「どうする家康」第44話:ひとり、またひとり。老いても平和のために家康は進む。
2023年1月8日放送スタートしたNHK大河ドラマ「どうする家康」。
古沢良太が脚本を手がける本作は、弱小国の主として生まれた徳川家康が乱世を生きる姿を描いた波乱万丈エンターテイメント。大河ドラマ初主演となる松本潤が、従来のイメージとは異なる「ナイーブで頼りないプリンス」の家康に扮する。
本記事では、第44話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「どうする家康」第44話レビュー
なんとも寂しい。寂しいなあ。関ヶ原の戦いが終わり、時代は徳川幕府誕生に向けて動いていく。
と、まあ歴史の教科書であれば数行で終わってしまうところなのだが、そこには多くの思惑が渦巻いている。
家康(松本潤)がすぐにその地位を盤石にできたかというとそうでもない。
何しろ、茶々(北川景子)がいる。天下を我が息子・秀頼に。
天下を手にすることは母・市に誓ったことだという想いがあるのだろう。家康と茶々の化かし合いのようなやりとりが続いていく。
そんな中、家康のもとには続々と若い才能が集まり始めていた。
戦いばかりの世が終わり、平和な世の礎を作る。そうなると、必要となる才も変わってくる。
家康自身の後継についてもそうだ。誰を自分の跡目にするか。
ただ天下を獲ればいいというわけではない。家康の中には、「平和な世を作る」という志がある。自分が死んだあとに、その想いを継いでくれる者がいなければならないのだ。
家康の跡取りとして目されるのはふたり。次男の結城秀康(岐洲匠)、そして秀忠(森崎ウィン)だ。
秀忠への家康の当たりは強い。関ヶ原に遅れたことを未だに怒られているのを見るのは辛い。
見かねた榊原康政(杉野遥亮)がみなの前で怒るのはいかがなものか、と諫言。秀忠のプライドを傷つけていたのは間違いない。そして、家康が秀忠ぐらいの年齢のときも頼りなかった、と。
確かに……戦に行くのは嫌じゃ嫌じゃとダダをこねていた。
しかし家康は穏やかに言う。
「自分にはお前たちがいた」と。
叱ってくれる家臣たちがいた。しかし、秀忠を叱れるのは自分しかいない。
家康は征夷大将軍の座を一年以内に秀忠に譲ることを告げる。
驚く秀忠に、本多正信(松山ケンイチ)は「才があるからこそ秀康を選ばない」ときっぱり。
その点、秀忠は全てが人並みも「偉大なる凡庸!」と言い切る。
才ある者が継ぐと、みな主に頼りきってしまう。そして一代でつぶれる。そう聞いて、あの顔やこの顔……が浮かぶのではないだろうか。
家康もまた、とびきりの才能があるかといったらそうではない。
だからこそ、迷うことなく秀忠を叱れるのだろう。
凡庸と言い切られて怒ったりしないのが秀忠の良いところである。人を疑わなさそうな爛漫さが、平和な世にはふさわしいのだ。
それにしても、森崎ウィンの笑顔がとてもイイ。
若手への世代交代が進む中、家康を支えてきた康政と本多忠勝(山田裕貴)にも老いがヒタヒタと近づいてきていた。
家康と共に、若いころから暴れていた二人の老いる姿はなんとも心に迫るものがある。
身体の老いと、時代が変わろうとしている今、退くべきである、という考え。なんとも切ない話である。確かに、家康が征夷大将軍となった。しかし、それは平凡な家康を支える彼らがいたからである。そして有能な人間とは引き際さえも心得ているのか。
同時に、共に時代を過ごしてきた康政と忠勝が夕日の下、いつから家康のことを主と認めていたか、などと話すシーンはまるで少年のようで微笑ましい。そして寂しい。
ふたりがナンパしていたことが懐かしい。
仲間たちが一足先に別の世にいってしまった。
が、家康はまだまだ踏ん張らなければならない。戦なき世を作るために。
(文:ふくだりょうこ)
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