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2024年01月05日

「どうする家康」考と“あの直後”が見られるドラマの話

「どうする家康」考と“あの直後”が見られるドラマの話


2023年末、NHK大河ドラマ「どうする家康」が無事完走しました。見終わってみて改めて思ったことは、大河ドラマの主役のチョイスの難しさでした。

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「どうする家康」現時点で評価について思うところ

©️NHK

「どうする家康」は大河ドラマとしては歴代ワースト2位の平均視聴率となってしまいました。芸能界を揺るがした外的大事件と関連付けて、何かとネガティブな切り口で語られがちだった印象です。

その中で平均視聴率については、“リアルタイム視聴率”に今どれだけの意味があるのか大いに疑問があります。

例えば大ヒットと言われた「VIVANT」ですら、最終的に20%には届きませんでした。何かと引き合いに出された「半沢直樹」第1シリーズの最後は40%を超えており、数字上では「VIVANT」は「半沢直樹」の半分以下となります。

しかし「VIVANT」が「半沢直樹」の半分以下のインパクトしか残していなかったわけではないでしょう。そのくらいリアルタイム視聴率の意味合いが変わっているんだろうなと思います。

もう1つの芸能界を大きく揺るがした事象については、「作品自体に罪があるのか」といったような根源的な話になります。この話は2023年だけでなく2024年、もしかしたらその先の時代も抱えていく事柄なのでしょう。

その他に古沢良太の脚本、家康の人生の解釈については賛否が出ました。大きなところでは家康の正室・築山殿(瀬名)の描かれ方です。

これまでは悪女と言ってもいい扱いだった中で、「どうする家康」の中では理想家肌の悲劇のヒロインというキャラ付けでした。これについては賛否というより戸惑いという印象です。また合戦シーンのCGのクオリティなどにも注文がついていました。

▶︎「どうする家康」を観る

「主人公・徳川家康」の物語ついて

織田信長、豊臣秀吉と並び戦国時代の三英傑の1人とされる徳川家康。150年の乱世を終わらせ、以降250年間の江戸時代の基礎を作った男です。この辺りは歴史の教科書にもマストで載っているためご存知の方も多いことでしょう。

そのため「どうする家康」のように主人公に据えるだけでなく、脇役としても数多くの作品に登場しています。大河でも主役になること3回。脇役はもはやカウントするとキリがありません。

80年代から2010年代半ばまでお正月の定番だった、テレビ東京の系列の大型時代劇もそのほとんどが江戸時代の話で、何らかの形で家康が登場することも多いです。

ここで物語の主人公としての徳川家康の特性をピックアップしてみると、次のようなものがあります。

  • 75歳没と本当に長命だった(坂本龍馬や源義経は30代、織田信長は50歳手前)
  • 最終的な歴史の勝者である(多くの記録が残っている)
  • 幼少から最晩年まで多くの出来事があった(語るべきエピソードが多い)
  • 常に権威のそばに居続けた(今川義元→織田信長→豊臣秀吉)
  • 家康の周りにも多くの人物が集まった(歴代の家臣団から敵対した諸大名まで)

上記は物語の主人公として考えると、良し悪し両方だと言えるでしょう。

大河ドラマを筆頭に、時代劇は歴史の再現映像ではないことは確かであり、創作のアレンジが入る余地があります。そうはいっても、史実を基に話を作るからにはカバーすべき事柄、抑えておくべきポイントというものはあります。

そのため織田信長が本能寺で生き残ってしまったり、坂本龍馬が近江屋で殺されなかったり、義経と弁慶が奥州で死なないという話はないのです。時に意図的に時代改変をする場合もありますが、やはり主流の立ち位置の物語ではありません。

こういった時代劇・歴史劇のマナー・作法をある程度大切にした上で、徳川家康を物語の主役に据える場合、抑えるべきことが多すぎるのです。そして歴史上の山場を抑えるだけでは物語に起伏がなく、知っていることをただ見させられるだけになります。

1年間「どうする家康」を追ってみて、史実を抑えていくことと創作のバランスの難しさを改めて感じられました。

「どうする家康」の後を知りたい方へ

(C)テレビ東京・松竹

主人公の死をもって物語は一応の終わりを迎えるものですが、当然時間は流れているため、その死後も歴史は続きます。

1月2日から配信が始まった「天下騒乱〜徳川三代の陰謀」は、1980年代から2010年代半ばまでテレビ東京で放送されていた、お正月特番の1本です。

物語は“家康の死”から物語が始まるため「どうする家康」の後で見るのにちょうどいい作品になっています。

「どうする家康」の語り部で寺島しのぶが演じた春日局と、マイコが演じていた浅野三姉妹の一人で淀殿の妹の江による三代目将軍家光の就任の内幕などが描かれます。

家光は竹千代という家康と同じ幼名を得て後継者レースの本命とされていましたが、弟の忠長と後継者争いが起きたとされています。

「どうする家康」では幼い家光しか登場しませんでしたが、実は裏では結構バチバチだったと言われています。

初代の家康やその跡を継いだ秀忠は戦国時代を経験した上で将軍になった人たちですが、家光は生まれたとき既に幕府があった人物。“生まれながらの将軍”と宣言した場面も「天下騒乱〜徳川三代の陰謀」には登場しています。

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「天下騒乱〜徳川三代の陰謀」は家康の死去から家光体制の成立に動いた、西田敏行演じる老中・土井利勝が主人公といえます。さらに2人の剣豪、柳生十兵衛と荒木又右衛門が絡んでくる構成になっています。

西田敏行が主役であるほか、柳生十兵衛を中村獅童、荒木又右衛門を村上弘明という殺陣や所作など時代劇の経験値が高い人が揃っているため、非常に安心して楽しめます。

秀忠、家光はもちろん江や春日局、本多正純や天海、福島正則など「どうする家康」でお馴染みの人々も登場しています。

演者こそ違いますが、「どうする家康」のラストから直結する物語として「天下騒乱〜徳川三代の陰謀」はちょうど良いドラマとなっているためおすすめです。

▶︎「天下騒乱~徳川三代の陰謀」を観る

24年・25年の大河ドラマはどうなるか?


2024年の大河ドラマは、紫式部を主人公にした「光る君へ」です。

本作は「どうする家康」から一転して、生没年不詳の人物が主人公です。紫式部は「源氏物語」を創り上げたことは知られていますが、それ以外は分かっていないことも多いです。

光源氏のモデルとも言われている藤原道長を大きな役どころに据えて、平安時代の権謀術数のやり合いを描くようですが、逆にエピソードが1年分あるのかと心配にもなります。

来年・2025年の大河ドラマの「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」の主人公の蔦屋重三郎もエピソードが多い人ではありません。

思えばここ数年、主人公が長生きをした「青天を衝け」と「どうする家康」、超群像劇の「鎌倉殿の13人」と“史実=エピソードがいっぱい”な題材の大河ドラマが続きました。

今年と来年はその反動と言えるのかもしれません。

今年や来年の大河の路線がうまくはまれば、源平・戦後時代・幕末がローテーションのようになっているNHK大河ドラマに一石を投じることになるでしょう。

今年の終わり、または来年の終わりに改めて「どうする家康」の構成を見直してみるのも面白いのかもしれません。

(文:村松健太郎)

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