ディーン・フジオカとニンジャのコラボ!『NINJA THE MONSTER』

NINJA THE MONSTER ディーン・フジオカ

(C)2015 松竹

海外で人気を得て日本に凱旋したスターといえば、古くは早川雪州、マコ岩松、ショー・コスギ、金城武、笛木優子など多数いますが、最近もっとも注目を集めているのは彼、ディーン・フジオカでしょう。

一方、海外で日本以上の人気を獲得したジャンルとしてニンジャ映画が挙げられます。

そして今回ご紹介する『NINJA THE MONSTER』はディーン・フジオカ主演のニンジャ映画という、松竹が海外マーケットを視野に入れて製作された国産のアクション・ダーク・ファンタジー時代劇です!

海外で流行していった
ニンジャ映画

映画『NINJA THE MONSTER』は、忍びを危険視した江戸幕府によって忍者禁止令が1783年に発布され、以後、己が忍者であることを隠して生きている伝蔵(ディーン・フジオカ)が、長野藩の窮乏を救うために江戸に向かう幸姫(森川葵)を護る任務を受け、姫の一行と共に得体のしれない“もののけ”の棲む山を越えようとするが……というストーリー。

本作は松竹が若手映画制作者育成のために発足させたブルーライン・レーベルとして、初めて海外マーケットを意識して作られた作品です。

そこで選ばれた題材が忍者≒ニンジャでした。

かつては日本でも数多く作られていた忍者映画ですが、1960年代なかば以降の日本映画斜陽の時期、時代劇の衰退とともに次第に見かけなくなり、逆に日本の時代劇好きな海外の映画人たち、たとえばサム・ペキンパー監督が現代アクション映画『キラー・エリート』(75)でニンジャを敵の暗殺集団として登場させたり、また80年代は日本からアメリカに渡ったショー・コスギが敵方のニンジャに扮した『燃えよNINJA』(81)がヒットして以降、全米にニンジャ・アクション映画が大流行。

しかし、そういった海外のニンジャ・ブームにも関わらず、日本映画界はこれに倣って忍者映画を作る気運はあまりなく(ぱっと思い浮かぶのは80年の『服部半蔵 影の軍団』『忍者武芸帖 百地三太夫』、82年の『伊賀忍法帖』くらいかなあ)、むしろ台湾で『龍の忍者』(82)が作られ、このとき海を渡って主演した真田広之がアジア映画圏のアクション・スターやスタントマンたちにリスペクトされる存在となっていきました。

90年代、ビデオ映画の流行で松竹京都が『くノ一忍法帖』(91)をはじめとする山田風太郎原作のセクシー忍者作品を量産。低予算のプログラムピクチャながらも『必殺!』スタッフ制作による映像美など見るべきところは多々あり、やがて小沢仁志が同スタッフと組んで『くノ一忍法帖 柳生外伝』(98)を監督・主演し、そこで見せた殺陣のカット割りによって、それまで時代劇経験の乏しい役者には敷居が高かったチャンバラ・アクションへの興味を高めることにもつながり、21世紀に入ると『RED SHADOW赤影』(01)や『あずみ』(03)『SHINOBI』(05)『カムイ外伝』(09)などの忍者を題材にした映画が徐々にではありますが、再び作られるようになってきています。今年公開された『忍びの国』は大ヒットして嬉しい限りです。

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若手映画人たちの
時代劇による海外への挑戦!

少し本題からずれましたが、こうした波の中、若手映画人の中でアクション時代劇を作りたい、忍者映画を作りたいと望む者たちが着実に増えてきているのは当然ともいえ、また日本映画の海外進出という点でも、この題材ほどふさわしいものはありません。

『NINJA THE MONSTER』の監督は『太秦ライムライト』(14)で京都時代劇大部屋俳優の凱歌を謳いあげた落合賢。彼も南カリフォルニア大学で映画を学び、帰国した海外からの凱旋派です。脚本は松竹の大ヒット時代劇コメディ『超高速! 参勤交代』(14)の土橋章宏によるオリジナル・ストーリーです。

撮影にはクリス・フライリク(彼は落合作品の常連でもあります)、音楽にはベルギーの人気ロックバンド“ARSENAL”のヘンドリック・ウィレミンズと、海外スタッフを起用。
(ちなみにディーン・フジオカとヒロインの森川葵、落合監督は、ヘンドリック・ウィレミンズが企画した短編映画『DANCE DANCE DANCE』(14)でもトリオを組んでいます)

NINJA THE MONSTER 森川葵

(C)2015 松竹

しかしながら、ここで興味深いのは海外マーケットを意識している割にはさほどジャパネスク的情緒を増大させず、逆に古き良き日本の時代劇の伝統に倣った、静けさに満ちた味わいのテイストを貫いていることで、その意味でも本作はニンジャ映画ならぬ忍者映画としての誇りこそを海外に知らしめたいという、そんな作り手の強固な意志も感じられてなりません。

“もののけ”との闘いの描写などでCGもふんだんに使われていますが、それでガチャガチャした印象を与えることなく、やはり全体的にしっとりとした質感が保たれています。

さて、そろそろ主演のディーン・フジオカについても記しておかねば!?

1980年福島県生まれの彼は、2004年に香港のクラブでラップを披露していたところをスカウトされ、同地でモデルとして活動。06年に台湾ドラマに出演したのを機に、拠点を台湾に移し、またたくまにスターとなっていきました。

やがて日本にもその名声は徐々に伝わるところとなり、13年には何とリンゼイ・アン・ホーカー殺害事件の犯人・市橋達也を主人公にした日本映画『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』を監督・主演(主題歌も担当)し、センセーショナルな話題となります。

お茶の間での人気は15年のNHK連続テレビ小説『あさが来た』の五代友厚役で決定的なものとなりました。

今年は主演映画『結婚』でイケメン詐欺師を演じ、現在は日本テレビ系の主演ドラマ『今からあなたを脅迫します』が10月15日より放送開始。年末には話題の映画『鋼の錬金術師』でロイを演じます(ああ、日本人なのになぜかイメージぴったり!)。また並行して現在音楽活動にも積極的です。

『NINJA THE MONSTER』でのディーン・フジオカは終始表情を変えず、淡々とした佇まいの中から忍びとして生きる者の哀しみを好もしく体現。その立ち姿だけで憂いが感じられるあたりも、さすがというべきでしょう。

イケメンがヒーローを演じるというごく当然ともいえる事象が意外に叶わなくなってきている昨今、彼のような存在はやはり貴重であると断言できますね。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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