「らんまん」武井壮がさすが動作が速かった<第116回>


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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第116回を紐解いていく。

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小林一三は今年生誕150年

第24週「ツチトリモチ」(演出:廻田博思、深川貴志)、演出がふたり体制になるとドラマも終盤です。若手が先輩について演出するのです。

「らんまん」もあと3週間で、万太郎(神木隆之介)の悲願の植物図鑑がいよいよ完成間近となり、心、穏やかではいられません。

これまでは猪突猛進してきた万太郎ですが、ふと立ち止まって、この国の多くの人が喜んでくれるか、考えます。

万太郎のためにがんばっている寿恵子(浜辺美波)に報うためにも、愛される図鑑を作りたいと思うのです。

寿恵子が渋谷に作った待合茶屋・山桃には、相島圭一(森岡龍)小林一三(海宝直人)を連れてやってきました。

新橋や赤坂ではできない秘密の話ができることを売りにしていることがさすがです。

ただ、それだけではなく、ちゃんと美味しい食事も出す。寿恵子は腕のいい仕出し料理屋とつながって、客の食べたいものを用意します。

現実的に考えたら、その場で食べたいものを言われても、食材が揃うとは限らないでしょうし。ここはファンタジーだと感じますが、料理屋の話ではなく、あくまでも万太郎の植物研究の話なので、さておきましょう。

寿恵子は弘法湯の下男・迅助(武井壮)の空き時間仕出しの注文を手伝ってもらいます。
注文表を預かってさっと駆け出す武井壮さんの動きが一瞬でしたが、飛脚のように健脚そうに見えました。名前が「迅」だけに迅速です。

寿恵子はさらに、飲んだくれの荒谷佐太郎(芹澤興人)にも目をつけます。彼はじつは腕のいい料理人で、おかかのおにぎりがちゃんと丁寧に調理されていたのは彼の腕だったのです。相島の変わった注文・オランダなますの調理は彼が担当したようです。

佐太郎が飲んだくれて諦め気分である理由も、セリフで語られていました。なかなかヘヴィーな話のようであります。

うらぶれ気味の渋谷の人々に、仕事を提供し、ウィンウィン(日本語でいえば「持ちつ持たれつ」?)の関係を作り出す寿恵子。なかなかの才覚です。

新橋の料亭からはフミ(那須凛)が助っ人で入ります。彼女は、すでに出来上がった大富豪よりもこれからの大富豪候補に期待をかける目端のきいた人物です。元々、水商売を生業にする人たちですから、たくましい。寿恵子も、母や叔母が水商売の人ですから、どこか通じあっているものを漂わせます。
「そそるのよ」「お行儀よくね」という会話にその感じがよく出ています。

美味しい料理を食べながら、未来の鉄道事業について語り合う小林と相島。

小林一三は、今年生誕150年を迎える大実業家で、阪急阪神東宝グループの創業者であり、宝塚や東宝というエンタメを生みだした人でもあります。演じている海宝さんは劇団四季出身で、東宝ミュージカルに多く出演しています。

小林は郊外の安い土地を住宅地にして鉄道を敷こうと構想していて、相島に「この渋谷にはあなたが降り立てばいい」と焚き付けます。

小林はこの後、関西に出て阪急をつくり、東京では日比谷の発展に寄与するわけですが、歴史的には渋谷には東急が開通し、東急の創業者とされているのは、五島慶太という人物です。1922年(大正11年)、東急グループの前身である目黒蒲田電鉄を創立し(昨年創業100周年でした)、1932年(昭和2年)東横線渋谷~桜木町間全線を開通します。「島」つながりで、相島のモデルは五島でしょうか。

じつは、目黒蒲田電鉄の母体は大河ドラマ「青天を衝け」でおなじみの渋沢栄一であり、小林一三も関わっていました。この鉄道物語は別途、大河か朝ドラ化してほしいです。


(文:木俣冬)

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