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改めて観たい、おすすめ「戦艦映画」5選
改めて観たい、おすすめ「戦艦映画」5選
2024年も8月となり、もうすぐ終戦記念日。この機会に戦争映画を観て、「戦争を起こしてはならない理由は何か」を今一度考えてみるのはいかがだろうか。
ここでは、戦争映画の中でも「戦艦」が登場する5作品に絞って紹介しよう。
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1:『男たちの大和/YAMATO』(2005)
戦後60年記念作品として送り出された、艦首から艦橋付近まで原寸大で再現された戦艦大和のオープンセットの総工費は約6億円、製作費は約25億円という大作だ。その甲斐あっての戦闘シーンは壮絶で、「世界最強」を誇っていたはずの大和が戦闘機から容赦無く銃撃を喰らい、血が飛び散りあっけなく人が次々に死んでいく。その恐ろしさがあってこそ、戦争そのものの虚しさもまた伝わる内容だった。
実際の戦艦大和は1945年4月に海へと沈み、乗組員3,332人のうち生き残ったのはわずか276人。映画はまだ10代の少年も含む乗組員たちの姿を描いており、そのほとんどが死ぬ運命にあり、さらには生き残った者もその後の何十年にもわたってサバイバーズ・ギルトに苦しんでいたことにも、胸が締め付けられる。実際の大和の生存者からも話を参考にしたからこその、リアルな船内での日常も見どころだろう。
戦争での残酷描写は『プライベート・ライアン』を、現代の視点から海に沈む船での出来事を回想する構成は『タイタニック』からの影響も感じさせるが、だからこそ日本でも予算をかけ、明確に反戦のメッセージを訴える実写映画を作りきるという作り手の熱意も伝わった。
出演者が反町隆史・中村獅童・松山ケンイチなど豪華で、池松壮亮が純朴な現代の少年として登場するのも見逃せないだろう。
▶︎『男たちの大和/YAMATO』を観る
2:『アルキメデスの大戦』(2019)
同名マンガを原作とした、前述した戦艦大和の建造計画の裏に隠された不正を暴くべく、天才数学者が奮闘するという物語であり、文句なしに万人におすすめできるエンターテインメントだ。
変人そのものな菅田将暉と、彼とはじめは衝突するもやがて良き相棒になっていく柄本佑との「バディもの」としての魅力もふんだんで、何より次々に襲いくる難題に立ち向かう様が面白い。
(C)2019 映画「アルキメデスの大戦」製作委員会
映画冒頭から大和が海に沈む様、さらにはアメリカ側が「人命を大切にする」様も描かれており、もちろん史実でもそうなのだから、「結局は戦艦大和は作られて乗組員たちともども無惨にも海に散る」ことがわかりきっている、ある意味では最初に「バッドエンド決定」のネタバラシをしているのも大きな特徴。
そして、とある衝撃的な会話と論理を持ってしての、「後味の悪さ」にこそ意義を強く感じさせる内容にもなっていた。
(C)2019 映画「アルキメデスの大戦」製作委員会
なお、山崎貴監督は映画デビュー作の『ジュブナイル』から、「ドラえもん」の二次創作を原案とした、「こうなると決まっている」という一種の運命論的な話をよく描いている。今回の『アルキメデスの大戦』はその作家性が、バッドエンドという形でうまく結実した内容ともいえるだろう。
この『アルキメデスの大戦』と、その後に公開された山崎貴監督作『ゴジラ-1.0』のラストを比較しても、そのことはよくわかるはずだ。
▶︎『アルキメデスの大戦』を観る
3:『駆逐艦雪風』(1964)
戦争終結からわずか19年後に作られた映画で、何よりの魅力は駆逐艦雪風が大好きなおじさんが親しみやすくてかわいらしいことではないだろうか(ただし劇中では主人公は26歳という設定で、演じている長門勇も当時30代前半)。
ある意味では「戦艦(または戦車や戦闘機)は格好いいかもしれないが、戦争は否定する」という多くの人が持つ矛盾を描いているともいえるし、宮﨑駿監督がまさにその矛盾と向き合った『風立ちぬ』に近い内容かもしれない。
たとえば、主人公は船内に汚れを見つけると「もっと大切に扱ってくれなきゃ」と言ったり、失礼な物言いを聞けば「あまりにも雪風のことを知らない」と反論したり、「私の命よりも大切」「形は小さくても美しいしかわいい」と、雪風への愛そのものを語るだから。艦長の妹とのやりとりも相まって、ついつい笑顔になってしまうだろう。
©1964松竹株式会社
それでいて、「お国のために命を捨てる」といった当時の人命軽視、いや異常な価値観の問題を浮き彫りにしている。たとえば、主人公は「弾の飛んでいないところで大根や魚を切って過ごせて、こんなけっこうなことはない」とも言うのだが、それも「命が惜しい」という臆病者の言葉として侮蔑的に捉えられてしまう。
雪風と平和を愛する純朴な主人公像が全編で貫かれ、かつショッキングな出来事が続くからこその、戦争の虚しさをはっきりと示した、優れた反戦映画に仕上がっていた。
▶︎『駆逐艦雪風』を観る
4:『ミッドウェイ』(2019)
『インデペンデンス・デイ』『2012』など、どちらかといえば「大味」と称される大作映画を手がけることが多いローランド・エメリッヒ監督の作品ながら、日本とアメリカのどちらかを一方的に悪として扱わない、フラットかつリスペクトのある描写が称賛された作品だ。
(C)2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.
もちろん描かれているのは1942年のミッドウェイ海戦。戦争の早期終結を狙う日本側と、真珠湾攻撃で大打撃を受けた反省から情報戦に注力するアメリカ側、それぞれの思惑が交錯していく群像劇となっており、空中・海上・海中それぞれの戦闘シーンにも迫力がある。いい意味でカタルシスを追求しない、冷静な語り口も美点だろう。
(C)2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.
豊川悦司・浅野忠信・國村隼がそれぞれ貫禄たっぷりの演技と存在感を見せているのも見逃せない。その豊川悦司はエメリッヒ監督から、企画が実現するまでの経緯や、監督が求める山本五十六のキャラクター像と豊川悦司がふさわしい理由などが書かれた手紙を受け取り出演を決意したそうだ。その経緯だけでなく、映画本編からもエメリッヒ監督を見直すきっかけにもなるだろう。
▶︎『ミッドウェイ』を観る
5:『バトルシップ』(2012)
史実を描き、それでこその明確な反戦のメッセージを込めた作品はもちろん必要だが、フィクションの能天気なアクション大作もあっていい。そんなことを今一度思い出させてくれるのが、アメリカ本国では興行・批評ともに伸び悩んだものの、日本では「バトルシッパー」と呼ばれる熱狂的なファンを多数生み出した『バトルシップ』である。
内容は「宇宙への信号をそんなビームみたいに出すなや」「宇宙人バカだろ」などツッコミどころが満載だが、そもそもの「戦艦のボードゲームを映画にする」というムチャすぎる企画ながら、「相手の行動を読み正解を引き当てる」ゲームの面白さをしっかり引き出しているし、意外とちゃんと伏線も回収しているし、何より派手な見せ場が満載でとにかく楽しい。
(C)2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
テイラー・キッチュ演じる主人公が、はじめこそヘタレで無職だったはずなのにすぐに偉くなっていたりするのもご愛嬌、浅野忠信がもうひとりの主人公と言えるほど活躍するのも嬉しいところだろう。
それでいて、終盤での「来てくれたんだ…!」と心から思えるアツさと先人へのリスペクトも嬉しいし、すっかりネットミームになった「あんたも死ぬし俺も死ぬ、皆いつかは死ぬ…だが今日じゃない」という名言は、今なお世界のどこかで誰かに勇気と希望を与えている。
(C)2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
前述してきた反戦映画は戦争で無惨にも人が死ぬこと、人命軽視も問題として扱われていたので、併せて観ればこそ、よりこの言葉は真に迫るのではないだろうか。
ぜひ、夏バテで元気がない時にも『バトルシップ』を優先的にご覧になって欲しい。
▶︎『バトルシップ』を観る
(文:ヒナタカ)
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