けた演技力があったからこそ、エスターはアイコン的存在になったともいえる。

彼女が再びエスターを演じることは、ただでさえ「ファーマン=エスター」というパブリックイメージを強化しかねない。それでも彼女の卓越した演技力をもってすれば、『セル』のようにその作品の中で生きるキャラクターとして観客を楽しませてくれるはず。

まずは『エスター ファースト・キル』がもたらす衝撃に備えつつ、女優イザベル・ファーマンの魅力に触れてみてほしい。

(文:葦見川和哉)

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