「下剋上球児」6話:南雲(鈴木亮平)と山住(黒木華)、二人の教師を信じる球児たちの強さ
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鈴木亮平主演の日曜劇場「下剋上球児」が2023年10月15日放送スタート。菊地高弘の「下剋上球児」(カンゼン刊)を原案に、新井順子プロデューサーと塚原あゆ子演出のタッグが帰ってくる。弱小高校野球部を舞台に繰り広げられる下剋上ストーリーに期待だ。
本記事では、第6話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「下剋上球児」6話レビュー
なぜ球児たちは、南雲(鈴木亮平)や山住(黒木華)のことを信頼できるのか?無免許で高校教師を名乗っていた南雲の不起訴が決まった。時を同じくして、山住に関する“ウワサ”が球児たちの耳に入る。夏の予選で対戦相手となる五十鈴高校の部員から「山住が越山の前に勤めていた学校を辞めた理由は、部員と淫行したのがバレたから」と聞かされたのだ。
ニセの教師と、淫行のウワサがある教師。予選を前にした球児たちにとって、決して穏やかな話題ではない。それでも彼らは二人の教師を信じた。
南雲に対しては、生徒たちが主導して寛大な処罰を求める嘆願書に署名を集める活動を始める。山住に対しては、最初からそんなウワサを物ともせず、決然とした態度を貫いた。南雲に対して「ウワサを知っているか」と電話で確認はしたものの、「山住先生を信用するのか、噂を信用するのか」と強く問い返されたことにより、むやみにウワサを広めることはしなかった。
球児たちがここまで南雲と山住を信頼できる理由は、それだけの言動と姿勢を、二人が示し続けてくれたからだ。
嘘のない率直な言葉で、自分たちと向き合ってくれた。他の大人や他校の生徒は「越山の“ざん”は、残念の“ざん”」と貶すが、南雲と山住は彼らの可能性を信じ、ダメな部分はダメと言い、具体的な言葉で「どうすれば強くなるか」を教えてくれた。
確かに、無免許で高校教師を名乗った南雲は、紛うことなき犯罪者だ。彼が、どれだけ強い信念を持った人物でも、生徒一人ひとりに対し真摯に向き合っていたとしても、“教師の才能”があったとしても、罪は消えない。やってはいけないことをした過去はそのままで、多くの人を裏切ったことには変わりない。
それでも、思うのだ。南雲や山住から直接の指導を受けていた球児たちにとって、彼らは、誰よりも自分たちのことを考えてくれた教師だ。積み重ねてきたものがあるからこそ、球児たちは信じた。自分たちのことを諦めず、強くしようと力を尽くす大人に、報いようとしているのだ。
球児たちの一人が「資格って、なんやろ」と何気なく呟くシーンがある。その些細な疑問が、このドラマの根幹に関わっている気がしてならない。
結果的に、山住にまつわる生徒淫行のウワサは、まったくのデタラメだった。わざわざ越山の球児たちに接触してきた五十鈴高校の生徒が、山住を陥れた張本人だったのだ。
キツい練習に耐えられず、教師である山住に対してつい弱音を吐いてしまった。頑張っているのに「頑張っていない」と断定された、そう勘違いした結果、彼は苦し紛れの腹いせに山住を退職に追い込んだのだろう。
それでも、彼の真意はわからない。本編で山住が口にしたように、何を考えているかを推し量れないところがあった。「何を考えてるか、わからなかったから。わからない自分が情けなくて辞めたの」と、前の学校を辞めた本当の理由を語った山住は、強かった。生徒の理不尽なやり口に屈することなく、かつ、彼らの将来を守るために真実を公表もしない。
そして何より、本人に罪悪感を抱かせない。その山住の姿勢は、やはりどこまでも教師だった。だからこそ越山の球児たちは、南雲も含め、山住のことも信頼してついてきたのだ。
夏に、一勝。この目標を達成したら、南雲が越山の野球部監督として復帰する。早々に目標を達成してみせた彼らは、着実に強くなっている。
(文:北村有)
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