「最高の教師」8話:相楽(加藤清史郎)の遅すぎる謝罪……彼は永遠に許されない

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松岡茉優主演の“土10”ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」が2023年7月15日放送スタート。松岡茉優演じる高校教師・九条里奈が、卒業式の日に教え子から突き落とされ、殺されてしまった。次の瞬間、彼女は1年前の始業式に戻る。自分を殺したのは誰なのか、30名の生徒=容疑者を前に、犯人探しと“最高の教育”を目指す1年が始まる。

本記事では、第8話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」8話レビュー

「憶測でさまざまなことを決定するのはやめましょう」

「人の意見は得てして、そう考えるほうが自然だというほうへ流れていく」

2019年放送の日テレ系列ドラマ「3年A組 ―今から皆さんは、人質です」で、とある容疑がかけられた教師がSNS上で炎上しかかる描写があった。柊一颯(菅田将暉)のおかげで食い止められたが、「何事もなくてよかった」では済まされない。多くの憶測、噂、勝手な想像が一人歩きをはじめ、一人の人間が社会的に抹殺されるところだった。

人は弱い。驚くほどに、絶望的に弱すぎる。一人では生きていけないし、隣の人が「右」と言ったらそれにならう。自分がこうだから相手もこう、となんの疑いもなく信じるし、自分では何も考えず、9割が支持している意見をそのまま自分のものにする。

鵜久森(芦田愛菜)が亡くなった一件から、相楽(加藤清史郎)に対する風向きは強まる一方だった。九条(松岡茉優)は繰り返し、憶測や先入観でものを語ることを避けるよう訴えるが、やはり相楽への疑いが薄まることはない。

九条が相楽に投げかけた言葉は、彼の最後の“支え”をへし折った。

「弱い自分を隠すのに必死で、楽しい自分、幸せな自分を見せつけるのに必死で、ずっと目をそらし続けた。その結果、無自覚なフリをして、人を傷つけた。自分がひどい人間になっていると本当は気づきながら、知らないフリをして笑った」

「傷つく人がいるのをわかっていながら、どうして自分のプライドを大事にできるんですか?」

相楽がこれまで、必死に自分の顔に笑みを張り付けながら防御してきた“プライド”を、ズタズタにした。見なければ、言葉にしなければ、なかったことになる諸々に焦げつくような光を当て、誤魔化すことを許さなかった。

相楽は、クラスメイト全員の前で本当のことを話した。文化祭をめちゃくちゃにした事件は、やはり相楽が浜岡(青木柚)に金を払ってやらせたこと。しかし、鵜久森が亡くなった一件には関わっていない。少なくとも、彼が直接何かをしたわけではない。

鵜久森の位牌に向かって、泣き、慟哭し、喉からも血を流しかねない必死さで、相楽は「ごめんなさい」と繰り返す。しかし、遅すぎる。遅い、遅い、何もかもが遅い。彼の言葉は鵜久森に届かず、永遠に許されない。それさえも、背負っていかなければならない。

相楽に対しては、変わる最後のチャンスを与え、他のクラスメイトに対しては、憶測や先入観で人を断罪しないよう「考え続けること」を促す。九条の“授業”は、どちらに肩入れすることもない。

悪いことをした人間には、謝ること。謝ることしかできないこと。謝ったうえで許されないこともあると教える。そして、傷ついた人間には、“許さない”という選択肢もあることを提示し、それを選ぶことを責めもしない。

物語は佳境に差しかかる。この流れに乗って考えるなら、黒幕は浜岡だ。しかし、繰り返し思い出そう。「憶測で物事を決定してはいけない」「人は得てして、そう考えるほうが自然だと思う意見に流れていく」……ふと立ち止まり、考えをめぐらせることが、傷つく人を減らす一歩になると信じている。

(文:北村有)

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