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2023年07月27日

「こっち向いてよ向井くん」第3話:お互いの快適を知ってこその不快じゃない関係性

「こっち向いてよ向井くん」第3話:お互いの快適を知ってこその不快じゃない関係性


ねむようこの同名漫画を原作とした赤楚衛二主演のドラマ「こっち向いてよ向井くん」(日本テレビ系)が2023年7月12日よりスタート。本作はGP帯連続ドラマ初主演となる赤楚が、雰囲気も性格も良く、仕事もできるのに10年間彼女がいない30代の男性を演じるラブコメディだ。共演には、波瑠、生田絵梨花、藤原さくら、岡山天音らが名を連ねる。

本記事では、第3話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「こっち向いてよ向井くん」第3話レビュー

社会人になってめっきり出会いがなくなった男女は、あらゆる手段で運命のパートナーを探し求めている。マッチングアプリに、婚活パーティーに、結婚相談所。今や出会いの場はたくさんあるけれど、なかなかしっくりくる相手が見つからず、時間と労力の消費で疲弊していくケースも。

そんな“婚活疲れ”の心に沁みいるのが、普通の男女だ。うっかり沼にハマって骨の髄まで吸い尽くされるような相手でもなければ、よほど見た目に気を遣っていないとか極端に人間性が欠けているとかいう相手でもない。清潔感があり、ちゃんとした会社で働いていて、性格も穏やかで……という風に考えていくと、自ずと射程範囲にはいるのが、向井くん(赤楚衛二)である。

「こっち向いてよ向井くん」第3話は、婚活疲れ女子のチカ(藤間爽子)がゲストヒロインだ。驚くことにこの女性、かつて向井くんがワンナイトしたお相手。え、向井くんそういうタイプなの?イメージと違いますが?と一瞬混乱したが、本人的には付き合うつもりはあったけど、前回同様考えているうちに気がないと思われて向こうが離れていったパターンだった。

そんなチカから久しぶりに連絡が来たと思ったら、「不快じゃない」という理由で結婚前提のお付き合いを提案される向井くん。それってどうなのかなと思いつつも、一緒にいると妙に落ち着くチカとなら幸せな家庭を築けそうな気がしてくるのだった。同僚の中谷さん(田辺桃子)から好かれてると思ったら勘違いで、10歳年下のアンちゃん(久間田琳加)との恋は慎重になりすぎてジ・エンド。10年ぶりにスタートした恋活がことごとく失敗し、向井くんも疲れていたのだろう。

婚活疲れ女子のチカと恋活疲れ男子の向井くん。お互い疲れた心を癒せる相手であり、一見上手くいきそうだ。それに、たとえ相手のことがどんなに好きだって上手くいかない時はいかないのだから、「不快じゃない」レベルの相手と生涯のパートナーとして穏やかに時を重ねていくのも悪くはない。

だが、それはお互いの目的が結婚にある場合。チカと向井くんの場合は一方が“婚活”疲れで、もう一方が“恋活”疲れなのだ。最初の目的が、同じようで同じじゃない。向井くんはそもそも結婚がしたかったのか?恋愛がしたかったんじゃないのか?向井くんが「この人の放つ幸せな結婚オーラがすごい。そのオーラに絡め取られそう」と心で呟いているのを聞いて、こりゃまた雰囲気に流される悪い癖が出てるなと思ってしまった。

もし結婚したら苗字はどうするか。子供は何人欲しいか。そういう互いの価値観を結婚前に擦り合わせておくのはたしかに大事だ。だけど、そもそも自分たちに、もしくは自分自身に結婚が本当に必要なのかどうかを十分に検討していなければ、元気(岡山天音)と麻美(藤原さくら)のように結婚したはいいけど、そのせいで関係性がギクシャクしかねない。

その点、洸稀(波瑠)と環田(市原隼人)は今のところ、目的は結婚じゃなく恋で一致しているように見える。「やめときなよ」というのは向井くんの主観で、彼自身もしかしたら結婚というものに捉われているのかもしれない。ただ、洸稀が結婚を望まない環田に合わせているだけの可能性も十分あって、無理をしているならどこかで歪みは生まれるはず。

気持ちが盛り上がる恋だけが恋じゃないし、不快じゃない相手との恋も全然あり。だけど、不快じゃない関係性を保つためには、結婚という制度も含めてお互いが快適でいられる方法をともに選び取っていく必要があるのだろう。


(文:苫とり子)

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