オスカー候補『レディ・バード』監督が主演した『マギーズ・プラン』の魅力

Photo credit: lincolnblues on Visualhunt / CC BY-NC-ND

3月5日、第90回アカデミー賞が発表になりましたが、みなさんの予想はどのくらい当たりましたか?

さて、今回はその中で作品賞など5部門にノミネートされた『レディ・バード』で監督・脚本を務めたグレタ・ガーウィグに注目してみました。

今回のアカデミー賞では女性で唯一監督賞にノミネートされた彼女、惜しくも受賞は逃したものの、第52回全米映画批評家協会賞では監督賞&脚本賞を受賞しており、また女優としても『ベン・ステイラー 人生は最悪だ!』(10)や『ダムゼル・イン・ディストレス バイオレットの青春セラピー』(11)『フランシス・ハ』(12/兼脚本)『20センチュリー・ウーマン』(16)などで大活躍中の才人です。

そして今回ご紹介する、ちょっとこじれた大人の三角関係を描いたハートフル・ラブ・コメディ映画『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』のヒロインも彼女が務めているのです!

マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ メイン

(C)2015 Lily Harding Pictures, LLC All Rights Reserved.

再婚した夫を前妻のもとへ戻そうとする
アラサー・ヒロインの不思議な三角関係

『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』の舞台はニューヨーク。

大学のアーティイスト・コーディネーターとして勤務するマギー(グレタ・ガーウィグ)は、恋愛が6か月以上続いたことがないまま30歳をすぎ、いっそシングルマザーになろうかと考えているアラサー女子。

そんなマギーでしたが、ある日大学で文化人類学者のジョン(イーサン・ホーク)と出会います。

実は小説家を目指しているジョンとマギーは意気投合し、その仲も急接近していきますが、ジョンには妻ジョーゼット(ジュリアン・ムーア)がいます。

コロンビア大学教授として多忙な日々を過ごし、家庭を顧りみることのないジョーゼットに対し、ジョンはついに離婚を決意し、マギーと再婚しました。

それから3年、二人の間には娘も授かり、幸せいっぱい……のはずが、何だかギクシャクしちゃっています。

そんな折、マギーは多忙なジョーゼットの代わりにその子どもたちの面倒を見ていくうちに、彼女とも親しくなり、そのパワフルなキャラクターに魅せられるあまり、とんでもない計画を思いつきます。

それは何とジョンをジョーゼットに返そうというものでした……?

女優兼監督と女優兼監督の
息の合ったコンビネーション

いいトシした大人なのに、ある意味自分勝手で不器用な3人の男女が織りなす2015年度のアメリカ映画。

監督は『50歳の恋愛白書』(09)などを手掛け、グレタ・ガーウィグ同様『ウインズ』(92)『めぐり逢い』(94)などで女優としても活躍中のレベッカ・ミラーが務めています(ダニエル=デイ・ルイス夫人でもあります)。

やはり演じる側の気持ちを心得ている監督だからでしょうか、本作は3人のキャラクターの繊細な趣が見事に捉えられており、一つ一つの描写も実にこまやかで、またイーサン・ホークのモテ男ぶりにも説得力があります(ちなみに彼も俳優として、また脚本家として幾度もアカデミー賞にノミネートされています)。

一方、グレタ・ガーウィグとジュリアン・ムーア(彼女は2014年の『アリスのままで』で第87回アカデミー賞主演女優賞を受賞しています)に対しては、同性ならではのシビアかつ温かい目線で、本来かなり複雑な間柄ながらも、やがてはシンプルに信頼しあっていくふたりの関係性を魅力的に描出しています。

総じて演出する側と演技する側のキャッチボールがすこぶる良好に思える本作、即ち女優兼監督と女優兼監督との絶妙のコンビネーションあってこそ、その後の『レディ・バード』でのグレタ・ガーウィグの躍進も導かれたのかもしれません。

『レディ・バード』でグレタ・ガーウィグはアカデミー賞史上5人目の女性監督として監督賞候補となりました(脚本賞にもノミネート)。今回の栄誉を、また大きなステップアップにつなげてくれることでしょう。

次回作も俄然楽しみになってきましたね。

[2018年3月9日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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