続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年07月24日

「虎に翼」赤いミサンガの謎、夏のミステリー劇場のはじまり<第83回>

「虎に翼」赤いミサンガの謎、夏のミステリー劇場のはじまり<第83回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第83回を紐解いていく。

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美佐江、こわい

夏のミステリーのはじまりみたいでした。
前半は、玉(羽瀬川なぎ)による、彼女と涼子(桜井ユキ)が戦中戦後、どのような苦労をしていたか、身の上話。後半、19歳と20歳の少年の犯罪の件が少し進み、そこに森口美佐江(片岡凜)が絡んでいたらしいと匂わせました。それがなかなか心理サスペンスな色合いで――。

玉は寅子(伊藤沙莉)に明かします。戦後の憲法改正によって貴族制度が廃止され、涼子は家に縛られずに済むようになったにもかかわらず、玉の面倒を見て生きることを選択しました。家を守るために結婚した夫とはそれがもとで離婚をしたようです(子供もできなかったようです)。玉は涼子を解放するために、新潟の身体障害者の更生指導所に入りたいと寅子に力添えを相談します。

寅子のようなえらい人に頼まないと当事者自らアクセスできないようなハードルの高い施設じゃ意味ないと思うけれど、とかく行政のやることってそんなふうにかゆいところにまったく手が届かないものであることは現代も変わりません。

学生時代の大事な友人たちの問題に、お人好しの寅子は真剣に悩みます。その頃、森口(俵木藤太)が娘が世話になっていると菓子折りを持ってきます。高瀬(望月歩)と鉢合わせして、お互い表情が変わったのは、このふたりはまだ遺恨があるようです。
美佐江は寅子がすっかり気に入ったらしく、思わせぶりに「先生は私の特別です」と、手作りらしき赤いミサンガ(腕飾り)を寅子の手首に結びます。

それが、少年犯罪の真相と関係することになろうとは――。

元木(山時聡真)水上(林裕太)の事件では、突如、6人くらい、ほかの少年たちが自首してきました。全員、関わりの薄い者たちがなぜ……というのは昔、『踊る大捜査線』の映画版でネット時代ならではの犯罪の形を描いていたことをを思い出しました。さすがにこの時代、ネットはないのですが、新たな時代の犯罪の形が生まれはじめたということを描きたい意図は同じであろうと思います。

戦後数年の日本で、貧困以外で、つながりも一見希薄そうな少年たちがなぜ共謀しているのか――という、これまでの朝ドラにはない題材で、制作陣の意欲を感じます。

仲間たちは、皆、裕福な家の子で成績優秀であったが、共通しているのは「気持ちをすっきりさせたい」ということ。元木は、理由を語らなかったが、寅子がミサンガをしているのを見て、急に「あの子をすっきりさせたくて」と言い始めます。彼もまた、同じものを腕に巻いていました。調べたら、自首した子はみな、同じものを見に付けていたことがわかります。

「あの子」とは美佐江なのか。そして、美佐江は何を抱えているのか――。
一見、聡明ないい子のようですが、底深い、闇を抱えているようです。

寅子が事件の関係者と同じ腕飾りをしている展開はとてもひやっとしました。元木は寅子が自分と同じ腕飾りをしているのを見て、この裁判官、自分たち側の人だと思ったのではないかと思うのですが、偶然であり、寅子にはなんの意図もないにもかかわらず、なんとも困った事態でしょう。
こういう展開はどうでしょう、と法律監修のかたに相談し、検討してもらっているのだと思うと興味深い。たぶん、菓子折りを受け取っていいかとか、他者からもらったものを法廷で身に着けていいかとかも監修のうえ、描かれているのだと思います。

そして、涼子が、最近の青少年は貧困以外で犯罪を起こしていると言っていたことが事件とつながっていたのも、涼子の先見の明を感じます。もしかして、英語の授業で何かを感じていたのかも?

(文:木俣冬)

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