「らんまん」万太郎は誰かの支えなくては好きなことができない<第63回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第63回を紐解いていく。
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いきなり助手の引き継ぎ
万太郎(神木隆之介)は誰よりも植物愛があり、その点においては極めて勤勉で、情熱があるのですが、運も実力のうちで、いい運を持っています。それは、誰かが必ず助けてくれること。寿恵子(浜辺美波)を故郷の大好きな山に連れていったのは、実家に挨拶と同じノリであり、そこで、植物採集の方法を学ばせるためでありました。
さんざん山で採集した植物を、その晩、遅くまで標本にします。寿恵子は疲れて居眠りしそうになりますが、その日のうちにやらないといけないと竹雄(志尊淳)に言われ、眠いけどがんばります。
竹雄は、これまで自分がやってきたことのすべてを寿恵子に伝授しようとしています。これもひとつのバトンの継承。偉大なる天才の助手という仕事のバトンです。……と書けば印象はいいですが、「妻」とは「助手」なのか……という疑問もむくむくと湧いてきます。
寿恵子は植物が好きな万太郎が好きだから、助手になることもいやじゃないのでしょうけれど、結局、寿恵子は、万太郎を主にして生きることになるのです。まさに夫=主人。
槙野家の料理も習ううえに、助手の仕事も習うなんて、寿恵子、重労働です。
そして、竹雄は、自分も寿恵子も「凡庸」と認識しています。天才と凡庸、厳然たる相違があり、それはもうどうしようもない。
天才を前にした凡人の懊悩を描いたのは「アマデウス」です。「アマデウス」では凡人がいじましくも生き残るわけですが、万太郎のモデル、牧野富太郎は天才なうえ、長生きです。じつは天才バンザイストーリーなのです。そして天才を凡人が下支えするのです。
綾(佐久間由衣)をはじめ、折につけ女性の自立を謳っているわりに、寿恵子は夫に従属する存在になってしまいそう。これ、朝ドラの傾向です。妻がどうしても、天才夫を支える存在になってしまう。
「ゲゲゲの女房」「マッサン」「わろてんか」「まんぷく」「エール」などがそうですね。「わろてんか」なんて、ほんとうはヒロインのモデルは女丈夫という感じのひとですがなぜかただにこにこ笑ってまわりをもり立てる人になっていました。「わろてんか」は別として、「ゲゲゲ」「マッサン」「まんぷく」「エール」は高い支持を獲得しました。結局、妻が献身的に支えたことで夫が成功するという物語はテッパンなのです。
要するに、天才の妻ーーという特権。天才の隣にいるのは自分という誉。妾とは違う正妻の強みとなんら変わらないのです。人はしょせん、自分は特別と思いたいのです。
な〜んて、突然、自虐モードに陥りましたが、天才がこの世をよくしてくれるのも事実で、それを応援することで自分の生活も上向くのならすすんで献身したいものです。下支えする甲斐のある天才であれば、問題はないのです。
万太郎は、桜の病の原因を発見できず、無力感を味わいますが、寿恵子と竹雄に励まされ、仲間に助けを求めることにします。
東京の、藤丸(前原瑞樹)と波多野(前原滉)、田邊教授(要潤)、お久しぶりの野田(田辺誠一)、里中(いとうせいこう)などに。
野田と里中ってもっといっぱい出る役かと思ったら存外、出番すくないですね。後半戦、出てくるのでしょうか。
(文:木俣冬)
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