「らんまん」国芳は火消しと猫が好き<第49回>

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第49回を紐解いていく。

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「夏が咲き始めていました」

「夏が咲き始めていました」とはなんてすてきなナレーション(宮崎あおい :正式にはさきは立つさき)。

第49回は、この言葉にはじまって、まつ(牧瀬里穂)寿恵子(浜辺美波)に語る「自分の機嫌は自分でとる」ために、「夏模様の浴衣を縫うとか好きな本を好きなだけ読むのもいい。それから文太さん(池内万作)の水ようかんを食べるとかね」などと乙女なワードにあふれていました。

「誰かを待つことを暮らしの真ん中に置いちまうと 何をしててもさみしさで一杯になっちまう」

「男の人のためにあんたがいるんじゃない」
(まつ)

妾経験のあるまつは、重みのある言葉も語ります。この時代の女たちは、男性主導の社会のなかで、なんとかして自分というものを失わないように頑張ってきて。それが、夏模様の浴衣であったり読書であったりお菓子であったり……。そういうものは、誰も傷つけず、心豊かになります。花もまた、そのひとつ。

勝手気ままに女性を振り回す男性陣ですが、「道が見えちゅうなら 歩いたらいい」と言う万太郎(神木隆之介)は学会誌制作を着々と進め、くさい芝居をして、先輩たちの興味もとりつけ、参加(執筆)してもらうことに成功します。

目次ができた〜!
目次だけできた
中身ないけど
目次ができた〜!

と大喜びの万太郎と波多野(前原滉)藤丸(前原瑞樹)。この3人は本当に無邪気です。

あいにく、その様子を、思い余って訪ねてきた寿恵子が見てしまいます。帰り道、かわいいけれど、とげの痛いノアザミが咲いています。万太郎の指にとげを指した花であります。

待つことを辞めるとまつに言ったとき、道端のタンポポが枯れてしまっています。しょぼん。

万太郎は、寿恵子のためにも、道を邁進しているのですが……。

寿恵子は万太郎が、ふしだらな自分の姿(高藤に抱えられた)を見て怒ったのだと勘違いしてしまっています。

あゝ このすれ違い。エンタメの醍醐味。じつにドラマティックであります。

それにしても、まつはなぜ、万太郎が自分の仕事を成功させた暁に、寿恵子を迎えに来ると思っていることを寿恵子に知らせないのでしょうか。

おそらく、男性の言葉を信じて、「待つ」女にさせたくないのでしょう。「待つ」を語る者の名前が「まつ」であることが実に皮肉なのです。

寿恵子が万太郎を最初からいなかったものと諦めようとしていることを知りもしない万太郎は、印刷工場でもうまくやっています。

石版印刷の職人・岩下(河井克夫)も万太郎に心を開き始めたようで……。

岩下は、江戸時代の人気絵師・歌川国芳の絵の印刷にも携わっていた設定です。
国芳の作品は、いまでも巨大髑髏の絵などが有名です。

たくさんいた彫師のひとりにすぎなかったが「猫は褒められたな」というセリフは、国芳が猫の絵をたくさん描いていたことに基づいていて、国芳の猫の絵好きにはたまりません。ちなみにドラマではよく
猫が鳴いています。

国芳は火消しの絵も描いています。火消しといえば、大畑(奥田瑛二)は元火消し。火消しつながりで国芳と知り合って、そこから岩下を引き抜いたのかな、とか、「八犬伝」の絵も描いていたようなので、寿恵子も国芳が好きかも、とか妄想が止まりません。
 
史実的なことと物語との絡め方のツボを心得た描写に、朝からご機嫌な気分です。

(文:木俣冬)

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