「日曜の夜ぐらいは...」第2話:清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠が体現する奇跡の再会。宝くじが教えてくれた本当の願いとは
主演に清野菜名、共演に岸井ゆきのと生見愛瑠が名を連ねる連続ドラマ「日曜の夜ぐらいは...」(ABCテレビ/テレビ朝日系)が2023年4月30日よりスタート。脚本家の岡田惠和が、あるラジオ番組がきっかけで出会った女性3人のハートフルな友情物語を紡ぐ。
本記事では、第2話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「日曜の夜ぐらいは...」第2話レビュー
かつて、こんなに自分ごとのように嬉しい再会があっただろうか。サチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)の3人を再び出会わせたのはたかが300円の紙切れ一枚。されど、人生を大きく好転させる可能性を秘めた幸せ行きの切符だった。
「日曜の夜ぐらいは...」第2話の放送時間約45分。うち37分という多くの時間の中で描かれるのは、バスツアーに参加する以前から変わらないサチたちの日常だ。それは有り体に言えば、わざわざドラマにする必要のない、平凡でつまらないものかもしれない。
しかし、若葉の祖母・富士子(宮本信子)のように双眼鏡で覗くみたく、よく目を凝らせば彼女たち一人ひとりの抱える事情が少しずつ見えてくる。
いつものように自転車でアルバイト先のファミレスへ向かう途中、サチは昔のことを思い出す。彼女が高校生の頃、母親の邦子(和久井映見)はサチが忘れたお弁当を届けようと駆け下りた階段で転倒。足を怪我して、車イス生活となった。
今でも「サチ、忘れ物!」という邦子の声を聞けば、悪い予感がしてどこに行くのも一緒な相棒の自転車を投げ捨ててまで駆けつけるサチは過去に苦しめられているようだ。離婚した父・博嗣(尾美としのり)は、邦子を支えるために高校を中退して働こうとする娘を前にしても何ら手助けしようとはしなかった。それでも、「自分のせいだから」と言い聞かせ、心の底から湧き上がる感情に蓋をしてきたサチ。
ただ日々懸命に生きているだけなのに、バイト先では彼女と社員の田所(橋本じゅん)が只ならぬ関係にあるのでは?とくだらない噂が流れ、田所自身もしめしめとそこに乗っかろうとする。
若葉の言葉を借りるなら、“ふつーにクソみたいな一日”。だけど、家に帰ってきたら邦子が誕生日を祝ってくれて、おまけにいつもの「ごめん」じゃなく「ありがとう」という言葉をくれたりして、嬉しいことが一つもないわけじゃない。
それは若葉も同じ。田舎の狭いコミュニティーの中で、幼い頃から彼女は父親が誰だかわからない子供として好奇の眼差しに晒されてきた。ちくわぶ工場の二代目バカ社長(飛永翼)をはじめ、別に好かれたくもない人から好かれ、おまけに同性からは嫌われて友達もできない。だけど、自分が落ち込んでいたら「しゃぶしゃぶ食べに行こう!」と気分を変えてくれる、まるで友達みたいな富士子に支えられ、何とか生きている。
一方、翔子に家族はいない。たまたま彼女のタクシーに乗り込んだ兄・敬一郎(時任勇気)との会話から察するに、翔子は家族から絶縁されているようだ。実の兄から軽蔑の眼差しを向けられ、母親が「自分の子どもは息子2人」と周りに流布しているなんてことを聞かされた翔子の気持ちを思うだけで胸が痛い。
そんな彼女の前に現れたバスツアーの世話役兼リスナー代表のみね(岡山天音)はさしずめ、幸運を呼ぶ妖精。ツアーで「人と人と人が出会った」瞬間を目撃したみねは偶然なのか、それとも必然なのか、サチがバイトするファミレスを訪れ、その帰り道に翔子が運転するタクシーに乗る。
別に3人を無理やり引き合わせるでもなく、ただふらっと現れただけ。だが、それはサチたちにとって奇跡が訪れる前触れだった。
もう一度みんなに会いたい。そんな思いでラジオ番組『エレキコミックのラジオ君』のバスツアーに参加した若葉と翔子。やっぱりサチは来ないかと二人が諦めた瞬間、バスが急停車し、サチが車内に乗り込んでくる。1等の3000万円と引き換えることができる宝くじを手に。
これまで彼女たちは「つまんねえ」と吐き捨てたくなる人生をどうにか自分を納得させながら歩んできた。自分の機嫌は自分でとる。それはたしかに大事なことだ。だけど、「身の丈に合った幸せはこれくらい」と限界を決めてしまえば、いつしかおしゃれなカフェに入るのすら躊躇われてしまうほどに自分の欲しいものも、やりたいことも分からなくなってしまう。
宝くじはある種、そんな私たちに「夢を見る権利」を与えてくれる切符だ。それを買うとき、誰もがもし当選したら……と想像の翼を大きく広げる。当たるか当たらないか以前に、普段は気づけない自分の願いに気づけることが大事なのではないだろうか。
3人の場合、宝くじが当たった未来には自分一人ではなく、みんなで笑い合う姿があった。どうか毎話最後に流れるED映像のように、めいっぱいオシャレしてはしゃぐサチたちをこの目に入れたい。
(文:苫とり子)
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