『おむすび』松平健と宮崎美子と北村有起哉の若作り【第12回】
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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第12回を紐解いていく。
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陽太の眼帯
門限を破ってしまった結(橋本環奈)を助けようと陽太(菅生新樹)が結とつきあっていると言い出します。なぜか眼帯している陽太。野球のボールが当たったらしいのですが、なぜ、そこだけリアリティー?眼帯が悪目立ちしています。が、眼帯していないと、引っ掛かりのない場面になってしまうのも事実。
陽太の嘘を愛子(麻生久美子)と佳代(宮崎美子)は気づいていました。佳代の「だって ありえんもん」はなかなかきつい。
聖人(北村有起哉)だけは単純にも真に受けてしまい、ショックのあまり縁側で膝を抱え、口を鯉のように音を立てパクパクしています。こういうちょっとした仕草を考えつくのがさすが演技派・北村有起哉さんです。
永吉(松平健)に、聖人のせいで歩(仲里依紗)が家を出てしまったと言われ、ますます聖人は苛立ち、スナックひみこに飲みに行ってしまいます。
米田父子、なぜ、こんなに仲が悪いのかーー聖人が若い頃が回想されました。
永吉は昔から自由人で、ホラばかり吹きながら、トラック野郎としてあちこちに出かけては、お金も使ってしまう。佳代が貯めたお金を使い込んで行きたかった大学に行けなかったことを聖人は根に持っていました。
そんなとき、いつも髪を切ってくれていた理容師さんが、都合で神戸に行くことになって、聖人はその人について神戸で理容師になろうと考えます。地元の糸島が好きだけれど、父からとにかく離れたかった気持ちが痛いほど伝わってきました。朝ドラではヒロインが父親に抑圧されていますが、男性だって同性の父親に思うところあることもあるのです。女性の生きづらさが注目されていますが、男性もやりきれない思いを抱えながら、はっきり言葉にできずもやもやしていることを聖人が体現しています。
北村有起哉さんの70年代長髪の若者役(二十代?)に無理あるという声もありましたが、若いときは繊細な喋り方や表情をしているところがさすが演技派。とはいえ11歳の少年役はさすがに演じていません。その頃の松平さんと宮崎さんの若作りはなかなか難しいものがありました。かなりコント。松平さん、貫禄ありすぎ。いやでもカチューシャした宮崎さん、かわいかった。
家庭内不和も結の秘密のギャル活動も、さほど深刻に見えず、ほのぼのホームドラマの体で、そのあと「あさイチ」でやっていた、パスタを茹でたあと鍋にパスタがこびりつく悩みの解決とか、ハンドクリームを最後まで使い切る方法とかにものすごく親和性を感じました。
たいしたことが何も起こらない感じ、以前、日テレで朝ドラを意識してやっていた「生田家の朝」(2018年)のようです。ただ「生田家〜」はバカリズムのセリフが面白かったのですが、「おむすび」はそこまで振り切ってはいないんですよね。
(文:木俣冬)
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