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『ノック 終末の訪問者』M・ナイト・シャマラン監督のネタバレ厳禁のどんでん返しよりも「大切なこと」とは


理屈の説明がないことは賛否両論かもしれないが……

本作の賛否両論を呼びそうなポイントは、「なぜ家族の中から犠牲者をひとり捧げれば世界の滅亡を防げるのか」という根本的な疑問に対し、具体的な理屈の説明がされないことだ。説得力を欠いているとも言い方もできるし、それを知りたいと望んでいた人は「投げた」とネガティブな感想を持つかもしれない。

だが、個人的にはそれも肯定的に捉えている。例えば、以下の動画におけるシャマラン監督の「本作のような物語は不完全であることが重要になる。それこそが物語を伝える側の命題だ。観客と一緒に埋める余白を残しておくんだ」という言葉に、納得できるところもあったからだ。



明言は避けておくが、本作は原作小説とは異なる、曖昧でもあるがゆえにさまざまな解釈ができる結末が用意されている。わかりやすいオチや痛快などんでん返しを期待していた人にとっては肩透かしかもしれないが、なるほどこれはシャマラン監督からの「余白は観た人それぞれで埋めてほしい」という意図のもと、あえてスッキリしないラストにしたのだと納得できたのだ。

そう思えたもうひとつの理由には、そのラストに至るまでに大小さまざまな「選択」が描かれていることにもあった。やはりシャマラン監督作で重要なのは「役割や使命に気づく様」や「そこからの選択」。そこに注目すれば、やはり全ての観客を納得させるような理屈の説明は究極的にはなくても良い、むしろ観客それぞれが映画からさまざまな思索を巡らせることに主眼を置いた作品なのだと納得できたのだ。

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また、シャマランは同動画において、原作小説を気に入った理由について「恐れという感情が主人公たちを苦しめる。その基本前提が秀逸なんだ。ここから逃げ出したくても恐れがそれを許さない」とも語っている。

なるほど、4人の男女はまさに「世界が滅亡するかもしれない」恐怖に支配され家族に究極の選択を迫っていたし、ゲイカップルはさらに「家族を失うかもしれない」恐怖に支配され、その選択のジレンマがまた4人の男女を苦しめるという、このままでは終わらない負のループが起きている。そうした恐怖の感情をエスカレートさせると、悲劇につながってしまう寓話(教訓)として観ることもできるはずだ。

なお、具体的な理屈の説明がされないと前述はしたものの、「1匹の蝶の羽ばたきが違う場所で竜巻を引き起こすか?」などと、わずかな変化が別の大きな変化をもたらす「バタフライ効果」の考え方を当てはめることもできる。劇中で描かれる世界の滅亡の危機も、実はバタフライ効果によるものだったのかもしれないが……? そうした解釈も観た人それぞれ。観終わった後に一緒に観た人と話し合って観るのも一興だろう。

(文:ヒナタカ)

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