© 2023「BAD LANDS」製作委員会
© 2023「BAD LANDS」製作委員会

映画コラム

REGULAR

2023年09月29日

『BAD LANDS』安藤サクラ&山田涼介が魅せる“超絶キケン”な姉弟

『BAD LANDS』安藤サクラ&山田涼介が魅せる“超絶キケン”な姉弟


[※本記事は広告リンクを含みます。]


この姉弟は、キケンだ……。金髪ショートで思うがままに街を闊歩する姉・ネリと、いつも飄々と笑っているサイコパスな弟・ジョーは、特殊詐欺に手を染めながら生きている。それぞれを演じるのは、安藤サクラと山田涼介。このキャスティング、字面だけで「見たい」と思わせる。

『ある男』(2022)で第46回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した安藤サクラと、『映画 暗殺教室』(2015)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した山田涼介が、これまでのパブリックイメージをかなぐり捨てるような役柄に挑んでいる。観終わったあとの全員に、ネリやジョーになりきって街を歩きたいと思わせる力が、この映画にはある。



「この姉弟、もっと見ていたい」と思わせる魅力

原作は、『疫病神』(1997)『破門』(2014)『後妻業』(2014)などが代表作の小説家・黒川博行の『勁草』(2015)。監督・脚本を担当した原田眞人は、発売後すぐに原作を読んで「世界観に惹き込まれた」という。

特殊詐欺、いわゆるオレオレ詐欺グループの内部に光を当てた本作を映画化するにあたって、主人公・橋岡を男性から女性に変えるのが、大きなポイントとなった、とも語る。

安藤サクラが演じる特殊詐欺グループのネリは、なんとも身軽で、流れるように動く。軽快な関西弁も、ネリという存在を象徴するエッセンスになっているかのようだ。


ネリは特殊詐欺グループを構成しており、世間から見れば好ましくない部類に位置する。しかし、グループ構成員や弟・ジョーに対しては一定以上の親愛を持っており、“待遇”も含めて管理を怠らない。その姿はまるで、理想の上司を具現化したかのように映る。

頼もしい姉とは打って変わって、サイコパスに人の形をあてがったような弟が、ジョーだ。標準装備となった笑顔には、定住を嫌う遊牧民さながらの素朴さがあるようにも見えるが、それは、一度踏んだら取り返しのつかない地雷の危うさと表裏一体でもある。


自分の欲望や目的を達成するためなら、文字通り手段を選ばない……。そんな弟を唯一、御すことができるのがネリなのだ。

自覚的にか、それとも無自覚か、互いが互いを支えることでしか生きられない二人。まさに、運命共同体。彼らが億を超える大金を手にした瞬間から、破滅か、または希望へと無理やりに時が進む。その絶望を伴う美しさを前に、「この姉弟、もっと見ていたい」と思わずにはいられなくなるのだ。

裏賭博に手を染め、潮時だとわかってはいても後戻りできずに苦しむジョーや、とある“決定的な事件”が起こり、ジタバタしても仕方ないと腹を決めた瞬間のネリの冷静さ。この姉弟がどうしようもない深みに嵌まっていく様を、観客はただ見守ることしかできない。

ままならない、二人の人生はどこまでも絶望が土台にあるようだ。しかし、まるで“動”を体現するジョーと“静”を顕現させたようなネリの生き様は、その対比が色濃くなればなるほど美しさに還元される。

決して、この姉弟のようには生きられない。それでも、絶望さえ美しさにすげ替えるような波乱に満ちた運命を、二人とともに背負えたら……。そんな憧れにも似た気持ちを、スクリーンの前では抱かずにはいられない。


安藤サクラ&山田涼介の“異端”な代表作に

この『BAD LANDS』を無理にジャンル分けしようとしたら、姉弟のバディもの、となるだろうか。国内外問わずバディものを探せば枚挙にいとまがないけれど、そのほとんどが男性同士や女性同士(いわゆるシスターフッドもの)。まれに男女バディをメインに据えていても、主導権を握るのは男性側であることがほとんどである。



『BAD LANDS』に関しては、安藤サクラ演じる姉のネリが、圧倒的な主導権を手放さない。それが当たり前、もはや周知の事実として観客にも提示される。弟のジョーに指示を出し、ときに怒り、たしなめるネリの居住まいはどこまでも自然だ。それは、誰よりもジョー自身がそれを0から100まで受け入れているからだろう。

ネリを演じる安藤サクラの直近の代表作といえば、数々の賞にも輝いた『万引き家族』(2018)『ある男』(2022)『怪物』(2023)。どれも堅実で硬派、丁寧な画面作りも合わせて評価の対象となっている、国内外の境を越えた名作だ。彼女が演じるキャラクターが温度と実感をもって映ることで、作品そのものの重みも増している。

そして、ジョーを演じる山田涼介といえば、『暗殺教室』シリーズや『鋼の錬金術師』シリーズなど、漫画原作の実写化で主役を張りつつ、原田眞人監督の『燃えよ剣』(2021)で沖田総司を演じ、『グラスホッパー』(2015)でナイフ使いの殺し屋である青年・蝉に扮するなど、あらゆる顔を見せてきた。


この二人が、『BAD LANDS』で姉弟役。間違いなく、彼らの“異端な代表作”になるだろう。

(文 北村有)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

© 2023「BAD LANDS」製作委員会

RANKING

SPONSORD

PICK UP!