続・朝ドライフ

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2024年06月03日

「虎に翼」新章突入。うさんくさいライアン(沢村一樹)にサディと呼ばれる寅子<第46回>

「虎に翼」新章突入。うさんくさいライアン(沢村一樹)にサディと呼ばれる寅子<第46回>

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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第46回を紐解いていく。

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あの小橋はハーシー

寅子(伊藤沙莉)は昭和22年3月、いきなり司法省の仮庁舎(法曹会館)に乗り込みました。

第10週「女の知恵は鼻の先?」(演出:梛川善郎)
のはじまり。

アポイントをとってないから取り次げないと門前払いをくらいされそうになったところ、ライアンこと久藤頼安(沢村一樹)に助けられます。彼のおかげで寅子は司法省の民事局民法調査室で働くことになります。

ライアンはいきなり寅子の名前をサディと呼んでじつに馴れ馴れしい。
名前は””れて””心ですが、「うさんくさい」(3回も使用)と思われてしまうちゃらいキャラを演じさせたら沢村さん、右に出るものはいません。

ライアン、じつは久藤藩の藩主の末裔で「殿様判事」と呼ばれているという、強力な属性付きでした。

司法省で寅子はなつかしい人たちと再会します。
ひとりは桂場(松山ケンイチ)。
彼はいきなり裁判官として雇ってほしいとやって来た寅子にやさしくはありませんでした。
これまで女性は差別され裁判官になれませんでしたが、憲法によって男女平等になったこともあるうえ、目下、GHQが婦人の解放を要請しているところだから、いけると踏んでいた寅子でしたが、桂場は一度、司法の世界を辞めた寅子をゆるしていないようです。

裁判官とは「司法の砦なんだ」と桂場の強い信念はゆるぎません。
そして憲法が変わろうと、彼女を取り巻く環境は戦争前と変わっていないし、憲法自体が定着するかもわからない、と考えています。彼女とは寅子のみならず女性たちのことも含まれているでしょう。そして、視聴者は憲法はそのまま定着してしまっていることを知っています。

戦後の民主化、憲法の改正は、アメリカの意向がたぶんに入っていました。ライアンがやたら人の名前を英語化しているのはその状況への暗喩にも見えます。
そう、サディのほかに、ハーシーと呼んでる人物もいました。

寅子の学校の同級生で地裁から出向して来ていると聞いて、寅子は花岡(岩田剛典)を思い浮かべますが轟〈戸塚純貴〉よね(土居志央梨)も思い浮かべてほしいけれど、地裁からで、花岡だったのでしょういたのは――ハーシーこと小橋(名村辰)でした。

仕事場に入ったとき後ろ向きだった彼にしばらく寅子は気づかないし、振り向かれても「ああ」とそっけなさすぎる態度。会話中は心のなかで「失礼垂れ流し野郎」とまで毒づきます。

桂場とか小橋とか、寅子の天敵的な人ばかりで前途多難そうであります。

桂場の名前を聞いた、はる(石田ゆり子)は絶望的な顔をしていました。昔喧嘩を売ったことがまだ糸を引いているのです。小橋のこともなかったことにはなっていません。おもしろおかしく描いてはいますが、桂場や小橋は、彼女を取り巻く環境は戦争前と変わっていないことの表れかもしれません。

寅子と小橋の会話の場面では、なぜかやたらとカットを細かく割っています。3つほどのパターンを一定のリズムで繰り返すことで何を印象づけようとしているかと思えば、「アメリカ」というワードと、小橋のぴょんとはねた前髪です。その毛先に「つづく」をちょこんとレイアウトしていました。

小橋が急激にアニメみたいなキャラ立ちしてきたこととカット多めな手法は、時代ががらっと変わった表現かもしれません。ここからポップなリーガルエンターテイメントがはじまるのかも。

寅子自体がもともとノリのいいキャラとして造形されており、ライアンやハーシーとの場面ではコントぽい間合いの芝居をしていますし、性格もちゃっかりしていて、憲法で男女平等になった途端、これはよし!とばかり裁判官になろうとしたり、桂場には「裁判官に向いている」と言ったと丸め込もうとしたり、「言ってない」とごまかされても「言ってないかもしれないけどそのようなことはおっしゃいましたよね」と一歩も引きません。理屈でたたみかけていく戦法や、父と兄と夫が亡くなったことを悲壮感漂わせずに語る口調など、寅子らしさだと思います。

(文:木俣冬)

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