『人狼村 史上最悪の田舎』でキテレツなスパニッシュ・ホラーを味わいつくせ!

 (C)2011 telespan2000/vacafilm

『死霊館』に『クワイエット・ルーム』など、このところホラー映画の話題作が立て続けに公開されてますが、真夏を過ぎての初秋でも、ちょっと過ごしやすくなってきた時期に再びヒンヤリどっきりというのもまたオツなもの。

そんな中、今回ご紹介するスペイン映画『人狼村 史上最悪の田舎』はちょっと変わり種の作品です。

タイトルに偽りなく、ここで描かれるモチーフは人狼伝説なのですが、やはりハリウッドとは異なり、独自の気風が妙にたまらないものがあるのでした!
(ちなみに『人狼ゲーム』とは特に何の関連もありませんので、あしからず)

人狼伝説の呪いを解くため
生贄に選ばれた一発者小説家の運命!

『人狼村 史上最悪の田舎』の主人公は、一発屋の小説家トマス。

しがない日々を過ごしている彼のもとに、あるとき生まれ故郷の村から“名誉市民”にしてもらえるといった知らせがあり、田舎でのんびり執筆気分も手伝って、久々に帰省することに。

しかし、実はこの村にはどうも不気味な伝説があるようでして……。

要はかつて傲慢な侯爵夫人が子どもほしさに旅芸人一座の妻子持ちの男を無理やり手込めにして妊娠し、父親の素性を隠すために彼と一座の面々を虐殺したことから、男の妻が憤って夫人と村に呪いをかけた!

その後、10歳になった夫人の子どもは人狼と化してしまい、100年の時を経た今も生き続けて人を喰らっているのでした。

そんな人狼の呪いを解くためには、100年後のある期日をもって、侯爵夫人の子孫を人狼の生贄に捧げなければならない。

またその機会を逃すと、今度は村人全員に恐ろしい災いが……。

つまりトマスこそは侯爵夫人の子孫であり、生贄になるために彼は村に呼び戻されたのでした……。

ではトマスはいかにして生贄から逃れるか? 逃れられないのか? というのが命題になってくるわけですが、実はこの作品、彼が難を逃れる方法もオヨヨヨヨなら、その後もぶっとびの展開が第2章、第3章と続いていくノンストップ・サスペンス・ホラーと化していくのでした!
(しかも、それが妙に笑える!)

スペイン映画界のバタ臭い
ホラー映画の伝統

スペインや、かつてその支配下を受け、文化的にも多大な影響を受けたメキシコの映画界では1960年代から70年代にかけてホラー映画が大流行し、大量生産された歴史があり、その流れは今も脈々と連なっています。

本作もそうした伝統の中から作られた作品ではありますが、やはりハリウッドや英ハマープロなどの洗練された雰囲気とはどこかずれた、バタ臭いものが多いのも特徴ではあります。

もっとも、そのバタ臭さを楽しむのも映画ファンとしては一興ではあるでしょう。

劇中の人間関係が妙にドタバタしているかと思うと、微妙にカニバリズム的ブラックユーモアも下ネタもあり、『パンズ・ラビリンス』のアルトゥーロ・バルセイロが参加しているという“売り”の特殊メイクによる人狼はもう着ぐるみ感満載で(個人的にそういうのは好きですけど)、正直あまりリアルなものを求めないほうが賢明。

とはいえ、やはりどこか作品内に充満する血塗られた歴史性がさりげなくも醸し出されているのは、スペイン映画ならではの情緒なのかもしれません。

2018年初秋のホラー映画新作群を劇場で堪能しつつ、家に帰って深夜、こういったキテレツで味わい深い(単にB級ともC級とも言い切れない!?)不可思議なスパニッシュ・ホラーをビール片手にのんびり楽しむのもまた楽しい映画体験かと思われます。

あ、あとドラマそのものとは関係ないのですが、劇中登場してくる主人公の愛犬が妙に可愛らしく、公開当時、一部の犬好き映画ファンの間で話題にもなっていました。どれだけ可愛いかは、実際にその目で確認してみてください。

(逆にキレイどころがなぜかひとりも出てこないんですよねえ、この映画。場をさらうインパクトをもたらしてくれるのは、おばあちゃんだし……)

[2018年9月21日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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