【祝!『怪物』カンヌ2冠】是枝裕和が見出した5人の若き才能

▶︎『怪物』画像を全て見る

先日発表された第76回カンヌ国際映画祭において、脚本賞と“クィア・パルム賞”を受賞した是枝裕和監督作品『怪物』

これまでも是枝監督は『万引き家族』のパルムドールを筆頭に、『ベイビー・ブローカー』『そして父になる』『海よりもまだ深く』『誰も知らない』など、カンヌでの受賞率は非常に高いものになっています。

『万引き家族』以降は『真実』『ベイビー・ブローカー』と海外製作の作品が続いていましたが、『怪物』は是枝監督の待望の日本映画に復帰作です。

■「怪物」のコラムをもっと読む

映画『怪物』



映画『怪物』は是枝裕和監督作品として非常に珍しい外部脚本作品です。

脚本を担当したのはあの「東京ラブストーリー」から「大豆田とわ子と三人の元夫」、そして大ヒットした『花束みたいな恋をした』の坂元裕二。今回は是枝裕和監督の長年のラブコールにこたえる形で競作です。

音楽を担当したのは今年2023年3月に惜しまれつつ亡くなった坂本龍一。豪華スタッフが揃いました。

物語は、安藤サクラ演じる(生徒の母親である)シングルマザー、永山瑛太演じる教師、そして2人の子供の目線からの“ある出来事”を描きます。


リアリティのある物語ですが、現実に起きた事柄からインスパイアされたものでなかったり、上記の通りいわゆる“羅生門スタイル”を採用したりと、外部脚本作品ならではの味付けがとても新鮮な是枝作品になっています。

そして、映画全体のカギを握る2人の子供役に抜擢されたのが黒川想矢と柊木陽太の2人です。2人とも本作が映画デビュー作品となります。

思えば是枝監督は、子役の発掘と独特の“口伝え”の演出で知られた存在でした。

是枝監督が見出した“5人の才能”

柳楽優弥

(C)2004 「誰も知らない」製作委員会 All Rights Reserved.

まずは何と言っても『誰も知らない』の柳楽優弥でしょう。

2004年製作の本作は、カンヌ国際映画祭・男優賞を受賞。日本人として初受賞であり、カンヌ国際映画祭史上最年少での受賞でもありました。

今年『PERFECT DAYS』で男優賞を受賞した役所広司が「柳楽君に追いついた」というお茶目なコメントを出していましたね。

受賞後の柳楽優弥は、意図的に仕事を減らした時期もあったようですが、2010年代に入ると『ディストラクション・ベイビーズ』『銀魂』『浅草キッド』をはじめ、コメディやバイオレンスの方向など、振り切った作品を選択して良い意味でキャリアを再形成できた印象があります。

最新作は『ゆとりですがなにか インターナショナル』(10月公開予定)、ドラマでの道上まりぶはキャリア屈指の当たり役といってよかったので、映画も楽しみです。

橋本環奈



今やヒット作・話題作に連続出演の橋本環奈は、是枝監督の『奇跡』のオーディションを受け、主人公の“まえだまえだ”兄弟のクラスメイト役で映画デビューを飾りました。

福岡でローカルアイドル“Rev.fromDVL”にてデビューするさらに前のことになるので、本当にスターとなる前夜の彼女を見ることができます。

橋本環奈は2023年だけでも、映画が『湯道』『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』『キングダム 運命の炎』『春に散る』『禁じられた遊び』『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』と6作品。他にも連ドラの「王様に捧ぐ薬指」、さらに舞台で上白石萌音とWキャストで主演した「千と千尋の神隠し」の再演が決まっています。

平祐奈

実は、平祐奈も『奇跡』のオーディションで合格したことを機に芸能界デビューを飾りました。

姉の平愛梨はすでに芸能の仕事についていて、平祐奈自身も演技の仕事に興味を持っていた矢先のオーディションでした。その後アイドル的な歌手活動やタレント活動もしていますが、すでに20本以上の映画に出演しています。


昨年の『恋は光』では神尾楓珠・西野七瀬・馬場ふみかと共に映画賞に新人賞を受賞するなど、近年は評価の面でも高い実績を残すようになりました。ミュージカル『奇跡の人』でヘレン・ケラーを好演したのも印象深いです。

2023年はすでに3本のドラマに出演、現時点で映画の新作は発表されていませんが、待ち遠しいところです。

広瀬すず

(C)2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

是枝裕和監督が見出した若き才能において、『海街diary』の広瀬すずは外せません。

『海街diary』以前にもドラマ・映画に出演歴はありますが、『海街diary』はまさにブレイクポイントと言っていいでしょう。

それにしても彼女の起用については、何度聞いても凄い廻り合せだと思います。綾瀬はるか・長澤まさみ・夏帆と異母妹という役どころで、なんと役名が“すず”です。

もともと吉田秋生のコミックが原作であり、そこで“すず”という名前は既に登場していました。そんな中で“すず”役を探していた際に、素晴らしい才能の持ち主として広瀬“すず”という俳優がやってきたことになるのです。

その後、広瀬すずは『ちはやふる』『怒り』といった話題作に出演後2017年には是枝裕和監督と再タッグを結成。福山雅治・役所広司と共に『三度目の殺人』でトリプル主演といった立ち位置を担っています。

2022年の『流浪の月』が高評価を受けたこともまだ記憶に新しいですが、『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』(期せずして橋本環奈と共演!)、さらに『水は海に向かって流れる』『キリエのうた』、2024年公開予定の『片思い世界』など待機作多数です。

城桧吏

(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

パルムドール受賞作品『万引き家族』からは城桧吏を挙げましょう。

『万引き家族』以前から子役として活動していて、芸歴としては10年近いのですが、やはりターニングポイントは『万引き家族』でしょう。メインキャストとして映画に出演したのは本作が初めてです。

映画『万引き家族』はカンヌ国際映画祭パルムドール受賞し、興行収入45.5億円を突破するという是枝監督作品でも最大のヒット作として城桧吏にも注目が集まりました。

映画の出演と前後する形でテレビドラマにも多く出演するようになり、大河ドラマにも出演しています。最近でも「風間公親-教場0-」にも出演しています。

2020年には『約束のネバーランド』でメインキャストを務めて大きな注目を浴び、『都会のトム&ソーヤ』で初主演を飾りました。

昨年も山崎貴監督の『ゴーストブック おばけずかん』で主演しています。芸歴が長いですが、まだ16歳なので、これからどんどん役柄の幅が広がっていくことでしょう。

『怪物』の2人のこれから


映画『怪物』で物語の核を担う黒川想矢と柊木陽太は、本作が映画初出演です。

ただ2人ともドラマなどでの演技経験はあり、近しいところでも黒川想矢はNHK作品に何本も出演しています。7月からは日生劇場開城60周年の音楽劇「精霊の守り人」の出演が決まっています。

柊木陽太は7月公開の『1秒先の彼』に加えて現在放映中の「ラストマン-全盲の捜査官-」で福山雅治の幼少期を演じています。


映画『怪物』はもともと是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という組み合わせで話題であった上に、今回のカンヌの受賞によって、日本の劇場公開でも大きな話題を呼ぶことになるでしょう。

当然メインの2人である黒川想矢と柊木陽太にも注目が集まることは必至で、これからの出演作品が楽しみです。

(文:村松健太郎)

■「怪物」のコラムをもっと読む

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

©2023「怪物」製作委員会

RANKING

SPONSORD

PICK UP!