「らんまん」天才赤ちゃん俳優、爆誕<第88回>


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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第88回を紐解いていく。

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スミレが心配

冒頭、庭でみつけたヒメスミレをお椀を植木鉢にして家に持ち込む万太郎(神木隆之介)。このスミレが、ラストシーンではしなっとなっていたことに不穏を覚えます。
お椀を植木鉢にする、意外とおしゃれかも。

先週からずっと、悪いことが起こりそうなフラグを立て続けていますが、これはきっと親切。予期しない悪いことが、ふいに起こると対処に困りますから。

それと同時に、人生にはいいことがあれば悪いことが、悪いことがあればいいことがあるという、繰り返しであることも繰り返し描いています。

田邊(要潤)が取り付く島がなく、落胆した万太郎ですが、スミレを見つけたり、園子が愛らしかったり、幸福を感じる瞬間もあります。

園子はたどたどしいながら筆を持ち、植物図を描きます。

園子役の赤ちゃんが、スミレには興味を持たず、筆と紙に興味を持ってニコニコ動かすのは、動くものに魅力があるということかなと感じます。スミレは動かないし、しかも、造花なので。ドラマでは精密な造花が使われているそうですから。赤ちゃんは本物と偽物を見分けてしまう、鋭い感性があるのでしょう。
ただ、最後には指を指していて、この赤ちゃん俳優はなかなかすごいと感じました。

後半、絶妙なタイミングで、万太郎と寿恵子(浜辺美波)の会話に、ある行動で立ち入ってくるのもすごかったです。末恐ろしい。

万太郎は、博物館に相談に行きますが、あんなに万太郎に親切だった、野田(田辺誠一)里中(いとうせいこう)も、大学と密接な関係があるため、万太郎に協力することができません。そもそも、博物館の職員の野田たちの紹介があったから大学にもつながったわけで。結局は人間関係なのです。

野田は、万太郎に「友達」とは思ってるということです。業務上は力になれないが、友達としては万太郎のことを心から心配していると言ってくれることには救われます。が、ここで、浮き彫りになるのは、比較的、自由度の高い生き方をしている印象を受ける野田や里中たちですが、あるルールに即すことで、仕事が与えられ、かつ、職場での自由も保証されているということです。言ってみれば、副業が許可されてる太い会社に所属し保障を受けつつ、お金にならない好きな副業をやるみたいなことであります。

野田と里中に、友情の証として、ロシアに行くことを提案された万太郎。ちょうど、そのとき、マキシモヴィッチ博士から、手紙が来て、ムジナモの論文と植物図を褒め、ドイツの文献に、ムジナモの図が載ることになりました。ムジナモの図で、万太郎の名前が世界中に轟くだろう、という手紙を読んで、ロシアに行く気になる万太郎。

寿恵子にロシアに行きたいと万太郎が言うと、じゃん!と三味線の音がして、寿恵子がぴくり。それから園子のアップ。というこの流れがおもしろい。

寿恵子にとっては由々しき問題ですから。でも、寿恵子は冒険だと覚悟を決めます。

ところで、マキシモヴィッチ博士は、田邊の助言によってムジナモの研究が成されたことを知っているのでしょうか。

万太郎も田邊もいいとこもあれば良くないところもあることは当然のこととして、このように、世の中では、誰かが何かをやったことがなかったことにされてしまうことが多々あります。得した人の影で、寂しい気持ちになっている人が必ずいるので、常に、自分ひとりでなんでもできるわけではなく、誰かのおかげでいまがあることを忘れずにいたいと思うのです。


(文:木俣冬)

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