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2023年08月12日

「最高の教師」5話:名ドラマには、名シーンが必要だ。詩羽が歌い上げる椎名林檎の「17」

「最高の教師」5話:名ドラマには、名シーンが必要だ。詩羽が歌い上げる椎名林檎の「17」

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松岡茉優主演の“土10”ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」が2023年7月15日放送スタート。松岡茉優演じる高校教師・九条里奈が、卒業式の日に教え子から突き落とされ、殺されてしまった。次の瞬間、彼女は1年前の始業式に戻る。自分を殺したのは誰なのか、30名の生徒=容疑者を前に、犯人探しと“最高の教育”を目指す1年が始まる。

本記事では、第5話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」5話レビュー

名ドラマには、名シーンが必要だ。瑞奈ニカを演じる詩羽が、文化祭の体育館イベントにて歌い上げた椎名林檎の「17」。この、聴く側にさまざまな感情を巻き起こらせるシーンは、間違いなく「最高の教師」の名シーンとなり得る。

プロのアーティストとして音楽活動をしている瑞奈。普段は口数も少なく、これまでの登場シーンも限りなく少なかった。5話にて、ついに彼女に焦点が当てられる。九条(松岡茉優)の1周目の人生において、文化祭は直前で中止になっていた。その原因となったのが、瑞奈だったのだ。

瑞奈は変わっている。とにかく目立つ。プロのアーティストとして表舞台に立っていることも関係しているが、幼い頃から、好きなことをしたり好きなものを選んだりするだけで「変だ」と言われ続けてきた。

自分自身のことを知りもしないのに、勝手なイメージで各々の常識を押し付けてくる声に反発するように、彼女は「誰かに必要とされるアーティスト」を目指している

しかし、有名人である瑞奈を一目見ようと押しかけた人々によって場はパニックとなり、開催直前にして文化祭は中止に。2周目の人生では、そんな事態を何としてでも防ぐべく、九条が動く。鍵となるのは、やはり瑞奈自身である。九条は、彼女を体育館イベントの責任者に命ずる。

予想通り、反発は起こった。とりわけ拒否反応を示したのは、生田やよい(莉子)だ。繰り返された言葉は「調子に乗ってるから」……。実際のところ、相楽(加藤清史郎)の差金によって、3年D組は襲撃に遭っている。せっかくの文化祭の準備をズタズタにされ、クラスの雰囲気は最悪に。

それも、生田にとっては、有名人だからって調子に乗るからこういうことになる、という文脈になる。

九条は、いつもの調子で生徒たちに“授業”をした。そもそも、調子に乗るのは悪いことなのか? なぜ自分と違うからといって、糾弾の対象に置くのか? 自分たちと違う道を歩む人は、別人ではない。悩むし涙も流す、れっきとした人である……。

人の想像力は、良い方向に働くこともあれば、悪い方向に作用することもある。実際に話したこともない、顔も名前も知らない相手の“悪評”が聞こえてきただけで、いともたやすく心はそちらに引っ張られる。勝手なイメージで、無邪気に無自覚に、相手にレッテルを貼る。

2019年に放送されたドラマ「3年A組」が発した根本的なメッセージは、「悪意に塗れたナイフで、汚れなき魂を傷つけないように」だった。知りもしないことを知ったふうに言わない。尖った言葉で相手の心を刺さない。もっと、もっと、人に優しく在ることを徹底的に説いた。

瑞奈が歌う「17」を聴きながら、必死に歌う彼女を見ながら、きっと私たちはこれまで使ってきた“言葉”を振り返っただろう。誤解を恐れずに言うなら、この世に生きている人間は全員、無自覚なナイフで人を刺したことがある……

歌を聴きながら涙を流した生田のように、どれだけ間違えてもやり直せる。そして、他者を許容し、自分自身をもっと認められるようになる。立ち上がったここからがスタートだと、九条の言葉は教えてくれる。

今回、物語の根幹を揺るがす、ある事実も明らかになった。鵜久森(芦田愛菜)もまた、九条と同じく“人生2周目”だったのだ。前回のレビューで、星崎(奥平大兼)こそが2周目では? と考察したが、まさか鵜久森だったとは。こうなってくると、真犯人の予想がふたたび、ブレてくる。

(文:北村有)

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