「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第67回を紐解いていく。
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第67回 栄養学校J班集合
突如、翔也(佐野勇斗)の母・幸子(酒井若菜)が米田家(店のほう)にやって来ました。
翔也が米田家の婿になるとメールしたため、慌てて問い詰めに来たのです。
以前、栃木から糸島に来て結(橋本環奈)と出会ったときの幸子がイチゴの似合う素朴で優しそうなお母さんの印象でしたが、実は元レディースで、かなり柄が悪かった。当時はカチコミを得意としていたそうで、だから息子が婿になるなんて!とカッとなって神戸にすっ飛んできたのです。
対して、愛子(麻生久美子)は元スケバン。こっちはこっちで喧嘩上等で生きてきたでしょうから、十代の頃の血が騒いだようで、たちまち対抗。「ああ?」「ああ?」とふたりのメンチの切り合いは大迫力でした。
麻生さんは細い白い首をヘビのようにくねらせ、酒井さんは全身を龍のようにくねらせて立ち向かいます。似ているようで微妙に差別化しているふたりのパフォーマンスがすばらしい。伊達に生き馬の目を抜くような芸能界で生き延びてきてないなあと思わせる勝ち気さやたくましさに圧倒されました。
このドラマはおそらく「今日から俺は!!」を楽しんだ層にもアピールしたいのでしょう。橋本環奈さんもスケバン役で出ていた、80年代のヤンキーを描いた漫画原作のドラマと映画は大ヒットしました。だから朝ドラにその要素を持ち込みたいというアイデアも悪くはありません。「あまちゃん」でもヤンキーが出てきましたので、昭和後期から平成を描こうとするとヤンキー文化は避けて通れないのものです。
朝ドラヒロインと相手役の母がスケバンとレディースで、メンチを切り合うというエピソードはなかなか大胆で、朝ドラ史に残していいかとは思います。でも、こういうのを朝ドラでやるなら、元スケバンが脚本を書く朝ドラとか、元ギャルが脚本を書く朝ドラ、みたいなほうが親しみが沸くのでは?
NHKのドラマがこれまでに描かれてこなかった世界を描こうとすると、たいてい、当事者ではない人が無理して知らない世界に目を向けている感じがして。「おかえりモネ」はそのことへの自省がこもったドラマでした。それは報道やドキュメンタリーの眼差しであって、物語ではもっと実感が伴ってほしい。これまでにない題材を取り上げることは尊いですが、その新しい題材に実際に生きてる人のところまで自ら下りていくような、アプローチを変えることがいま、必要になっているような気がします。
元ヤンプロデューサーや演出家が作ったらたぶん、スケバンとレディースの子どもたちが結婚するとき、どちらの姓を選択するかというエピソードも全然雰囲気の変わったものになったのではないでしょうか。となると、頼みはお笑い芸人になってしまうわけですが。たぶん、バカリズムさんあたりがいま最も求められる才能だろうなあという気がします。
さて、J班が半年ぶりに集まり、太極軒で同窓会。じつは、沙智(山本舞香)が新聞で翔也の怪我引退の記事を読んで心配して、会を催したのです。彼女は自身も無理してカラダを壊して選手生命を絶たれていますから、翔也の気持ちが最もわかるのでしょう。でも、もうその件はすでに解決し、結と翔也は親の反対もなんのその結婚に向けて邁進していきます。モリモリ(小手伸也)が元不動産会社勤務であったことが生かされ、新居にいい物件を紹介してもらえます。
ギャルといい、J班といい、結が困っているときは遠くから駆けつけてくれる、ギャルの掟に則った人たちであります。つまりギャル魂を持った人たち。結は幸せ者なのです。
(文:木俣冬)
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–{「おむすび」第14週あらすじ}–
「おむすび」第14週あらすじ
第14週「結婚って何なん?」 1/6-1/10
糸島から神戸に帰ってきた結(橋本環奈)は、永吉(松平健)と佳代(宮崎美子)、さらには翔也(佐野勇斗)を一緒に連れ込み、両親と歩(仲里依紗)に翔也と結婚することにしたと報告する。
聖人(北村有起哉)が結婚に反対しようとするのを永吉が止めようとするが、愛子(麻生久美子)もちゃんと考えたのかと問いただし、結婚は一旦保留となる。
一方職場の社員食堂では、結が佳代から習った地産地消の良きところを取り入れようと進言したことが、実を結んでいく。
–{「おむすび」作品情報}–
「おむすび」作品情報
放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始
出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。
【結の家族・米田家の人々】
米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。
米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。
米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。
米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。
米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。
【福岡・糸島の人々】
四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。
古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。
風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。
宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。
真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。
佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。
田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。
柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。
ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。
草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。
古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。
大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。
井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。
佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。
大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。
飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。
作
根本ノンジ
音楽
堤博明
主題歌
B’z「イルミネーション」
ロゴデザイン
大島慶一郎
語り
リリー・フランキー
制作統括
宇佐川隆史、真鍋 斎
プロデューサー
管原 浩