「どうする家康」第34話:「あほたわけ」の意味は「あいしている」、なのかもしれない?
2023年1月8日放送スタートしたNHK大河ドラマ「どうする家康」。
古沢良太が脚本を手がける本作は、弱小国の主として生まれた徳川家康が乱世を生きる姿を描いた波乱万丈エンターテイメント。大河ドラマ初主演となる松本潤が、従来のイメージとは異なる「ナイーブで頼りないプリンス」の家康に扮する。
本記事では、第34話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「どうする家康」第34話レビュー
天が味方する。それはやはり天下人の条件なのか。秀吉(ムロツヨシ)が関白となり、天下に大手をかけた。その中で抗うのが徳川家康(松本潤)である。
しかし、家康は窮地に追い込まれていた。石川数正(松重豊)の出奔だ。
数正が秀吉側についたことで家康側の手の内は裏の裏まで知られていると思ったほうがいい、と本多正信(松山ケンイチ)。家康は気丈に振る舞いつつも、数正が秀吉と共に自分を殺しに来る夢を見る。数正がいなくなったことは大きすぎる痛手だった。
その矢先、大地震を襲われる。甚大な被害を負ったのは秀吉。戦どころではなくなる。戦を止めたのが天災とは皮肉な話だ。
そこで、秀吉は家康を上洛させるために、自分の妹・旭(山田真歩)をわざわざ離縁させてまでして差し出す。家康にとって正室は瀬名(有村架純)だけのはずだったが、ずっと空席だった正室の座が埋まる。
それでも、家康は突っぱねる。秀吉には屈しない……しかし、秀吉はさらに自分の母親を送りつけると言い出す。それでも上洛しないなら、戦も辞さないということだ。
決断を迫られる家康。
戦か上洛か。その評定の場に於愛(広瀬アリス)が、数正が残した仏像と木箱を持ってやってくる。木箱の中に入っていたのは押し花。まるで築山に咲いていた花のようだ。
そして於愛は言う。
「お方様が目指した世は殿がなさなければならぬものなのでございますか」
「ほかの人が戦なき世を作るなら、それでもよいのでは」
また、酒井忠次(大森南朋)も家康の心を縛り付けていた鎖を解いてもいいのでは、と言う。
自分が戦なき世を作らなければ、と思っていた家康。天下を獲ることをあきらめてもいいかと尋ねると、忠勝(山田裕貴)はこれは数正のせいだと言う。
「数正のせいじゃ、殿は悪くない」「あほたわけ」
泣きながらそう言う家臣たち。
数正の出奔は、やはり家康のためにほかならなかった。
特に仕事を与えられるわけでもなく、屋敷で静かに暮らしている数正。
妻の鍋(木村多江)は数正と一緒に過ごせる時間ができてうれしいと言い、「誠に、殿がお好きでございますな」と微笑む。そんな鍋に数正は「しーっ」と諫め、「あほたわけ」と笑う。
なんと温かい「あほたわけ」か。
こうして、家康は上洛を決意する。
しかし、瀬名は家康がなかなか決断できないから行動を起こしたわけで。瀬名の行動があったから家康は少しだけ強くなれたわけで……。
亡き妻の想いに縛られていた、というと美談に聞こえるけれど、それって相変わらず自分で決断はできないということでは……? と考えてしまうのはあまりにも情緒がないだろうか。
ある種、今回の選択は原点回帰にも思えるけれど……。
家康が早く決断していれば、数正が出奔することも、旭が離縁させられることもなかった。
しかし、ここまで粘ることで得られるものがあるのかも、しれない。と信じたい。
(文:ふくだりょうこ)
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